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ANATAプロジェクト  作者: 耶麻April
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始まり(序章もしくはプロローグ)



人生は小説よりも奇なりとはよく言ったものだと思う。

自分で例えるのなら、今いるこの見も知らぬ世界は友人から譲り受けたゲームの世界の中だという話だ。

無論、魔物と呼ばれる存在の言葉を全部鵜呑みにしたつもりはない。

しかし、自身が知っている世界には魔物は架空の存在で実在しない。

その実在しない存在が【これはゲームだ】なんてことを言うのだ。

自らを存在しないただのプログラミングの一つだと言っているようなものだ。混乱を極めるのは恐らく自分だけじゃないと思いたい。

今だって【迷子なら村まで送っていく】と言われているがこれもどこまで本当のつもりなのかと疑っている。



魔物を仲間にするゲームは何度もしたことがある。

しかし、存在が元々違う魔物と分かり合うなんて本来あり得るはずがない。

人間が動物と真の意味で分かり合うことがないように魔物も凶暴さや凶悪さに差異があれど同じようなものだと思っている。



そんな警戒混じりの思考を遮るかのように声が掛かる。



「おい!お前、本当に大丈夫か?さっきから俯いて黙りこくってるじゃないか、前を見て歩かないと転げちまうぜ?

それともその黒い二つの目だと思われる部分は実は目じゃなくて、他の場所に本当の目でもあるのか?」



ボロボロのマントをたなびかせながらスケルトンもとい【ノーシーク】と名乗る魔物は赤く光るメタリックな目の拘束具で見えているかどうか怪しいクセにこちらを振り返って口元に笑みを浮かべたまま話しかけてくる。




「いや…目はコレだけど…」




逆に人間でこの二つ以外の場所に目があるヤツは見たことがないし、もしいたらそれは確実に人間じゃないと言い切れる。




「あぁ!合ってるな、じゃあさっきからなんで地面を見ているんだ?地面に一目惚れでもしたのか?

それとも…村に戻るのが後ろめたいのか?」




次には明るい声音のまま、真実を問い質すように自身に完全に体を向けてノーシークは尋ねてくる。

もし、これが本当にゲームならば選択肢が出てきて返答を間違えれば死んでゲームオーバーになるんじゃないのかと思えるそんな錯覚が襲ってくる。



「いや…ゲームの中だって実感がなくて…もしこれがゲームならオレは何をすればいいのかな…とか考えてて…」



嘘ではなかった。後ろめたいことがないと言えば嘘になるし、きっと村に行けば誰一人いなくなっている筈なのは想像に容易い。それを想像して後ろめたいと思うことがないとは言い切れない。

しかしその全てを何故か語るのが憚られて、口をついて出たのは嘘ではない、頭の片隅にある疑問だった。

魔物が怖くて逃げ出したなんて同じ魔物であるノーシークに言いたくなかったのかのかもしれない。

どんな返事を返されるだろうかと地面を見つめていた視線をあげる。



「…ゲームならすることは一つだろ?この世界を恐怖と絶望、混沌へ陥れる悪を倒して世界を救う勇者になるのがセオリーだ♪

王道のゲームだろ?単純明快、レベルを上げてモンスターを倒しまくってその先にいくだけだ♪」



視線の先のノーシークは変わらず笑みを浮かべて答えた。

その明るい声音に何故か何の感情もない空虚なモノが感じられて赤く光る目の拘束具から視線が動かせなかった。

怒っているわけでもない。

責めてるわけでもなければ質問を質問で返して不愉快になったような雰囲気もない。

それでも一瞬答えを言う合間に、失望されたような何かを感じ取れたのは思い込みか、被害妄想か…。



「でも、いきなり勇者になるのは怖いだろ?

今から行く村で、チュートリアルの戦闘が起きるんだ、それに勝てれば晴れて勇者の誕生、巨大な悪を打ち倒すストーリーの始まりだ♪

あ!でもこれは村のヒューマンにはトップシークレットだぜ?」



なおも変わらず笑みを浮かべて言うノーシークに、頭の片隅で骨だから骨格的に笑っているように見えているだけなんじゃないのかと思い至る。

そもそも骨に表情筋がないのだから【笑っている】という表現はきっと正しくはないのだろう。

そのままノーシークの違和感を突き詰めようと考えるも次に発されたノーシークの言葉にその考えはすぐに塗り替えられた。



「え?チュートリアル?」



「なんだ?チュートリアル知らないのか?

んー、まさかそこまでゲーム初心者だったなんてな!

よかったな、オレがいて♪せっかくだから説明してやるぜ!

チュートリアルっていうのはいわば練習だ、ゲームを楽しむには操作方法や戦い方を覚えておかないと、楽しめるものも楽しめないだろ?」




あれが?

あの赤い赤血球のような魔物がチュートリアル戦闘だった?



