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ANATAプロジェクト  作者: 耶麻April
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一章 行方不明の子ども達



山の中に入れば、少しもしない内に、村人達が子供を捜索をしている所に出会うことが出来た。

怪我の痛みで杖をつきながら山に入ってきた自身を見て心配そうにしてくれる辺り、この世界は思ったより優しいなと思えてくる。魔物使いだなんだと罵られていた時を思えば余程だ。

事情を簡単に説明し山の主を訪ねたい旨を伝えれば、この方向に歩けばいいなどアドバイスもくれる。

チュートリアルと呼ばれた赤血球のモンスターを倒すときと比べれば、ケガが痛むだけで内容はただの登山だ。

村人が捜索している辺りにはモンスターの気配もなく、鳥のさえずる声が響くだけである。

そもそも村長の娘が魔物を使っていなければこの辺りにモンスターらしきモンスターはいないかも知れない。



「でもオレがチュートリアルで山に逃げた時はあの骸骨がいたな…そんな遠くまで走ったか?」



記憶を思い返しても、村まで送ってもらった時はそんなに距離が離れていなかった気がする。

あの骸骨がたまたま訪れただけの旅するモンスターであれば説明はつくがそんな会話をしていないのだから分かりようはない。

もしくは幽霊なんかと同じで夜はモンスターがこの辺りに沸いて昼間は沸かない可能性もある。

骸骨はアンデッドだ。日中は動かないとしてもおかしくはない。




「って、あんな友好的なモンスターが多かったら、バトルなんて起こらないし、村人も警戒しないよな」




山の主が人語を解せるからといってあの骸骨みたいに安全な保障はないのだ。

そもそもここがゲームなんて言い始めるゲーム登場キャラなんてメタいことこの上ない。

ゲームでいうサポートキャラ的な立場か、もしくは最初によくあるプロローグを読む語り部的な随所随所でゲーム説明の為に現れる存在みたいなものだろう。




「まぁ、でもしばらくは出会わないだろうな」





もしこの少年救出がクエストの一環だとすれば、内容的にもサブクエストみたいなものだろう。

サブクエストの説明に現れる可能性もあるかもしれないが。




「誰に出会わないんだ?マイフレンド、その身体をボロボロにしたモンスターにか?」


「うわぁああ!?」




考え込むように視線を地面に落としていれば覗き込んでくる赤く発光する仮面に笑みを浮かべたような骸骨の顔が目に映り、杖のバランスが崩れてあっという間もなく尻もちをついてしまう。




「どうした、大声だして座り込んで、新しい挨拶か何かか?

見てる分には凄まじく滑稽だな!」




噂をすれば影とはよく言うもので、目の前でケラケラ笑う骸骨、ノーシークは人懐っこい声音で話しかけてくる。





「いや、挨拶じゃなくて…びっくりしたと言うか、いきなり現れるから…」


「ホワイ?おかしな話だな、無言で覗き込むならともかくオレは声を掛けながら覗き込んだぜ?

大きな独り言を言うくらいには寂しかったのか?わざわざ村を離れて山奥に入り込んでどうするんだ、登山か?」



「いや、そうじゃなくて…」



「でも杖をついて歩くくらいには身体がボロボロなんだろ?

それでも登山したがるなんて、もしかしてマイフレンドはドMなのか…いや、別に否定はしないぜ、その方が何でも楽しめそうだもんな!」



「いや、あの…」



「それはそうと、日が落ちる前に帰らないと、森の夜は真っ暗だぜ?オレみたいに夜目が効くならまだしも、足場もよくないしな、その怪我で登山で死にました、ゲームオーバーなんて結果、歴代に残る黒歴史になること間違いなしだろ、あ!それともむしろそれが目当てか、マイフレンド♪」





口を挟む暇のないマシンガントークに、もう何から返事を返せばいいのかわからなくなってくる。

延々と続く口上にどうしたものかと考えながら、取り合えず、杖を持ち直して立ち上がれば、ふと気づいたようにノーシークがこちらに手を伸ばして服についた土埃を払ってくれる。




「あ、ありがとう…」




「ん!どういたしまして♪マイフレンドに手を差し伸べるのは当たり前だろ!」





骨の指を鳴らしながら、仮面の向こうでウィンクでもしているんじゃないだろうかと思われるポーズを決めるノーシークは敵意もなければ悪意もなさそうだ。



「昼間も動けるんだな、てっきり夜にしか動けないのかと」



「ホワイ?オレはミッドナイト以外動けないと思われてたのか?心外だぜ、マイフレンド、確かにスケルトンはアンデッドだけど日中動けない理屈にはならないだろ?」



「いや、まぁ」



確かに、太陽が弱点ならともかく骸骨が動けない理由に、日中だからは理屈が通っていない気もする。

にしても、ノーシークが現れたと言うことは本当にサブクエストの説明でも始まるのだろうか。

さすがにサブクエストが何かくらいは分かるが、前回、チュートリアルも分からないのかと笑われたばかりだ。

チュートリアルが分からないならサブクエストも分からないだろうと思われていてもおかしくはないかも知れない。



「その表情はどういう感情だ?ものすごく腑に落ちなさそうな、それこそ心外だと言わんばかりのフェイスだな!

