第一部:真の能力と王女の素顔
閲覧ありがとうございます。
個人的なことですがiPhone逝きました(泣)
よろしくお願いします!
召使になった初日は、結局、何もせずに終わってしまった。
リリーのもとに着いたのが、夕方になりつつある時間だったので、話をした後、リリーはそのまま眠ってしまった。
仕える主人が、眠ってしまっていては、まだ勝手がわからない召使のやることは特にない。眠ることにした。
翌朝、何とか主人よりも先に目覚める事が出来た。
昨日は、リリーの話を聞いている時には話に夢中で、意識していなかったが、今はわかる。
確実に、能力値が変化しているように感じる。
今までは、身体能力、魔術的能力、ともに最低ランクであり、正直、歩いているだけでも、かなり疲れるくらいだった。
今は、生前の健康な身体程度には、身体が軽い。
鏡を、見ても一目瞭然だ。肌の血色が良くなっている。
理由は、よくわからないが、素直に喜ばしい。
隣に科学が発展した国があるからだろうか?日常品などは前世と余り変わらない。
歯ブラシ。歯磨き粉、泡で出るハンドソープ・・・。
本当に、残念なほど、前世と変わらない。
顔を洗い、歯を磨き、自室に戻る。
自室に戻ると、ベッドの上には、部屋を出ていった時には無かったものが、置いてあった。
黒を基調とし、裾に白いフリルがついたワンピーススカート。これまたフリフリなデザインの白いエプロン。所謂メイド服だ。
なぜ?メイド服?
女性よりだとはいっても中性だぞ?
もっと、性別の判別つきにくいスラックスとかスーツじゃダメなのか?
文句を言っていても仕方がないので、とりあえず着ることにした。
鏡の中にはメイド服が良く似合った美少女?が立っていた。
悔しいが、想像の5倍似合っていた。サイズもぴったりだ。
「準備は出来たようですね。」
鏡を見ると、背後にメイド服姿の女性が立っていた。見たところ、先輩召使だろう。青みがかったショートカットに片眼鏡という風貌から理知的な印象を受ける。
「初めまして。昨日、配属されましたミーシャです。」
できるだけ、好印象を与えそうな感じで可愛らしく挨拶をした。
先輩との関係は最初が最も肝心だ。
前世で、初対面で適当な挨拶をして、空手部時代ひどい目にあった俺が言うんだから間違いない。
「あなたのことは、聞いています。中身は男なんでしょ?無理しなくてもいいです。」
「そうですか。それなら、そうさせてもらいます。」
「ええ。私はリリー王女に仕える召使。クレハと申します。ちなみにあなたと同じ中性です。」
驚いた。女性にしか見えなかった。言われてみれば身体に起伏があまりない。自分も大概だが。
「召使は全員、中性なんですか?」
「ええ。正確には中性になったといったところでしょうか。他はいなくなりましたので。おかげで二人しかいませんが。」
なるほど。噂は本当だったらしい。
「じゃあ、本当に国同士が合併するんですか?」
「なんですか?それは?聞いたこともありません。理由はリリー様が・・。」
クレハは、しまったといった風に、口を押えた。
「すいません。リリー様に口止めされてました。そんなことより仕事を始めましょう。」
「わかりました。」
何か訳ありなようだ。
給仕室に行き、クレハの指示通りに紅茶の用意をする。
リリーは毎朝、紅茶を飲むらしい。
結果、13個のティーカップを割ってしまった。
「呆れて言葉も出ません。この様子だと、他の家事もできないでしょう。」
なぜだ?ここまで不器用じゃなかったはず。なんだか力の制御が難しいのだ。
「すいません。」
「こうしましょう。召使の仕事はリリー様のお世話全般。主に家事と護衛があります。あなたはお強いようなので、あなたが護衛を担当し、私が家事を担当することにしましょう。」
お強い?今、お強いといったのか?皮肉にもほどがある。少しイラっとした感じが言葉に乗ってしまっていた。
「お強い?からかわないでくださいよ。」
「からかってなどいません。私の眼鏡は能力値を簡易的に図ることができるのです。あなたは、少なくとも私よりは強いですよ。」
自分でも、なんとなく能力が向上しているような気がしていたが。本当みたいだ。
「気になるなら、王城の入り口付近にある。総合能力測定水晶をお使いになっては、壁内移動検査で使用するものよりも詳細な結果が見られるはずです。」
「行ってきます。」
内心、ワクワクしながら、入り口に向かう。来た時オブジェだと思っていたものは総合能力測定水晶だったようだ。
以前使ったものよりも二回りほど大きい水晶に触れる。
【適正属性】光
【魔力量】 A
【魔力質】 A
【筋力】S
【敏捷性】A
【技能】E
【感覚】A
【特殊能力】全能強化(感情)、共感覚、ポーカーフェイス(極)
【容姿】S
【総評】ポーカーフェイス(極)が原因で前回は測定できませんでしたが、あなたは極めて、珍しい特殊能力をお持ちです。全能強化(感情)の所持者は歴史上で二人目です。感情の昂ぶりと共感覚により、他人の感情が流れ込んだのがステータス上昇の原因でしょう。共感覚、変なことに使わないでくださいね(笑)
神は、どうやら、確かに、能力を付けてくれていたらしい。全体的に転生後の人生においては裏目に出ているが。中性然り、ポーカーフェイス然り。
ステータスがこれほどあがる感情の昂ぶり。
気づいてなかったが、共感覚の相手は、一人しか思い浮かばなかった。
浮かれた気分で、王女の部屋のリビングに戻ると、リリーが出迎えた。
「すごいじゃない!能力を計ってきたんでしょ?データベースにアップされてたわ。」
どうやら、能力測定の結果は主人に知らされるらしい。
「想像より、すごかった。神ってすごかったんだな。」
「当然でしょ?だって神様だもん。」
なぜリリーが自慢げなんだ?
