その140
誤字報告いつもありがとうございます。
ミルフィは笑顔でドロップを拾いに行きます… まぁ1階層の魔物を倒すには無駄が多い戦闘でしたけど、初っ端から全てミルフィにやらせていたので、彼女なりに考えた戦略だったのでしょう。
「それにしてもミルフィ… 随分と水鉄砲を乱用しますね?」
「はい、これは初めてお姉様に教えていただいた魔法ですので、私の必殺技になるまで鍛錬を積みたいと思っていまして」
「そうなのですか… それならもっと戦闘向きの魔法を最初に教えるべきでしたかね」
「いいえ、この魔法は加減次第で対人戦闘にも使えます。殺さずに制圧する事が出来る重要性の高い魔法だと思っています」
「それは確かに… ストロー様で実証しましたからね」
「今は籠める魔力量でどれほど威力が変化するのか、しっかりと覚えていくために練習したいと思っています」
「分かりました、そういう事なら何も言いません。ですが、敵や状況に見合った魔法を選んで使う事も重要ですからね?」
「もちろん分かっています。ですがこの水鉄砲… 万能と言えるほど順応性が高いと思っています」
「ですが、通用しない魔物がいるかもしれません… あらゆる属性を満遍なく覚える事も忘れないでくださいよ? あえて言うならば… 私の従魔であるハクには水鉄砲は効きませんからね?」
「そうなのですか?」
「ええ、ハクは氷を司るドラゴンです。ハクが垂れ流す魔力で水系統はすぐに凍り付いてしまいます、魔力が込められた氷はハクの好物ですからね… パクっと食べられちゃいます」
「そうなのですか… それはともかく、ドラゴンを相手にそもそも勝てるとは思っていませんが」
確かにそうですね、ですが心構えの問題なので訂正はせずに次へと行きましょう。
「水鉄砲!」
次々と現れるウサギを水鉄砲で討伐していきます… 日ごろの鍛錬のせいか、これだけ魔法を使っていても魔力切れにはなっていないようですね。大したものです。
「さてミルフィ、そろそろ夕食の時間となりますので、今日のところは撤収と致しましょう」
「分かりました!」
軽く汗をかきながらも、駆け足でドロップ品を拾うミルフィ。やはり元気ですね! 朝から入ったとしても、夕方まできっちりと狩りを続けられる程度には体力があるようです。
そしてウサギのドロップ品… 3キロほどのお肉と稀に角を落としていきます。角はレアドロップというやつなのでしょうね、売るのは明日ですが… それでも1階層の素材なので大した額にはならないでしょう。
「それで、魔力の残量はどうですか? 結構使っていたように見えましたが」
「えっと… 大体3割ほど残っている感じですね、正確には分かりませんが」
「3割残りですか、良い感じで魔力総量が上がってきていますね」
「はい! 毎日訓練してましたから」
にっこりと説明するミルフィ、結構頑張り屋さんですね… 13歳に地味な訓練をさせると、どうしても飽きが速いですから続かないと思うのですが、ミルフィはちゃんと続けていたようです。
「それなら… 今日は魔力の扱いと魔法の使い方を確認するだけだったので人気のない所へ来ましたが、これなら明日はもう少し人気のある所でも大丈夫そうですね」
「分かっていますお姉様、それで悪い冒険者を釣るんですよね? 私達が自ら囮となって」
「んー、そこまでは考えていませんが、釣られてやってくる悪人がいればお仕置きはしないといけませんね」
「大丈夫です! 水鉄砲の威力の調整はばっちりですので!」
「それは心強いですね。それはともかく、今日の所は夕食を取ってお風呂です」
「はいっ!」
明日は朝一でギルドに行き、ギルドの雰囲気を確認してみましょう。悪人冒険者が横行しているならギルドの空気もきっと悪い物でしょう… わかりませんが。
夕食を頂き、2人でお風呂に行きます。
湯船から立ち昇る湯気を利用して、水系統の魔法の圧縮の訓練をさせます。ミルフィ本人が好き好んで水魔法を使っているので、お風呂場での訓練は非常に効率が良くて良いですね。
基本水魔法というのは、生活魔法に分類される場合が多く、それを攻撃に使おうとする者はいないそうです。
確かに水を飛ばしても、空気抵抗ですぐに散らばってしまいますし、そもそも水圧という概念が無いのだそうです。ミルフィ談ですが…
日本人であれば、高圧洗車機などで、圧力をかけた水がどれだけ痛いか知る機会がありますし、ウォータージェットカッターのように、水で岩石や鉄板を切れる事を知っています。
この世界ではそのような知識が広まる事が無いようで、知っている人はほとんどいないという事です。
そんなんだからミルフィが目を付けたのかもしれませんが、知識が無ければ教えればいいし、イメージできないというならば見せてあげればいい。
弟子なんですからそれくらいは別に良いですよね。あっ、ミルフィが周囲の湯気を1ヵ所に集めて凝縮していますね… それを湯船の中にドボンと… え?
バシャーン!
「あう! すいませんお姉様!」
「いえいえ、上手くいっているようで安心ですよ」
圧縮された水玉を湯船に落としたことで、なかなかの勢いで水が跳ねて被ってしまいましたが、遊びながら学ぶというのは非常に効率的ですからね、楽しい事だと訓練でも嫌にならないし、そして身に染みて覚えます。
翌朝、夜が明けて明るくなり、隣で寝ているミルフィを起こします。
冒険者の朝は早いです。暗くなると出来る事が極端に減ってしまうので、明るい内に何でもやろうとするので当然なんですが、ミルフィにも当然早起きしてもらいます。
そんなこんなで、いよいよ疑惑の冒険者ギルドの詰め所に突撃です! まぁ職員全員が悪評ある訳ではないのでしょうが、一応注意して人間観察をしないといけませんね。
それに… ここの迷宮で手に入る食材についてもチェックしなくてはいけません、コレ重要デス。
「ミルフィ、ギルド内で喋る時は声を小さくして、周囲に情報を与えないようにしてくださいね? どの冒険者が悪人か分かりませんから」
「もちろんです! 冷静に対処します… これでも貴族教育を受けていますので、表情に気持ちを表さないよう訓練を受けています!」
「なら良いです、それでは突撃しましょうか!」
「はいっ!」
ギルドの扉を開け、混雑しているであろうギルド内へと入っていきました。




