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ANATAプロジェクト  作者: 耶麻April
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一章 行方不明の子ども達




再び注がれたスープの皿を受け取れば、見張り番の青年カインはポツポツと、姉を追いかけた話をし始めた。

と言っても、大した話ではなかった。


何故こんなことしたのかと問うこともなく、森の中をお互い駆け抜けただけだと言う。

ただ、ひたすら譫言のように姉が「なんで…なんで…」と声を洩らしていたと言うことだけは確かなようで、実際に追いついて姉を引きずり倒せば涙に濡れた表情だけが印象に残ったそうだ。





「身内だからこそ、聞けなかったんだと思います。

姉の言葉がもし命乞いだったり、言い訳だったりすれば、きっと情に流されてナイフを振り下ろすのを躊躇ったでしょうから…」




暗く沈んだ声のまま、懐から布にくるまれた何かを取り出したカインは、少しその布に視線を落とししばらく沈黙した後、コトリ、と重い音を響かせてテーブルの上にそれを置いた。





「ナイフをお貸しいただきありがとうございました。

農具を手入れする村の方に協力頂けましたので、研磨して、余計についた汚れなどは全て綺麗にさせていただきましたので」




その言葉で布の中身がなんなのか。その汚れが何をさしているのか、カインの表情からも読み取れる。

姉の最期を貫いた、自分が貸したナイフ。

ただのスープとはいえ、食事の最中に血なまぐさい話は避けたかったのだろう。

きっと、身内が魔物使いで村人が死んだ原因ともなれば、考えるところも思うところも、自分が想像する以上にあるに違いないのだ。

しかしカインはそれ以上の話をすることはなかった。

その代わりに彼はこれからの自身の処遇について語ってくれた。



「これは、私たちの問題なのでアナタが気にすることはありません。ただ、モンスター退治のケガの治りは専門の医者もおらずしばらくこちらで安静にした方がいいと思います」


「え?ケガなんて殴られた横腹の打ち身くらいじゃ…」


「いえ、ところどころ溶けて火傷や水膨れになってますよ、包帯の下も随分落ち着きましたが赤らんでいると思います。あの暗がりの中では気づけないのは仕方ないことです」




その言葉に包帯の巻かれた身体や腕を見れば、確かに包帯の隙間が赤らみカサブタのようなものが見え隠れしていた。

あんな命のやり取りでは致命的な痛みや傷でもない限り気付けるわけがないだろうと思いながらも、これが本当にゲームなのだとしたら、治りが遅すぎるのはおかしいのではないかと考える。


と言っても、例えばゲームでよくある薬草や回復がない時、宿屋で回復出来るという展開はあるので、ゲームをしていた自分達には一日で回復したと思われていても実は一か月療養していた舞台裏のような設定があったのかもしれない。

なんてやけに他人目線な考えが脳をよぎってしまう。




一難去ったからだろうか。これが現実でも夢でもゲームだろうと、今は考えるよりゆっくりしたい思いの方が強い。

今は全部受け入れて何もかもを後で考えたい気がした。



「とにかく、今のアナタに必要なのは、療養なのでせめて傷が落ち着くまでは村で面倒を見させてください。

これは村の一存で、勝手に犯人だと決めつけ無理をさせた村を挙げての償いでもあります」




「そこまで大げさにしなくても…」



傷が治るまでと言うが、早くゲームを終わらせて帰らないことには、明日のバイトに間に合わないのではないかと場違いなことを考えてしまう。

と言っても、ここにきて少なくとも一週間近く時を過ごしているような気がするので明日のバイトもどうもないどころか、クビになっている可能性しか考えられないのだが。



「いえ、魔物を退治するのはかなり骨が折れます。我々も襲われれば応戦しますが、どうしても犠牲が大きく、このように大量に退治して生きて帰れたこと自体、称えられて然るべきものなのですよ」



