その73
誤字報告いつもありがとうございます。
その後も美味しいお茶を頂きつつクッキーを食べ、明日の狩りは魔法ではなく剣を振ろうと心に決めました。
明日は牢馬車の到着時刻によりますが、日が暮れて暗くなってから行動を起こすというので、私は関わらないことを話し、夕方から翌朝までの間は迷宮に行かない旨を伝えました。
「ところでアリシア様… ドラゴンを従えて魔物を蹴散らし、相当高い戦闘力を持っているのではと見ています。私も幼少の頃より剣術を嗜んでおりまして… もしよろしければ迷宮探索をご一緒させて頂けないでしょうか? 貴女の力には非常に興味があり、できれば手合わせなどしていただければ… などと思っています」
「手合わせ…ですか。私も5歳の頃より剣はやっていますが、基本的に魔法がメインですよ? 私が連れているドラゴンも本来であれば討伐対象だったのですが、降伏してきたので従魔契約をしただけなので」
「ド、ドラゴンが降伏してきたのですか? 確かに高い知性があるとは聞いていますが… そのような判断をできるとは」
「元の世界でちょっとありまして、創造神フローラ様からの勅命を受けまして、大地を傷つける4体のドラゴンの討伐依頼を受けたんですよ。レッドドラゴン、ブルードラゴン、グリーンドラゴンと討伐し、最後にホワイトドラゴン… という所で、私の前にやって来て降伏してきたのです。フローラ様が立会いの下、私の従魔として契約をしました」
「ドラゴンを3体も討伐したのですか… それはそれは。白いドラゴンは、今どこにいるのですか?」
「あの子は冷気を司るドラゴンですので、この地に滞在させてしまうと大地が凍り付くほどの冷気が蔓延してしまいます。なので、もともと凍り付いている北の地で休んでいるようです」
多分休んでいますよね? 夢で見ましたが、アレはきっと正夢ですよね?
「そうなのですか… さすがは使徒様と言う事しかできませんね。手合わせの件、忘れてくださいまし」
「まぁ生まれつき魔力が非常に高かったんですよ、幼い頃より制御する訓練をしていまして、現在に至ります」
ふっふっふ、ドラゴン討伐の自慢話をした所、お手合わせは諦めていただけたようです。いかに腕自慢だったとしても、このような綺麗なおば様を相手に戦えないですよね。
「アリシア様はいつ頃まで滞在なさるのですか?」
「はっきりと分からないのです。アマンダ様が異界との接点を塞ぐためにお力を使い切ってしまったようで、回復なされたら私とホワイトドラゴンを元の世界に戻してくれるとの事で、正確にいつとは言われて無いのです」
「では、お迎えが来るまでこのボンボンの町に?」
「それはわかりません、迷宮関係でちょっとやる事もありますし、スラムの子達を鍛えるのもまだ途中ですし… ですが、機会があれば色々な土地を見たいと思っています」
「そうですか、時間があればまた辺境伯領に来てくださいまし、その時は歓迎しますわ」
「はい、機会があれば」
こうして2時間ほどお喋りをして、今日のお茶会は終了となりました。
もう10時ですよ、こんなに夜更かしするのは久しぶりですね。私も基本は早寝早起きなので…
よし、遅くなりましたが寝るとしましょうか。明日はいよいよ鉄板が手に入ります、いろいろと試してみなければ…
着替えを済ませベッドに滑り込むと、眠りに落ちていくのだった。
─迷宮都市ボンボン高級宿、3階─
「ふぅ、やはりお話をしてみると穏やかな感じがしましたね」
「そうですね、しかしドラゴンを討伐していたなんて… 使徒様というのは恐ろしい方なのですね」
「敵対していい方では無いという事ですね、穏便に済ませられたことを素直に喜びましょう。それに… タルト家の処刑についても賛同を得られたと言っても良いでしょう、これで心置きなく斬り刻むことが出来ます」
「カラメル様、返り血を浴びてしまうと衣装が使えなくなってしまいます、その辺はどうかご自重くださいませ」
「ふふ、覚えていたら考えるわ」
「では、本日はお休みください」
「わかったわ、今日はぐっすりと眠れそうですね…」
お茶セットの片付けを済ませると、こちらも着替えてベッドへと入っていった。
「むむ?」
目が覚めました、おはようございます。
寝坊するかと危惧してましたが、どうやらいつも通り夜明けとともに起きられたようです。別に寝坊しても問題は無いのですが… どうもいつも通りでないとスッキリしないんですよね。
それでは食堂に行きますか、今日はやる事いっぱいありますよ!
朝食を頂いた後、まずは鉄板を引き取りに鍛冶屋さんのお店に行きます。半額を前金で支払っているため、受取と残金の支払いがあるのです。どのように仕上げたのかも気になりますしね、突撃してみましょう。
「おはようございます、どなたかいらっしゃいますか?」
「おーうおはようさん、昨晩のうちに仕上がってるぜ、工房まで取りに来てくれるか?」
「わかりました」
予定通り完成しているようですね。分割されているので組み立て方も聞かなければいけません、店主さんの後を付いて工房に入っていきます。
「こんな感じだ。1.5メートルの鉄板が4枚、それらを繋ぎ合わせる部品がこれで、台座がこれな。本当に持って帰れるのか? かなり重いぞ?」
「大丈夫です、これの組み立て方は… っと、案外簡単そうですね」
「ああ、そんなに難しい造りじゃないからな。部品を見ただけでどうにかなるだろ?」
「ええ大丈夫そうですね、ありがとうございます」
鉄板4枚と台座、繋ぎ合わせる部品を順番に収納にしまっていく
「おおお、収納使いを初めてみたが… しゅるんって消えるんだな。便利そうでうらやましいぜ」
「これは結構な修練を必要としますからね、魔力と根気があれば習得できると思いますが… 才能も必要かもしれませんね」
「そうだろうな、簡単に使えるのならもっと収納使いがいてもいいはずだし、いないって事は難しいって事なんだろうよ。ところで、以前言っていた鉄の持ち込みはまだなのか?」
「ああすいません、まだなんです… 今日以降にちょっとやってみますね。それに、余り量を持ち込みすぎると需要と供給の問題がって冒険者ギルドのサブマスターにも言われてまして… 量は控えめになるかもしれません」
「そうかそうか、少なくたって問題ないぞ。いつでも持ってきてくれ」
「ありがとうございます。その時になったらお願いしますね」
パンパカパーン! 『鉄板セット』を手に入れた!




