始まり(序章もしくはプロローグ)
人間は好奇心を無くすと何も感じなくなるらしい。
自身にはまだ好奇心が残っているだろうか、あるのならば…
きっと、このゲームが完成してクリアした時に満足して眠れるのではないか。
ただただ黙々とキーボードをならす音を耳に挟みながら考える。
でも、もし眠れなければ…と考えてキーボードを打つ自身の手が止まった。
世に出すつもりもないゲームだ。
でも、眠れない自分の代わりに誰かがこのゲームで救われることもあるのかも知れない。
なら、もし自分がいなくなった時、誰かにプレイしてもらえるようにしよう。
再びキーボードを打ち込み始め、その【誰か】は作り終えた。
それが、連鎖の始まりで、まことしやかに噂される原因になるとも知らず……。
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そんな噂を聞いたのは、バイト終わりのことだった。
昼間に終えたバイトの後に連絡が来た友達にお昼ご飯に誘われたのだ。
だからといって洒落たカフェとかそんな場所ではなく、どこにでもあるファミリーレストランのドリンクバーを目的にボリュームたっぷりのハンバーグ定食を頬張りながらその友達の話を聞いた。
「だからぁ!その一回、ゲームオーバーしたら二度とプレイ出来ないって噂のゲームが先輩伝いで手に入ったんだよ!」
息巻く友達は、頬張りながら気の抜けた返事をしたオレの態度に業を煮やしたように向かいの机から乗り出して同じ台詞を言った。
「……あぁ、だから、よかったねって言ったじゃん」
その友達の顔を手で押しのけ、ドリンクバーで入れてきたコーラを飲みながらこちらも先ほどと同じ台詞を返すと、友達は不満そうな表情をしてしぶしぶと席について添え物のポテトを口にする。
「もうちょっと興味示せよ、このゲーム、ネット界隈だとめちゃくちゃ人気あるんだぜ?
一度しか出来ない、たった一つしかないデータベースで構成されてて、コピーや模造品作ろうとしても全然上手くいかないのなんの、それどころか、プレイしてから死んだとか、身体に異常をきたしたとか、根も葉もない噂が飛び交うほどだぞ?」
「それはまた、有り得ないような代物じゃないか?
ネット界隈の噂を鵜呑みにするなよ…」
オレが呆れたような声を出せば、友達はようやくまともな返しが来て嬉しいのか満面の笑みを浮かべて頷き
「いやぁ、俺もそこまで本気にはしてないのよ?いや、ホント、そんな世の中に一本しかないならなんで俺が譲って貰えるんだよ、とか、人が死ぬような過激なゲームなら警察が押収するはずだし、ちょっと話題が大袈裟なだけだろうとは思ってるんだけど…」
そこで友達は口を閉じて、手元にあるジンシャーエールを飲み干して一息つき
「どうも、ゲームオーバーになったら、アカウント変えても、履歴を消しても二度と出来ないのはマジらしいんだよ、そのくせ、今までプレイした奴の攻略サイトも見当たらないし、プレイしようにも一回しか出来ないなら一回でクリアしたいなって」
そのまま友達はカバンからUSBと似たようなPCにつける機器を取り出すと机に静かに置いて至極真面目な表情で見つめ
「お前、ゲーム俺よりなんでも巧いじゃん!FPSでも格闘ゲームでも勝った試しがないし、お前がある程度攻略先にしてくれれば、後で攻略する俺も一回でクリア出来るかもしれないだろ!」
「……それが目当てでわざわざ呼び出したのか?俺、明日もバイト入ってるんだけど…」
まさか、攻略サイトがないゲームを攻略したいが為に呼び出されるとは思っていなかったので幾分か気の抜けた返事を返してしまう。
「代わりにここの昼飯代奢るから!この話題のゲームどうしても攻略してサイトで自慢したいんだよっ!」
次には手を合わせてお願いするような形を取った友達の情けなさに何とも言えない気持ちになり
「お前の少ない小遣いで昼飯奮発するほど、そのゲーム、価値あるのか?」
そのままUSBに似ているのに全くちがう作りのその機器を手に取って良く見つめると、うっすらとした文字で【ANATAプロジェクト】と書かれていた。
頭の隅でこれがタイトルロゴか制作チームの名前だろうかと考えながら未だに手を合わす友達に再び視線を向け
「それにこのゲームのジャンルはなんなんだよ、俺だって苦手なジャンルのゲームはあるんだぞ?」
「多分、シュミレーションRPGだとは、思うんだけど…アドベンチャーかな?とりあえずFPSや格闘ゲームじゃない」
「推理ゲームとかじゃないだけまだマシだな、でも俺の得意なゲームジャンルじゃないのは確かだな」
手を合わして上目遣いにこちらを見つめる子犬のような友達の言葉に小さく息をつくと再び機器に意識を向け、よく観察する。
PCゲームだとしてもUSB型のゲームをしたことも見たこともない。
「大丈夫!ある程度序盤でゲームオーバーしても俺、文句言わないから!攻略法少しでも知っときたいだけだから!」
「はいはい、このゲーム、PCに差すだけでいいの?パチモンでウイルス流されたりしないよな?」
「あぁ、それゲームダウンロードする用でさ、差すだけでデスクトップにインストールされるんだよ、俺もPCにダウンロードだけはしてるんだ」
「あぁ…だから一度プレイしたら二度とそのPCで出来ないのか」
納得したように言えば、友達はようやく手を合わせるのを止めて再びポテトを手にとり
「そうそう、だから踏み台として先にプレイしてくれ、期待してるからな!」
調子のいい奴だなと思いながらUSBをカバンの中にしまい、残りの食事を二人で楽しんだのだった。
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そのまま午後の用事を終えて家に帰った時にはもう夜も更けていた。
狭い玄関で適当に靴を脱いで洗面台へいけば、眠そうな自身の顔が鏡に映る。手洗いとうがいをしてそのままシャワーを済ませる頃には明日のバイトを考えるともう眠らなくてはいけない時間なのは明白だった。
「……どうするかな、ダウンロードだけでもしておいた方がいいよな、もしくはRPGならオープニングだけしてセーブしておくのもありだな」
どれほどダウンロードに時間が掛かるのか分からない為、手洗いうがいをそこそこにカバンを持って部屋に入ると真っ先にPCをつけて友達から貰ったUSBのような機器を繋げる。
「シャワー終わらす頃には、インストールも終わってるだろ…」
誰にともなく呟いてダウンロードボタンを押したのを確認すると欠伸一つ残して先にシャワーを浴びに行くことにした。
シャワーを浴びて髪の毛を乾かして部屋に戻ると不思議なことにやけにPCの画面が明るく視界に映る。
もしかしてインストールするとゲームが起動してあんなに明るい画面になっているのではないかと片手で弄っていた携帯をベッドの上に放り投げてPCデスクの真ん前まで歩いていく。
「あれ……何にも映ってないような……?」
ただただ電球を直接みているような眩しさに軽く目を細め、どうにかこの眩しさを消そうと、キーボードに手が触れた瞬間、頭の奥でバチンッとブレーカーが落ちたような大きな音が聞こえ、それがなにかと理解する前に意識が暗転したのだった。
ここまで閲覧してくださりありがとうございます。
こちらの小説は、自身がゲーム制作をするために作ったシナリオを元にノベルとして読みやすいように改変したものになります。
プロローグということで短めのお話とはなりますが、次回からもう少し長めの内容になるかと思います。
拙い物語ではありますがお付き合いして頂けると光栄です。
よろしくお願い致します。




