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終焉7


天地創造


 初め、この世界は無であった。幾つもの時が流れ、その無から始祖の神であるアテナと、中心の精霊であるマナが生まれた。世界には二人の他、何もなかった。だから、二人は世界を創ることを決めた。だが、マナは無から有を生み出す力を持っていなかった。よって、アテナが無から有を生み、その有からマナが違う物を生み出した。これ、天地創造と言う。


 一日目、初めに二人は天と地を創った。その間に、空気が生まれた。それからアテナは無から光を創り、マナは無を集め闇を創った。


 二日目、アテナは無から地に水を創り、マナは水から水を守る精霊を生み出した。


 三日目、アテナは無から地に陸を創り、マナは陸から陸を守る精霊を生み出した。


 四日目、アテナは無から太陽を創り、マナはその残骸から星々を創った。この時、昼と夜が生まれた。


 五日目、アテナは太陽の欠片から火を創り、マナはその火から火を守る精霊を生み出した。


 六日目、アテナは残った無より足りないと思う神々を生み、マナは世界中にある物から足りないと思う精霊を生み出した。


 七日目、二人はできあがった世界を見て、一日の休息を取った。これ、一週間とする。




 ふいに、アテナはパチンと指を鳴らした。それと同時に、分厚い革の表紙の本が現れる。


「ナジェちゃんは天地創造を知っているかい?」

「いえ……。知りません」

「そうかい。では、レイちゃん。話しておやり」


アテナに声をかけられ、レイラは嫌そうに顔を歪める。


「ご自分でなさったらどうですか?」

「レイちゃん、そんなことで大地の詠唱ができると思っているのかい?何十年唱ってないと思っているのかしら」


アテナは笑って言った。だが、レイラだって負けてはいない。不機嫌なまま言い返す。


「だからといって、俺は語り部ではありません」

「では、唱うかい?」

「なぜ、この地を祝福しなければいけないんですか」


アテナは笑っているようで、目は笑っていなかった。二人の間に火花が散っているのが見え、ナジェルは逃げ出したくなった。ちらりとジルフォートとセルフォードを見れば、二人とも祖母と孫の骨肉の争いから目を反らしている。


「……仕方ないねぇ」


アテナは呟いた。争いの終わりかと、ナジェルは小さく息を吐き出す。だが、続く物騒な言葉に背筋を凍らせた。


「無理矢理、謡わせようかしら」


アテナはパチンと指を鳴らす。


「謡え」


防御の呪文を唱える間もなく、レイラはアテナに術に罹ってしまった。レイラの口から、昔話が零れる。


「昔々、ここは何もなき世界。ここにあるのはただ無のみ。無のみの世界。ある時、始祖の神生まれた。同じくして、中心の精生まれた。世界はただ二人。二人きりの世界。だから、二人は世界を創ろうと決めた。ところが大変。中心の精、無から有を生み出せない。そこで、始祖の神、無から有を生み出して、それより、中心の精、新たな物を生み出した。これ、天地創造の物語」


さすが、唱い、舞うことの多い神である。無理矢理とは言え、その声は美しく、誰もが聞き惚れてしまう。


「……所謂、民謡ってヤツだな。ここで出てくる、始祖の神はお祖母様、中心の精はマナなんだ」


レイラは付け加えて言った。アテナは満足そうだ。


「鈍っちゃいないようだね。やっぱり唱って行かないかい?」

「断ります。それに、自分が森羅万象の神として初めに祝福する大地は決めていますから」


レイラの言葉にアテナは残念そうだ。こればかりは無理矢理では意味がない。大切なのはその心なのだ。


「そうかい。それなら仕方ないねぇ。そうだ、ナジェちゃんには特別、ここへ来られるようにしてあげよう。呪文を唱えた樫の木があっただろ。そこから真っ直ぐ歩いておいで。一人なら、国の入口に辿り着く」


アテナは言う。どうやら、ナジェルのことを気に入ったようだ。レイラの目は違うことを催促していたのだが、すっかり無視している。紅茶を一口。そして、アテナはやっと欲しい情報を与えた。


「泉へは、国の外れに滝があるだろう。その滝を抜けて道形に進みなさい。聖域に入れば自ずとわかる……」


アテナの言葉が終わらない内に、子どもたちの姿は消える。アテナはため息をついた。




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