表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

終焉8


 シェレスとアンジェは無事純白のロウタスを手に入れ、学園に戻ってきた。外は相変わらず雨が降り続いていたが、時の流れを止めてある学園は何とも幻想的だった。迷いの森を抜けると、雨の雫は重力に逆らい空に浮いている。触れるとそれは柔らかいが、すぐに元あったように戻ってしまう。


「ガハラ先生。始めましょう」


シェレスは懐から、魔法で小さくしたロウタスを取り出した。


「はい、エリザラン先生」


アンジェは頷き、シェレスが地に置いたロウタスから少し離れて唱う。


「あるべき姿。汝、今戻らん。応じよ」


元の大きさに戻ったロウタスに、シェレスは火打ち石で火を付けた。魔法では、火加減が難しいのだ。ロウタスは美しい炎を上げて燃えていく。


「彼らは大丈夫だろうか……」

「今更何言っているんですか。先生が太鼓判を押したんでしょう」


シェレスの呟きに、アンジェは呆れて言った。




 ルベリアから道形に進むこと、およそ数刻。何か見えないカーテンのような物を潜った気がした。


「……マナの気まぐれかな?普通はあそこで足止めされるはずなんだけど…」

「そうだな。でも、セルはアイツから好かれていただろ」

「そうかなぁ。嫌われてはないと思うけど……」


辺りを見回しながら、ジルフォートとセルフォードは歩く。マナ本人とは会ったことはあるが、泉に来たことはなかった。また、必要もなかった。


「ようこそ、お客人方」




   マナ


 封印の泉に住みし精霊なり。アテナと共に生まれ、アテナと共に世界を創造した。世界のカオスであるなり。世界の悪事を全て知るなり。真を求める者を祝福し、汝に幸溢れる。汝、マナを愛するべし。




 泉の手前に青年はいた。


「マナ、お久しぶりです」


ジルフォートとセルフォードは声を揃えて言った。月の生まれ変わる日にソレイユを訪れるとは言え、実は、ここ何年も擦れ違っていた。レイラは軽く頭を下げ、ナジェルはポカンと口を開けている。アテナと同時に生まれた精霊だと聞いていたので、マナも同じような老人と思っていたのだ。


「森羅万象の神よ、よくぞお戻りになられた。ジル、セル、大きくなったな。それから、印を持つ子よ。よくぞ参られた。願いを聞こう」

「えっ!あ…。えっと……。マナアリア大魔法学院にある禁断の扉を封印したい…です……」


ナジェルは声をかけられ、我に返った。どもりながら、本来の目的を思い出す。


「理由は?」


マナは間をおかず尋ねた。


「あそこが俺の帰る場所だからです。俺はガキの頃に捨てられ、みんなから嫌われていましたけど、それでも、この世界が好きなんです。授業なんてサボってばかりでしたし、大半は魔女に追いかけ回されていましたけど、楽しかったんです。初めてダチもできました……。こんな理由はダメですか?」


ナジェルの言葉にマナは笑う。綺麗事のような気もするが、それが紛う事なき本心だった。


「いいだろう。泉に入り、願いを思え」


マナは道の脇に避け、ナジェルが泉の縁に立つ。剣士の法に則り、片膝を地に付けると、恭しく剣をおいた。それから、左手は柄を、右手は刀身を掴み頭を垂れる。剣を下がった頭より高くあげる姿は、その剣を神に捧げているようだ。何かを念じているのか、ナジェルはそのまま動かない。どんな音もしなかった。ナジェルを見守るレイラ達も、身じろぎ一つしなかった。それから、ナジェルは剣を下げ、頭を上げる。剣を腰に戻すと、立ち上がった。そして、ブーツも脱がず、ザブザブと泉に入っていく。服が濡れるのも構わず、泉の中心まで進んだ。


「封印の泉よ。俺の願いを聞いて下さい。世界の禁忌を閉まっている扉を封印して下さい。この思いは、どんなモノよりも強いと誓います」


ナジェルは叫ぶ。




 ― ― 辺 り 一 面 、 白 い 光 に 包 ま れ た ― ―




「これでよかったんだろうねぇ」


 アテナはベランダから空を見上げ、呟いた。




「……コタロウさん……」

「……ああ……わかっとる……。ヒュウガ……本当に終わったんやな」


 コタロウは項垂れ、呟いた。太陽の巫女がその背をそっと撫でる。




「彼らは上手くやったみたいですね」

「そうだな。こっちも後少しだ」


 シェレスとアンジェは、燃え盛るロウタスに水をかけた。




「……終わったんだよな」


 ナジェルは振り返って言った。マナは頷く。


「学校のほうも終わったみたいだ」

「……そっか。よかった」

「ガハラ先生は、教師としては最低でも、魔女としては高位だからな」


レイラは不本意と書いてある顔で言った。





 今まで降り続いていた雨が止み、空に七色の橋が架かる。




 これにて全て終わりを迎えた。地に降りた神、次期太陽の巫女、印を持つ子の出会いから、全ては始まった。世界の危機は光となって、終焉を迎える。美しい物語を残して。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