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古の都4


 一同は盛大な歓迎を受けて、宿に入った。そしてすぐに、湯殿へと連れて行かれる。コタロウも、嫌がるのを無理やり押さえつけられ、綺麗に洗われた。




 三人は出された、乾いて、清潔な服に身を包んだ。鈍色以外の服を着たレイラも、髪を下ろしたナジェルも珍しい。汚れた服は洗濯し、濡れた荷物は乾かしているという。


「こげな雨ん中、よおこしやすったな。巫女様が元気そうで何よりですが、帰ってきたってことは太陽神様に何かあったんでしょう。それでも、今宵は宴を催すため、ゆっくりしてくんない」

「うん。そうさせてもらうよ」


ナジェルは言う。スーと腕が伸ばされた。


「それにしても、お兄さん。綺麗な髪をしてまんなぁ。結っても、ええでしょうか」

「っ!えっ……。まぁ……いいけど……」


しどろもどろにナジェルは答える。見れば、ジルフォートは梳いてもらい、レイラも弄られている。




 大量の花簪を付けられ、それでも、全く違和感無く二人は出来上がった。ナジェルの眼帯は取られていたが、前髪でさりげなく闇色の瞳を隠している。これでそれなりの格好をしたのなら、女の子でも通ってしまいそうである。それにひきかえ、綺麗に髪を梳いたジルフォートは、中々の美人である。いや、美青年と言った方がいい。誰もが振り返る、凛々しい若者になっていた。


「何で俺たちはこれで、魔女はああなんだよ」


ナジェルはこの姿が不服で言うと、仲居はパッと頬を朱に染めた。


「だって、巫女様はこの姿が一番お似合いなんですもの。それに、あなた方も殿方とは思えないほどお似合いですわ 」

「ほんま、よぉ、似合っとるで」


純白のリボンを結んでもらい、上機嫌なコタロウも言う。ナジェルは不貞腐れるしかなかった。


「!おい、魔術師。何で、そんなに乗り気なんだ」

「こんなこと、両親どもの趣味で、昔から遊ばれていた。別に乗り気なわけではないが、今更こんなことに何も感じない」


見れば、次々と出される女性物の服を平気な顔で着ている。なぜだろう。ナジェルはこの時、はっきりとした『負け』を感じた。ナジェルは、レイラから目をそらす。すると、散らかった服の山からある物を見つけた。色こそ違えど、あのヒュウガという、白い男が着ていた物と同じだ.


「これって?」


ナジェルは尋ねてみる。


「お兄さん、お目が高いねぇ。これはある土の民の暮らす島国の民族衣装で、キモノって物ですわ。お兄さんの着てみますぅ」


ナジェルの返事も聞かずに、仲居が下がる。そして、若草色のキモノを抱えて戻ってきた。着付をされながら、ナジェルはキモノについて、色々尋ねる。


「なぁ、白いキモノって何か特別なのか?」

「それに、何か絵柄とかありました?」


仲居の顔が、少し暗くなる。


「いや。上着もキモノも、何の絵柄も無い、真っ白なやつ」

「それは、白装束って言うんです。死人に着せる服ですよ」

「……死人……」


ナジェルの脳裏にとある考えが浮かぶ。


「えぇ、お兄さん。何かあったんですか」

「いや。違うよ。この中に、真っ白い服が無いから、ちょっとね」


ナジェルは笑った。少々不自然だったかもしれない。それでも、何とか誤魔化せたようだ。


「はい。出来ましたよ。ほんま、よお似合っていますわ」


仲居は満面の笑みを浮かべる。レイラの着せ替えも終わっていて、瞳と同じ、群青色の体にぴったりとした服を着ている。そこに、ジルフォートの姿は無かった。


「巫女様はあちらに居られます。夕餉の席でお待ちでございますよ」


ナジェルの顔から血の気が引いていく。この姿をジルフォートに見られたくない。何を言われるかわからない。だが、腕を引かれ、今更逃げるわけにもいかず、仕方なく従うのだった。



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