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ANATAプロジェクト  作者: 耶麻April
11/17

始まり(序章もしくはプロローグ)







よくミステリー小説であるような、実は犯人は意外な人物だった!なんて物語では笑えるような展開が実際に起こったとすれば冗談じゃないの一言に尽きるだろう。



村長の娘の掛け声により再び囲まれれば、もはや遠くに落としたナイフに届く術がほとんどなかった。

先ほどと同じように再び赤血球の魔物の身体に突進して攻撃する芸当なんて早々成功するわけもない。


痛む腕と横腹を抑えながらジリジリと後退しても、何故、自分がこんなにも必死になって殺されなければならないのか全く理解が追いつかなかった。


だからと言ってむざむざ殺されてしまうのは嫌だった。

死ねばゲームなら終わるだろう。

だが終わるには痛みが伴う。



今でさえ気を抜けば泣き出してしまいそうな痛みなのだ。

これ以上を想像したくもなければ体験したいなんて露ほども思わない。




「俺が、ここで死ぬ理由はないだろ!?

俺は魔物使いじゃない!全く関係ないのに殺す意味があるのか!

俺はお前に何もしてないだろっ!」



どうにかしてその怒りを収めて殺さない方に持ってはいけないだろうかと言葉を募れば、心底、自分がこういうファンタジーな世界に向いてないのだと思い知る。

平和な国になんているもんじゃない。



話し合えば何かが変わるなんて驕った考えなのだろう。

その言葉を発した途端、さらに村長の娘の瞳が光を失ったような虚ろな目で鋭く睨みつけて、口元を歪めてあざ笑うような息を漏らす。





「関係ないからこそ、利用が出来るんでしょ?

言われなくても分かるじゃない、都合が良かっただけ…

貴方が何の関係もないから殺せるのよっ!」



「姉さん!どうして……」



見張り番の青年は力が抜けそうになるのをどうにかこらえて村長の娘を抑えながら声を漏らす。




「なんだよ……それ……」




理由を求めた時点で間違いだったのだろうか。

平和ボケな自分の思考では、村長の娘の言う理屈がどうあっても納得出来そうになかった。



これもチュートリアルなのか?

全て倒しきればこの意味不明な現状も変わるのだろうか。





「……っくそ!」





死にたくなんてなかった。



それだけが素直な気持ちで、このまま赤血球に何もせずに殺されるならと歯を食いしばって勇気を振り絞る。

さっきも素手でどうにか出来たのだ。

死ぬくらいならと赤血球に向かって手を伸ばす。


それは、先ほどのように手で核を捜すためじゃなくその包囲網をくぐり抜ける為だけのものだった。

痛む腕とは反対の伸ばした腕で赤血球をはたき落とすように渾身の力を込めて地面に振り下ろす。

致命傷にはならないにしろ、地面に叩きつけられへしゃげた赤血球を踏みつける勢いで開いた道へと足を踏み出す。




包囲された所から抜け出せば、もつれる足を無理やり前に進め、次には地面に落としていたナイフをようやく拾い上げて赤血球に向けて構えた。




「そんな意味不明な理由で死んでたまるか……っ!」




赤血球が再び取り囲もうと陣形を整えるように緩やかに動き始める。冷や汗が伝い、呼吸は浅い。

正直腕や横腹の痛みでしゃがみ込みたいのが本音だ。

足は痙攣したように震えているし、意識を飛ばせと言われれば今すぐにでも飛ばせるのかも知れない。

それでも、死にたくない一心なら人間の底力は多少なりとも働くらしい。

今も、自分は立っている。




「おいっ!そのナイフを俺に貸してくれっ!」




迎え撃とうと一歩踏み出すと、意を決したような声音で見張り番の青年が村長の娘の武器を奪い取り遠くに投げ捨て、片手で組み敷きながら自分に手を伸ばしていた。



「あんたは何も悪くなかった!戦い方を見ればわかる!

旅人でもあんまり戦ったことがないんだろ!?

怯えて逃げ出しただけだったんだろ?

だったら……誰が魔物使いか分かった今!これはもう俺達の村の問題だっ!村の中のいざこざは村の中で片付ける…俺が決着をつける!だからナイフを!」



その目は今にも泣き出しそうで、伸ばした手は遠目でも分かるほどに震えている。




「なんで……っ!止めて!カイン!私達姉弟でしょう!?」



次には切羽詰まったような声で村長の娘が組み敷かれたまま抵抗するように暴れ出す。

そうか。この見張り番の青年の名はカインって言うのかと、ようやく名前を知れたな、と頭の片隅で考える。



「姉弟だからだろっ!