考え込む自分に何を思ったのか、カインはそういうと疲れた表情ながらも感謝をしているのですよ、と念を押して立ち上がり。



「病み上がりのアナタをいつまでも起こしていてはダメですね。もう少しお休みください。とにかく、無事、村を襲った魔物は退治して犯人も…処分しました。

アナタのケガが治るまでゆっくりとこの村で休んでください」



返事を聞く前にカインはそういうと部屋を出て行ってしまう。その後ろ姿を見送りながら残りのスープを飲み干すと空になった容器を横のテーブルに置き、布に包まれたナイフを手に取る。




「処分したって…そういうことだよな?」



一人誰に言うでもなく、呟けば次には家の外から子供たちの笑い声が聞こえてくる。

壮絶な戦いだったと余韻に浸れるわけでもなく、ただ、子供たちの無邪気な笑い声と子供ならではの話に耳を傾けるようにベッドにもたれ込む。




「おい!待てよ!走ると危ないぞ」


「いつまでも子供扱いしないでよ、お兄ちゃん!もう八歳なんだから大人だし平気よ」


「何歳なっても大人の証を持ってないお前が大人なわけがないだろ!」


「お兄ちゃんだって持ってないくせに!」


「うるさい!今度取りに行くから俺はもうすぐ大人だ!」




兄妹なのだろう。

あいにく、年の離れた兄はいたが、ここまで仲良く会話をした覚えがないな、と考えながら瞳を閉じれば、微睡むように意識が薄らいでいく。



(でも、大人の証ってなんなんだろうな…)



ナイフをくるんである布を握りしめながら、色々な考えがまとまらないなと眠りに落ちていったのだった。





次に目が覚めた時は夜だった。

家の外がやけに騒がしい。

きっとこの喧騒が無ければ、少なくとも次の日の朝まで眠っていたかも知れない。

横腹の痛みはまだ続いているものの起き上がれない痛みではない。

ゆっくりと身を起こして辺りを見渡せば、テーブルの上の空いた皿とスープは片されており、代わりに水差しとコップが置いてある。


そのまま水分を頂こうと立ち上がれば、寝込んでいたというだけあって、足元がふらつきまるで『自分』の足ではないような錯覚に陥ってしまう。そのままふらついて倒れる訳にはいかないとテーブルに手をついて事無きを得れば、家の外の喧騒の声がさらに大きくなっているのだろう。

叫びのような声が自然と耳に入ってくる。



「どこにも!いないのよっ!まだ帰ってこないの!」


「奥さん、落ち着いて、どこかでかくれんぼしてたりとか、よその子の家に泊ってるとか調べてからでも…」


「調べたわよ!でもどこにもいないのよ!魔物よ!魔物の仕業よ!」


「でももう魔物は全部退治されたんだろ?犯人も処分したって…」


「そんなこと言って、実は生かしてて、魔物を操って復讐してるのよ!だって誰も彼女が死んだところなんて確認してないじゃない!もしくはあの旅人の青年が犯人よ!」


「落ち着け、あの青年が大怪我で寝込んでいるのは運びこんでたカインと一緒に見ただろ、それに今は休んでいるんだ、そんなことできるわけ…」


「いやでも、まて、確かに俺らは彼女を処分したって聞いたけど、それが殺した、だなんて聞かされてないぜ」




聞こえてくる声は聴いていてあんまり気持ちの良いものではなかった。



「まだ、俺が犯人とか、思われるのか…にしても、なんの話なんだ?」



途中からもあるが、どうもヒステリックの女性の叫び声にかき消され気味で会話の容量がところどころ掴めない。

恐らくその女性に何かあったのだろうが、それがモンスターだけでなく、村長の娘や、自分の名前があげられる限りロクな展開じゃないのは確かだった。


どうしたものかと、とりあえず喉の渇きを潤す為にコップに水を入れて一口飲めば、控えめなノックが扉の向こうから聞こえてきた。



「すみません、カインです。起きてますか?」



掛けられた声と音に少しびっくりするも、どうぞと声をかければ、扉が静かに開けられ、お互いが暗がりの中、窓からさす月明かりを頼りに視線を交わす。




「あぁ、もう立ち上がれるんですね。よかった…と言っていいものか、外の騒ぎで起こしてしまいましたか?