「良かった。それと・・話があるんだけど。」
「なんだ?」
「あなた、想像よりも気持ち悪いのね。」
「唐突だな・・・。」
何故か、理不尽に気持ち悪がられている。
「共感覚よ。あなたの感情こっちにまで駄々洩れ。昨日話している時は自分の感情だと思っていたんだけど。冷静に考えると、あそこまであんな感情が高まるわけないわ。」
なるほど、予想はしていたが、まさか、本当に相手にまで感情が伝わっているとは。
しかし、この反応はおかしい。
信じられないかもしれないが、俺は、百合に対して性的な感情を感じること絶対にない。
神に誓って。
俺が感じる感情は「尊い」という表現が一番しっくりくる。心が満たされていく至高の感情。
従って、気持ち悪くなどないはずなのだ。
「気持ち悪くないだろ?やましい感情なんて感じなかったはずだ。」
「それ。それがおかしいのよ。男にとって百合好きも性癖の一種のはずよ。多少なりとも、イチャイチャしている姿を想像したりして、いやらしい感情を抱くはずよ。それなのにあなたは・・・。」
何がそんなに気持ち悪いのだろうか?尊いとか自体、一般人からしたら気持ち悪いか・・
「そんな風に見る訳ないだろ?もったいない。百合がチープになっちゃうだろ?」
「聖母?それとも仙人?いいえ、違うは、これが百合豚ってやつね。それも病的に重度の。」
「自覚はあります。」
本当、自分でもどうかしていると思う。
「尊さだけしか感情が湧かないなんて、かえって不健全だわ。気持ち悪い。まあ・・・」
その言葉の続きは、こうであってほしい
「信頼はできる。か?」
「ええ。その通りよ。少なくとも、いやらしい感情を私たちに向けていないことはわかったわ。男にそういう感情を向けられるのは気持ちのいいものではないもの。改めて、よろしくね。百合豚新人メイドミーシャちゃん。」
リリーは活発そうな笑顔で、そう言った。八重歯が良く似合っている。
メイド服はリリーの趣味だったようだ。まあ、女の娘が好きなんだから、中性の召使にこの格好をさせるのも不思議ではないか。
食事のテーブルを囲みながら、唐突に思い出した疑問をリリーに投げかける。
「そういえば、なんで召使の数減らしたの?」
「耐えられそうになかったから・・・・」
「えっ?」
何を耐えられそうにないのだろうか?
「だから、女の子が回りに多いと、手を出しちゃいそうだから!唯ちゃんが転生してきてるのがわかったんだから、そういうのは良くないでしょ・・・?」
なんで疑問形・・・・。
リリーが俺を気持ち悪いと言った理由が、なんとなくわかった気がする。
自分と、あまりに違い過ぎるからだ。まあ、普通にも気持ち悪いんだろうけど。
リリーの黒百合姫、もとい東雲唯への思いは確かに一途だ。
だが、その思いの中には大いに性欲だとかの欲望も混在している。
好きになった相手が偶々女の子!!なパターンではなく、女同士の恋愛が普通じゃないのを自覚しつつも気にしない。本質的にに女の子が好きなんだ。
つまり百合で意外とビッチ。
彼女らの恋愛は純愛だと勝手に思い込んでいた・・・。
でも、これは、これで尊いね!
(好きな人の為に欲望を抑え込んでいるいじらしさとか、逆に、本質的に女好きで、権力とか利用すれば好き放題できるのに、耐えて、耐えて、黒百合姫だけを求めてるとか一途!尊さ、ここに極まれり!!)
心の中で、思いを言葉として爆発させてみたが、これは我ながらキモイ・・・。
共感覚が思考まで、共有しなくて、本当に良かった。
「でも、なんで男の召使まで、解雇したんだ?」
「えーと。普通に嫌いだから?興味ないし。」
当たり前だろ?何言ってんの?とでも言いたげな様子だ。
これは真性ですわ・・・。
リリーの本性を知っていたのだろうクレハは涼しい顔で食事を済ませている。
(クレハ半端ないってーー。涼しい顔して飯食ってるもん そんなん出来ひんやん!普通。言っといてや知ってたならー!)
読んでいただきありがとうございました。
最後、古い上に、少しふざけすぎた気がします(笑)
次回もよろしくお願いします!