そんなにアンデッドが日中に歩くのが不満か?」


「そういうわけでは…」


「でもまぁ、確かに日中に動くのを好むアンデッドは確かに少ないな。

ゾンビだと、日中は太陽の光で腐食が進みやすくなるだろうし、オレの大嫌いなゴースト系のアンデッドは水蒸気に近い形成物質だから太陽の熱で蒸発しやすいらしいからな、勿論又聞きだから信憑性があるかは知らないけど!

骨だったらなんだ、太陽の紫外線で骨が焦げるからとかか?」



一つ聞けば倍の内容が返ってくるのはノーシークの性格なのだろうか。返事をする間もないほどのトークに息継ぎはどうしてるのかとも思うがそもそも、骸骨が息継ぎをする息があるのかも甚だ怪しい所ではある。



「いや、別にそこまで真剣にアンデッドについては考えてないというか…」



「それはそれで悲しいな、もう少しオレら魔物に対して真剣に考えてくれていいんだぜ?

何を知るにしろ、選ぶにしろ突き詰めて極めて行くことが大切だろ」



だめだ、全く話が通じている気がしない。

そもそもなぜここにいるのかも聞けていない状態である。日が暮れたら危ないと言っていたが、ノーシークと話しているだけで日が暮れて夜になるのも有り得ない話ではない。



「いや、オレ、先急いでるから、その話はまた今度…」


「急いでたのか、そうならそうと言ってくれ、マイフレンド、てっきりオレに会いたくてここにいたんじゃないかと思っちまったぜ!で?どこに行くんだ?」



最後まで言葉を紡ぐ暇がないレベルで食い気味にノーシークが返答してくるが、ちゃんと言葉の意味はくみ取るようで、馴れ馴れしく傍に寄って肩を組んできたと思えばそのまま引っ張るように歩き出す。



「あ、うわっ…!いや、この山の向こうに山の主がいるみたいで、会いに行こうと…」



「…向こう?よくあっちも散歩するけど、そんな名前の動物や魔物は見たことも聞いたこともないけどな、それはヒューマンか?どんな見た目でどんな種族なんだ?」



急に歩き出されて躓きそうになるのを何とか杖で支えながら道とは言い難い荒れた道を引きずられるようについていきながら目的を伝えれば、少し考え込むように首を傾げて矢継ぎ早に質問が飛んでくる。




「…」



しかし答える答えがない。確かに山の主と言う言葉だけで分かるだろうと思っていたのは早計ではないだろうか。

ノーシークが姿かたちがピンと来ないのと同じように自身も山の主を一目みてわかるかと言われて分かる保証はない。



「多分、モンスターだとは思うんだけど」


「いやいやいや、モンスターなんて世界を見渡せば、ヒューマンと同じかそれ以上存在してるし種族も多種多様なんだぜ?その情報だけだと見つけるのは至難の技じゃないか?」



ごもっともな言い分に返す言葉が見つからない。

だからといって村に引き返してちゃんとした情報が得られるかと言われれば微妙なところだ。

村人たちもそういえばそんな話があったなくらいの情報しか持っていなさそうな気がする。




「とりあえず、行けばわかるんだと思ってたから…」



ゲームならとりあえず先に進めばなんでもスムーズにこなせるものだと思っていたのだが安直過ぎたのかも知れない。

なんだかんだ言いつつチュートリアルの戦闘もかなりキツかった。サブクエストがそれよりも簡単だという確証なんてないし、むしろここからが本番ですとなれば、チュートリアルより難しい可能性は大いにある、むしろその可能性しかないことに今更ながらに気づく。