先ほどまでぐっすり眠っていらっしゃったのに…」


尚も聞こえてくる窓の外の喧騒に何とも言えない表情でカインが息をつき、小さく首を横に振る。



「いや、偶然なんですけど…何かあったんです?

俺のことや…そのアナタの姉さんのことも話されているようですけど…」


「……子供が行方不明になったそうなんですよ」



なんと説明したものかと少し黙り込むもカインは重々しくも話し始める。


 

「…以前、見張りの時に話したと思うんですけど、隣の村や集落から人が消えたと話しましたよね。

魔物の仕業だという話でしたが、その問題には実は続きがありまして、どの集落、村からも『必ず』最初に子供が行方不明になっていくそうなんです。

今回の状況があまりにも酷似しているので…魔物の仕業じゃないかと母親が叫んでいるんですよ」



その話は確かに聞いたなと記憶を掘り返してみる。

確か、カインの話では、商人に聞けばいいと言われて結局聞けずじまいだったはずだ。



「でもそれは安直な考えだって、言ってませんでした?」



するとカインは困ったように眉尻を下げて頷く。



「えぇ、勿論、今もその考えです。少なくとも姉の扱っていた魔物はこの村を襲った時は集団で、しかも攻撃すれば見境なく襲っていました。

初めに子供だけを狙って襲うにしては違和感と言いますか、おかしい点が多すぎる気がするんですよ。

と言っても、今の皆にその説明をしようにも、私も姉を匿っているとか言われては説得も何も出来ないんですけどね」


「…違和感?」


「なんといいましょうか…。商人曰く、子供が行方不明になり、そこから決起した村の大人がこぞって武器になりそうな農具を手に取って音沙汰がなくなり村から人が消えたと言う話でした。


これでも魔物使いについては姉と一緒に少し勉強していまして…魔物使いの魔物は魔物使いの言う通りにしか動けないんですよ。

前者と後者の話をしたと思いますが後者の場合、今回の事件を起こすのは難しいですよね。逆に前者の場合、なぜ子供から処理したのかって所が必要なんですよ」



魔物使いについては正直知識がないのでなんとも言えないのだが確か、術者には二種類いたと言っていたのを思い出す。

確か【魔物使い】には魔物を従わせて使役するタイプと自分を餌として使役する【魔物使い】がいるだっただろうか。



「子供の力なんて正直大したことはありません。

姉のあの魔物の力なら、まとめて村を襲おうと思えばすぐに出来るはずなんですよ。わざわざ弱い子供を先に狙う理由は?と考えると違和感が出てきてしまいまして…

まぁ、そんなのどうとでも捉えれると言われればそれまでなんですけどね…」


「…わざと面倒なことをして見せて犯人だと分かりにくくする、とか?

でもどちらにせよ、もう…その…お姉さんは死んでるんですよね?」




躊躇いがちに尋ねれば、カインは瞳を伏せて静かに頷く。

ならば、契約者の死んだ魔物は同時に消滅するのだからあの赤血球の魔物がしたなんて不可能な話なのだ。

勿論、この知識は全部その姉から伝え聞いているのだから嘘をつかれた可能性はあるのだが…。

いかんせん、格闘ゲームやFPSのゲームは得意でもRPG、や謎解きゲームはあまり得意ではないのだ。



「まだ終わらないのか…」



ゲームなら倒せば終わりのはずなのに、魔物がいなくなっても問題ごとは起きるらしい。





本当にこれは【ゲーム】なのだろうか。





それにこたえてくれる声はない。




少し早めの更新になります。

魔物を倒してもまだ終わらない。

RPGゲームでは解決すれば倒せればそれで終わりでも、いざ自分がその世界にいれば、後の処理なども色々あるんじゃないだろうかと考えて、一章の導入は少し長いですが、プロローグのその後も少し長めに記載させて頂いています。


次も少しでも早く執筆出来るように鋭意制作していければと思います。

いつもご覧頂きありがとうございます。


拙い文章ですが少しでも読みやすいよう日々精進して参りますので今後ともよろしくお願いいたします。ではまた次回もよろしくお願い致します。

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