関係ない人を巻き込んでっ……村を襲わせて……他の村もこいつら魔物の栄養にしたんだろ!?」


「……ちが……っ、村を襲ったのは脅しだけのつもりで…他の村のことは関係な…っ!」



「黙れっ……!早く!ナイフをっ!」



見張り番の青年カインは、更に言い募ろうとする村長の娘の首もとを掴んで抑え込むと再び自身に向けて叫ぶようにナイフを催促してくる。


赤血球は、村長の娘の意志で動いているように見えるのに何故か、娘の危機に助けに入るように動こうとはせず、ジリジリと自分を殺そうと近付いてくるだけだ。

このタイミングでナイフを渡せば間違いなく戦う術がなくなってしまう。



「武器がないと…魔物をしのげないっ!」



カインはその言葉に幾分か冷静になったのかハッとして一瞬息を呑み、しかし次には投げ捨てた村長の娘の薙刀を指差す。



「姉さんの薙刀で!そっちのが距離的にも安全です!

ここを突破したら逃げて下さい!これ以上、村の事情に巻き込みたくありません!」



その声にチラリと視線を向ければあまり遠くない距離に薙刀が投げ捨てられている。

確かに距離的にも薙刀の方が安全に赤血球対峙出来るだろう。

しかし、問題は片手で扱えるか…だ。

痛む腕の骨が折れている感じはしないが、それでも薙刀を構えていればかなりの負担がありそうなのだ。



「お願いします!早くっ!ナイフをっ!」



切羽詰まった声を、更に距離を詰める赤血球にこれ以上思案している暇はなかった。

その渡したナイフで何をするのか、自分はどこに逃げればいいのか、まだまだ考えたいことがあるのに、時間は有限だ。

その声を合図にしたように自分の体は身を翻し、薙刀の方へ駆け出していく。



薙刀は女性用なのだろう。

そんなに鍛えていない自分でも思ったより軽く感じ、これなら片手で振り回すくらいなら容易に出来そうだった。

これ以上赤血球に距離を詰められるわけにはいかないと薙刀で前方の空間を一閃すれば、赤血球の距離を詰める動きが鈍くなる。




「これなら……」



「早く!ナイフをっ!」



言葉を被さるように再びカインから催促をされ、反射的にナイフを渡してしまう。

しかし、距離が少し足りなかったのだろう。

ナイフを受け取れはしたものの組み敷く力が弱くなったのだろう。

村長の娘は一瞬の隙を見逃さず、カインの下から這い出ると躓きかけながらも立ち上がり森の中に逃げ込むように走り出していく。



「お前たち、そいつらを殺しなさい!」



「……っ!姉さん!」



カインも追いすがるようにすぐさま立ち上がると、赤血球が目に見えてないかのように村長の娘の消えていった方に駆け出していく。



「……まっ!」



制止する間もなく駆け出すカインを追いかけようとするも、村長の娘の命令に再び反応した赤血球は自身の前に立ちふさがり、今にも襲いかかりそうな体制になる。




「くそ!」




カインの方にも何匹か行ったように見えたがそれ以上に自身の前にいる赤血球の数が多かった。完璧に置いてきぼりを食らっただけではなく1対多数の人数差に無意識に言葉を吐き捨てる。






「これでどうやって逃げろって言うんだよ…っ!」



「逃げれないならバトルするしかないよな♪

大丈夫、さっきのナイフよりも良い武器なんだ♪

案外イージーモードに突入したと思えばいいと思うぜ♪」




次には聞き慣れた明るい声がどこからか聞こえてきた。

その声の場所を探ろうとすると、その前に赤血球の一匹が襲いかかってくる。



「っ!」



そんなに重くない薙刀で横一閃すれば赤血球の動きが止まり、続けざまに縦一閃に容易に切り裂ける。

ここまで切れば四等分で元に戻ろうと核に寄っていく赤血球の動きが分かりやすく用意に核の居場所が分かる。




「これか……っ」




そのまま核があるであろう赤血球の肉体を素早く切り裂けば上手く核に当たったのか弾けるように消滅していく。




「マーベラスっ!ほらな♪言った通りだろ?

リーチもあるし安心安全にモンスター退治だ♪とってもイージーなチュートリアルだろ?

ん?そんなことないか?結構ダメージ受けてるし、もしかして手こずったとか?」



再び発せられる声の方へ視線を向ければ森の木の枝にしゃがみ込むように座り込む黄色く発光する黒い物体…もとい、スケルトンのノーシークが変わることなく赤く点滅する仮面でこちらに向きながら笑みを浮かべていた。







ほぼ1ヶ月ぶりの更新となります。

お時間を開けてしまうと、前回の内容がどんなのだったか…と首を傾げてしまうことがあるのは重々承知ですので、もう少し短いスパンで執筆を出来ればと思います。


ようやくチュートリアルが終わりそうな気がします。

ここまでご覧いただきありがとうございます!

次回も是非ご覧頂ければ幸いです。

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