「どうした、歩くスピードが速かったのか、それともどこか痛むのか?顔色がかなり悪いぜ、どこかで休憩でもした方がよさそうだな」



黙り込んだ自身を伺うようにノーシークが歩くペースを落として心配そうな声を掛けてくる。

全く的外れな見解ではあるものの思考を整える為にも休憩はいいかもしれない。

自身がその言葉に頷けば、ノーシークは辺りを見渡して木陰で草葉の長さが落ち着いており座りやすそうな木の幹まで案内してくれる。



「ドリンクとか持ってるか?水分補給は大事だぜ、もう少し怪我治ってから動いた方が良かったとオレは思うけど…」




「飲み物はあるよ、ゆっくり出来たらいいけど、今、世話になってる家の人間が糾弾されてて、いや、本当は助ける気なんてなかったけど…成り行きで」




カイン達から受け取っていた水筒を取り出して、説明をしようと思うものの色々ありすぎて容量を得ない説明になってしまう。




「全く何の話か分からないけど困ってるってことだな!水臭いな、マイフレンド、オレにも手伝わせてくれよ、オレとお前の仲だろ?」



「え、いや」



出会ってそんなに回数を重ねているわけでもなければ友達になった覚えも一切ないのだが、ノーシークは相も変わらず骨の形状上笑っているような口元で人懐っこく言うため、悪い気はしないと言うか、変に遠慮するのも逆に悲しませるだろうかとかそんな変な感情を呼び起こしてくる気がする。



「そりゃ、手伝ってもらえるなら一人よりは断然助かるけど…」



「ザッツライト!そうこなくっちゃな、山の主を探すならオレに任せて正解だぜ、ここら辺はよく散歩してるし、それっぽい名前で呼ばれそうな魔物にも幾つか心当たりがないわけじゃないしな♪」



自身の返答を聞くや否や目に見えて明るい声音で言えば、パーソナルスペースを全く考えてくれない距離までノーシークが顔を寄せて詰め寄って、水筒を持った手を掴んで握手するように上下に揺すってくる。

今にも飲もうと注いだカップから飲み物がこぼれそうな勢いだ。




「ちょ…こぼ、こぼれる、やめ」


「そうと決まれば今からオレたちはパーティー、仲間って奴だな!まさにRPGの醍醐味、ワクワクしてくるだろ?

今ここに、音楽でもかけれるものでもあればそれっぽいBGMを掛けるんだけどな、生憎今は持ち合わせてないんだよな、ソーリー」


「いや、別にBGMは…って、ここ音楽掛けれるような機械があるんだ、科学も発展してるのか?ファンタジー世界なのに?」


「んー?ノンノン、逆になんで魔法と科学が同時に発展しているのがおかしいみたいな言い草なんだ?どっちも存在するならそりゃどっちも発展していくのは当たり前じゃないのか」



ノーシークの返事にどう答えたものかと言葉が詰まる。

確かにノーシークに魔法と科学がなぜ発展しているのかなんて質問したところでそういうものだと答えられてもおかしくはない。自分だって、自分の世界でなんで魔法がないのか、なんて問われればそれが当たり前で説明のしようがない。

もし出来るとしてもそれを専攻している学者か誰かだろう。



「あー…いや、オレの知ってるRPGであんまり科学が発展してるの見たことがないから」



「オーライ!じゃあ、この世界が新鮮ってことか、そうならそうと言ってくれ、なんなら今から観光でもしにいくか?

良いデートスポットがあるんだ、今からデートも楽しそうだ♪」


「は?いや、男同士でデートの単語は気持ち悪くないか?女同士なら違和感なさそうだけど…じゃなくて!山の主を探しにいくんだからいかない、寄り道はしない!」



慌てて首を横に振れば残念とでも言いたげにクスクス笑うノーシークが音もなく立ち上がって白く覗く骨の指で森の先を指さす。



「ランデブーに性別は関係ないけどな、マイフレンドが嫌がるなら真面目に探しにいくか、この先に毛細樹って言う大きな気があるんだけど、そこにいる樹の精霊が山の主の可能性があるな、そこへ行って見ようぜ♪」



ランデブーの言葉の響きも嫌だなと内心思いながらも、指し示られた先に視線を向ける。

樹の精霊か、確かにそれはいかにも山の主のイメージにピッタリだ。


水筒のカップを煽るように飲み干して蓋を閉めて、クエストの続きに集中するかと腹を括ったのだった。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

何度目かの登場、ノーシークがよく喋るお話になります。

主人公自体も珍しくよく喋っていますが、勢いに呑まれ過ぎて「いや」という言葉を連呼しまくっています。

と言いましても頭で理屈を捏ねがちな主人公なのでそれが更にイメージしやすい口調の一つになればいいなと思います。

のんびり投稿ペースになりますが、どうぞ次回も楽しみにして頂けると幸いです。

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