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古の都10


 宿ほど派手ではないが、太陽族の村も盛大に見送りをしてくれた。それもそうだ。次期、太陽神と太陽の巫女が揃って村を離れるのである。前代未聞のことだ。多くの強者達が一緒に旅に出ることを望んだ。カイトもその一人だ。だが、足手まといは二人で十分と、ジルフォートがことごとく断った。着いてきたいのならば、自分に勝てと。無謀に挑んでいった者は返り討ちに、はなから諦めていた者は根性をたたき直すためと、結局村全ての剣士と剣を交えたジルフォートであった。


「これから僕たちが向かう磐戸は、土の民に天の磐戸と呼ばれている。この磐戸は決して閉まることがないんだ」


セルフォードが話す。一つ気がかりなことがあるのが事実だ。


「コタロウ。僕らの世界と下界は、時の進み方が違う。それは知っているのか」

「もちろんやで。下界は魔法文化が広がらんかった。そんでも、わいがおった頃に、風渡りの道を開いたんや。そげに心配せんでもええさかい。中心地はどげなことをせえても、見つからへんで」


話が通じていない。心配そうな顔をしている四人に、コタロウが自慢げに話す。


「アレが、天の磐戸だ」


ジルフォートが指を指した先には、開かれたままの大きな磐戸があった。


「みんなで手を繋ごう。コタロウは僕の肩に乗ってくれ」


セルフォードの言う通りに、手を繋ぎ、円を作る。


「神風に応えし、シルフの使者よ。汝が力を以て、我等が為に世界の架け橋を造りたまえ。我等が太陽神の名において、命じる。我が声に応じよ」




 一同は見たこともない風景の中に飛ばされた。運がよかったと言うべきだろうか。辿り着いた所は山の中である。天の磐戸は、未開の山の中に残されていた。相変わらず、雨が降り続いている。


「はぁはぁ。ごめん。ちょこっと力を使うと、すぐこうなるんだ。少し休んで後を追うから先に行って」


セルフォードは青い顔で言う。見ていられない。


「ほら。乗れ。私たちを追う度にこうなっては、少しも進めない」


ジルフォートが嫌がるセルフォードを無理矢理背負う。セルフォードはすぐに寝てしまった。


「まったく、すぐ虚勢を張る。そんなに私は頼りないのか」


背中で寝ているセルフォードに向かって、ジルフォートは言う。当たり前のように、規則正しい寝息しか帰ってこない。


「魔女が太子を嫌いな理由って、もしかしてそれ?」


ナジェルは尋ねる。


「それだけではない。自分の意見も言わず、すぐ一人で抱え込む。それでウジウジと来たもんだ」


ジルフォートは本気で怒っている。


「魔術師、魔女って頼って貰いたいんだな。嫌いも愛情の内って」


ナジェルは笑って、レイラに耳打ちする。レイラも笑って頷いた。その時だ。


「っ!お前……」


ナジェルが足を止めた。目の前にいたのは、槍を持ったヒュウガである。ナジェルは剣を抜いた。


「よく来たね。ここまで来るとは、感心するよ。でも、その前に、物騒な物はしまってくれないかな。主達に危害は加えないんだから」


ヒュウガは人形のような微笑みを浮かべている。


「魔女。俺に何かあった時、お前がみんなを守れ。死ぬ気はないけど、だだじゃあ済まないと思うんだ。アイツは強い」


ナジェルはボソリと呟くと、ヒュウガに向かって地を蹴った。その場に、聖銀の剣が残される。


「ナジェル!」


ジルフォートはセルフォートを下ろして、ナジェルに続こうとする。だが、それよりも早くレイラが結界を張っていた。指先が不可視の壁に触れ、ジルフォートは強く両手を握りしめる。ポタポタと鮮血が滴り落ちた。爪が掌に食い込んだのだ。


「お前も剣士なら、耐えろ。ナジェルの思いを無駄にする気か」


レイラが優しく、その拳を解いていく。


「私はダメだ。負けると分かって、向かうことは出来ない」


ジルフォートは目を反らした。少し前にあるはずのナジェルの姿が、とても遠くに感じられる。




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