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Heinvia Story  作者: Frey
美しき問題児
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商業都市マルトゥス

マルトゥスはハインヴィア大陸の東に位置する大きな商業都市だ。

南北に長く伸びた作りになっており、東側は海に面しているため貿易が盛んで人も物も入り乱れるにぎやかな港町だ。


街の北端と南端、それと西側に抜ける門がそれぞれ設置されており、〇〇〇の丘からは南門から入ることになる。


ゲーム開始時には一番最初に訪れる街となるため、冒険者同士の交流も活発に行われている。

この街でやることは人それぞれで、クエストを受けてレベルを上げる者、クランと呼ばれる固定メンバーの集まりを作るために仲間集めをするもの、さっさと次の街目指して出発してしまうものとさまざまだ。


今回は、ゲームの時との細かな違いを把握するためにも、しばらくマルトゥスに滞在すると決めてある。


港に面した一番大きな道、中央商業通りにある1軒の宿屋をチョイスし、中に入る。


「いらっしゃいませ!宿泊ですか?」


快活な女性がさっそく声をかけてきた。


「ああ、10日ほど宿泊する予定なんだが、1人部屋は空いてるかい?」


「はい!10日宿泊ですね。1人部屋でのご案内が可能です。

 朝食付きで1泊5,000ゴールドです」


「それで頼む。」


俺は10日分の代金を渡しながら了承した。


「ご利用ありがとうございます!1階はフロントと酒場兼用となっておりますので、朝食はこちらでお召し上がりいただけます。夕食のご利用も可能です。もし宿泊を延長される場合は退出日の前日までに申し込みをお願いします。」


「了解した。」


丁寧な接客の受付嬢にお礼を言い、教えられた番号の部屋に入る。

ビジネスホテルほどの大きさの一人部屋だが、海に面しているため窓を開けると潮風が吹き抜けるような素晴らしい立地だ。


「さて、まずは情報の整理と今後の方針だな」


自分のステータス画面を開きながら考える。

レベルアップ時に各パラメータが1上昇し、任意に割り振り可能なポイントが1レベルごとに2ポイント手に入る。現在のレベルとステータスから逆算した結果それが分かった。


ゲーム時代にはレベル上昇による自動的なポイント増加はなかったし、得られる割り振りポイントは1レベル1ポイントだった。


それならば、この街で冒険者登録を行いクエストをこなしつつ、もう少し自分を成長させるべきだろう。


「あとは、ギルドを組むかどうかだな」


キャラ育成の幅が広いRPGにおいて、固定のパーティーを組むというのは非常に有効だ。

ジョブというシステムがある以上、戦闘を行う上で必ず役割というものが発生する。

何でもできる能力の振り方にすることは可能だが、往々にして器用貧乏になり最終的に頓挫しがちになる。


遠距離と近距離、物理と魔法、斥候、探索、回復、引きつけ役など各方面に強いキャラの能力を状況に応じて最大限に活用し、生存率を高めコンテンツの攻略を楽にするのがパーティー最大の利点で、そのメリットが占めるウェイトは非常に大きい。


ただ、かつて最強のギルドを率いた経験から、仲間を募るということの難しさを俺は身をもって知っている。

集めることが難しいのではない、集まった後の方が問題なのだ。

志を同じくした者たちの集まりではあるが、ギルドとはどこまで行っても“個”の集合体であることに変わりはない。

小さな綻びはやがて全体を飲み込む大きな分裂に発展する。


「ひとまず、旅の仲間集めに関しては保留だな」


気苦労が絶えなかった時期を思い出すのをやめ、俺はベッドに横になった。



しばらくした後、マルトゥスの街のレギオン支部へやってきた。

レギオンというのは、冒険者を育成・統括・斡旋する組織のことで、ここに登録申請をすることにより冒険者は“レギオン預かりの冒険者”となりクエストの受諾、仕事の斡旋、モンスター素材の換金といったサービスを受けられるようになる。


そもそも、ハインヴィアは冒険者となりモンスターと戦うことが内容のすべてではない。

クラフターと呼ばれる、商人や鍛冶師、調合師や裁縫師といったいわゆる生産側サイドに徹して戦闘プレイヤーを支えるロールプレイも可能だ。


一方で、冒険者として各地を旅してクエストをこなしモンスターを狩るプレイヤーはハンターと呼ばれ、そのハンターとしての第一歩がこのレギオンへの登録である。


レギオンでの冒険者登録は程なくして滞りなく完了した。

名前や性別などの簡単な個人情報を用紙に書いて提出するだけなので、お約束の能力測定で勇者判定されそうになるといったこともなければ、気性の荒らそうな大男に絡まれて難なく撃退なんてイベントは起こらない。


今は、ロビーにあるクエストボードに立って、掲示されている内容を吟味中である。


「街道の周辺に沸いたモンスターの討伐に、薬草の収集、隣町への道中の警護か。クエスト完了でもらえる経験値はおいしいから可能な限りこなしていかないとな。」


滞在中は可能な限りクエストを受け、レベル上げをするのに合わせてゲーム時代との変更点の確認を行う。


当面の目標を設定した俺は、モンスター討伐のクエスト依頼書を1枚ボードから取り

カウンターに持っていった。


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