ノーシークの明るい説明の端で、脳内はまさに混乱を極めていた。

もしゲームの流れが存在していて、ノーシークの言う流れが正しい進行だとしたら、そこから戦うことを逃げ出した自身の流れはどこにあるのだろうか、勿論、ゲームの世界だなんて馬鹿げているのだからその流れが当てはまらない時点でゲームじゃない可能性だってある。

それでもいろんなゲームをしてきた自信はある。

正しいゲームの進行と違う展開がもしゲームのルートの一つとして存在しているのだとすれば、大概正規ルートじゃないルートの行く先なんてバッドエンドかゲームオーバーの二択しかない。



「ちゃんと村人も補佐として、もしくはウォールとして手伝ってくれるから、ちゃんと隙さえ伺えば負けることはないだろうぜ♪あ、それでも不安ならナイフの使い方でも教えてやろうか?」


そんな自身の内心を知ってか知らずか明るい口調で延々と話し続けるノーシークは自身が片手に持っているナイフを見つめて袖口が垂れて見えない手を持ち上げ骨の指を伸ばしてナイフ指し示す。




「…負けたら?もしそのチュートリアル戦闘で負けたらどうなるんだ?」



「負けたら?普通にゲームオーバーで現実にリターンして二度とこのゲームが出来なくなるだけだぜ、マイフレンド♪」




大したことじゃないだろと言いたげなノーシークの言葉に返す言葉に戸惑う。

それでも気になる部分だけはどうしても聞いておきたかった。



「二度と出来ないのか?」




確か、と友人が言っていた言葉を思い出す。


『だからぁ!その一回、ゲームオーバーしたら二度とプレイ出来ないって噂のゲームが先輩伝いで手に入ったんだよ!』


もし、本当にこれがゲームなのだとしたら。

友人から借りたこのゲームの中の世界なんだとしたら。

攻略サイトもプレイした人の情報がないゲームの中だとしたら。

推理ゲームも推理も得意じゃないのは確かだった。

しかし、ゲームというのは何時でも発想や効率よくしようとするアイデアで乗り切ることが多い。

その優秀な発想力がもし正解を導いてくれるとするなら『ゲームオーバー』すると二度とプレイ出来ないという言葉が文字通りで、ゲームオーバーによって『死んで』二度とプレイ出来ないのだとしたら…。


そこまで思い至ると急激に体中から血の気がひいたような気分になる。




「二度と出来ないのが嫌なら勝ち続ければいいだろ?

それにセーブさえしておけば特定条件の時は、ゲームオーバーでもロードは出来るぜ♪」


「セーブ…があるのか?」



そりゃそうだ、ゲームだっていうならセーブもロードもあるだろう、それならノーシークの言う通り勝ち続けてクリアさえすれば死なないで済むんじゃないかと答えが出る。



「とりあえずチュートリアル戦闘が終われば一回セーブ出来ると思うぜ、っと話している間に村の近くまで来たな、オレはモンスターだしこれ以上いけないからここまでだな♪」


「あ、え?」




思考を中断して視線を上げれば森の抜けた遠くに村の入り口のかがり火が目に映る。

先ほどの悪夢のような喧騒はなく静かな様子に村人が皆やられたのではないかと結論が至って冷や汗と震えが戻ってくる。



「じゃあ、次はちゃんと正しいタイミングで会おうぜ♪マイフレンド!Good bye!」


「あ、待っ…」



その内心をノーシークは知る由もないのだろう、次には自分が何か言う前に、村から逃げ出すように森の奥へ音もなく消えていき静止する暇もなく去っていった。



「どうしろってんだよ…」



それでも村でまだチュートリアルの戦闘が終わっていない可能性はある。

負けるか勝つかゲームのルートが本当にあるとすれば逃げていた間も戦闘は続いていて、今も村の中に赤血球が漂っていることになる。

これがゲームなのだとしても、その場にいるような感覚を味わうこのゲームの懸念事項は多い。

ケガをしてもすぐ治るのか、痛覚はあるのか…。

けれど村人の悲惨な姿はあの赤血球の攻撃方法だとリアルで死体を見ることはないのは救いだ。

正直グロいゲームは得意じゃない。

このゲームでグロい場面を見てしまえばもはや勝ち負けの前に気絶してそのままあの世に行くんじゃないかと思えた。

 



「大丈夫…これはゲーム、ゲームなんだ、そして生きたかったら…勝つしかないんだ…」



自分に言い聞かせるように呟きながら、息を殺してナイフの柄を震える手で握りしめて村のかがり火に向かって歩を進めていく。

これがもう、ゲームでも現実でも良かった。

自分が一番望んでいるのは元の場所に帰りたいということだ。

それが夢物語のようなゲームでも、クリアすれば帰れるのならその流れに沿おうと思えた。








村に近づいていくとかがり火のそばに立っている人影が視界に映し出される。それが人間だと気づいて、生きている人がいるという安心に肩の力が無意識に抜けた。

それと同時に赤血球はどうなったのだろうかと尋ねようと慌てて近寄っていく。



「あ!お前はっ!おい!皆!奴が来たぞっ!捕らえろ!」


「え?」


しかし、村の入り口まで差し掛かると敵意に満ちたお兄さんの大きな声が響き渡り、理解が追い付かず呆気に取られている間に村の人々は農具や武器を突き付けて自分からナイフを呆気なく奪うとそのまま拘束してきたのだった。



今回も読んでいただきありがとうございます。

ようやくゲームの中の世界だと受け入れ始めた主人公。

彼は非凡な才能に溢れているわけでもない一般ゲーマーです。

ゲーム知識と頭でっかちな理論武装でここまでゲームを進めてきました。

もしこれが本当にルートなのだとしたら、彼の行くルートは果たして生きて帰れるルートなのでしょうか?

平成最後の日に投稿出来ることを光栄に思います。

令和になってもどうぞよろしくお願いいたします。

皆さまに呼んでもらえて感想評価を頂けるのがとても光栄です。

次回も見ていただけると光栄です。

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