10話
のんびり不定期連載です
「ババーン!」
別に口に出さなくてもビームライフルは撃てるんですけどね、なんというかそんな気分だったのです。ここはすでに9階、 5階までは混みあっていて狩り尽くされていたのですが、6階から急に人が少なくなりまして 実戦練習をしながら進んでいます
この9階では豚の顔をした2足歩行の魔物、オークが出没しています。 身長は250センチくらいの肉付きの良いおデブさんです、 重さは300キロくらい軽くありそうですね
このオークのお肉はなかなか美味しいらしく、普通に流通しています。 なので倒したオークはそのまま収納しています これは、この先立ち寄った町で 孤児院などに寄付しようと思って蓄えています。 子供は未来の宝ですからね
それにしても、オークの在庫が100を超えてしまいましたね。さすがに多すぎなのでギルドにも売りましょうか
ビームライフルの使い勝手は非常に良いですね、貫通するので肉の壁があっても平気です。 懐中時計を見ると、午後4時を指しています。 そろそろ地上に戻りたいですね、 さくっと10階のゲートキーパーを倒して転移魔法陣を解放させましょう。 明日は10階の魔法陣からスタートできるので 倒さないという選択肢はありませんね
そんな訳でゲートキーパーの部屋に到着。 そこで待っていたのは黒っぽい鎧兜を装備した少し大柄なオークでした。 これはあれですか? ゲーム的な知識でいう所の オークリーダーとかオークジェネラルとかって感じでしょうか、王様っぽい感じはしませんのでオークロードではないのでしょう
お供に通常のオークが5体いますが…
「ババーン!」
口に出さなくてもいいのですがビームライフルを乱射です。そんな気分だったのです
全滅させるまで5秒もかかりませんでしたね、ビームライフルは優秀です では、さっさと地上に戻って食事にお風呂ですね。 ああ、その前にギルドでオークを換金しましょうか、 受け入れ態勢を聞いて 最大で50体ほど処分できればいいですね
ルンルン気分で転移魔法陣を起動、一瞬で地上階まで帰ってこれました。初めての迷宮、好きなだけ行うことができた魔法の実戦練習 とても気分よく歩いてギルドへと向かいました
「オークを売りたいのですけど、どのくらいの量までなら許容できますか?」
声をかけたのは昨日受付をしてくれた受付嬢さんです。彼女なら私の収納の事も知っているので話が早いのではないかと並んでみました
「オークですか、あっ収納持ちでしたね 何体ほどありますか?」
「100体ほどあります、10階のゲートキーパーも持っていますが 半分くらい売れたらと思っています」
「オークを100…レッドドラゴンを収納したままなんですよね?まだそんなに入るんですか」
「ええまぁ、それでどの程度まで許容できますか?」
「丸ごとでしたら…申し訳ありませんが5体で」
「5体ですか、まぁわかりました」
「それでは解体場までご案内します」
解体場では、昨日レッドドラゴンの素材を取っていた職人さんがせっせと働いていました。 指示に従い5体のオークを出しておきます
「それでは、オークを全身のまま 状態も良好という事で、1体金貨10枚です。 解体手数料で2割差し引いて 1体当たり金貨8枚ですね。 5体分で金貨40枚となります」
「わかりました、丸ごとだと意外に高価になるんですね」
「そうですね、血液と内臓の一部以外はほとんど使えますから、それにあの巨体のお肉を分散させると単価はそんなに高くならないんですよ。 一般庶民にも良く食べられる食材ですからね」
「なるほど」
受付嬢さんとお話ししながら清算してもらっていると、なにやら後ろの方からガシャンガシャンと金属音が聞こえてきました、全身鎧でも着こんでいるんでしょうね。 そんな鎧を着ているのなら、結構稼げているのでしょう、維持にもお金がかかりますからね
「やっと見つけましたよ!アリシア嬢」
「ほえ?」
名前を呼ばれて振り向くと、ガーナ王国軍の騎士と見覚えのある顔が… ああ、第3王子殿下ですね。 王家3兄弟の末っ子で、ずいぶんと我儘で傲慢だとの話でしたが こんな所で何をしているんでしょう
は!? まさか私を連れ戻しに? いやいや、いくら王子様でも他国で横暴は働けないはず
「アリシア嬢、レッドドラゴンの討伐ご苦労様でした。 さぁガーナ王国へ帰りましょう」
「はぁ 何を言っているのか分かりませんが、私はすでにガーナ王国とは縁も所縁もございません。すでに実家とも縁が切れておりますし、王太子殿下直々に国外追放の令を受けていますので ガーナ王国に私の帰る場所はございません」
「ああ、兄上の事ならお気になさらず、貴女は新たに立太子された第2王子の婚約者として迎えられるのです。冒険者ごっこも大概にして帰りますよ」
「冒険者ごっことはひどい言い方ですね、私にはやる事がありますのでお断わりします。 あれだけ恥をかかされているのに帰りたいとは思っていませんので」
「何を言っているのですか?これは王命ですよ?いい加減我儘は止めていただきたいですな。これ以上ごねるというのならば無理矢理にでも連れて帰りますよ」
「王命も何も、私はすでにガーナ王国民ではありませんので 王命とは言え従う理由はありません」
「無礼な!王命に従えないというのならば仕方がない、力尽くで連れて行くことにします」
「無礼…ですか。 貴方が一番無礼なのではないですか? ここはトリュフ王国であり冒険者ギルドの内部です、第3王子である貴方の権威は通じない物とお考え下さいませ」
「なんだと?下手に出ていれば調子に乗って、騎士達よ 取り押さえるのだ!」
【神託を与える。ガーナ王国、王家による我が使徒に対する宣戦布告を確認した。一度警告したにもかかわらず、我が使徒に対し度重なる無礼な行い あげく武力を行使しようなど許せるものではない。よって罰を与えるものとする ガーナ王国王家とそれに従う貴族に対し、我が加護の全てを剥奪する。今後一切魔法を使える事は無くなると思うがいい 特に、我が愛し子に対し濡れ衣を被せ追放などと言う処分を下した王家には更なる罰を検討する】
「あらあらまぁまぁ、お気の毒です。 とはいえ自業自得ですよね 加護を失ってしまったのならば、ここから国に帰るのも大変になるでしょうね その鎧を着たままじゃ動く事も出来ないんじゃないですか?あらあらまぁまぁ」
唖然とする第3王子と、身体強化の魔法が切れたため動く事も出来なくなった騎士が一言も口を聞く事も無く佇んでいた…




