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ドラゴン、飛行と落下

最近、今更ですがシャドウバース始めました。

ディスドラゴンがお気に入りです。


「――!」


 ドラゴンと聞いていたがこれ程までとは思わなかった。

 それがアエちゃんを見た俺の感想だった。


 町外れの森の中で出会ったそのドラゴンは白い鱗と羽を持ち、その4mを超える巨体は俺を見下ろしている。


「どうですか主様、この娘がアエちゃんです!」


 ミラは驚いた俺の顔が見れて嬉しそうにはしゃいでいるが、俺は完全にドラゴンに目を奪われていた。


「かっこいいなぁ……」

「ふふ、アエちゃん、女の子なのにかっこいいって……あれ?」


 そんな俺にドラゴンは目を合わせ、互いに品定めをするかの様に見つめ合う。


「……」

「……強者、か」


 ドラゴンが口を開いた。その声は女性的だが、威嚇的で尊厳を感じさせる。


「母上の知人であるミラ殿が主と認めたと聞いていた。なるほど、確かに人間が持てる様な力では無い……だが、それだけだ」


「ん?」


 てっきり俺を認める流れだと思っていたのだが予想通りに進まない様子だ。


「血の匂いがしない。唯々強いだけの人間だな」

「もう、アエちゃんはまだ12歳でしょう!? 主様を挑発しないの!」


 ミラは呑気な感じで怒っているがアエちゃんの方は何やらプライドが高そうだ。もしや、認めないと俺を乗せないとか言い出さないだろうか?


「…………匂わなくて強いオスとか最高過ぎるな、ミラ殿! 我このオス欲しい!」


 思わずこけそうになった。


「駄目よ、アエちゃん? 私の主様なんだから!」

「えぇー!? やだやだ、我欲しいぃー!」


 翼を動かしながら駄々をこね始めるドラゴン。木々が揺れ、何度も地面を叩いている尻尾が大地を砕いている。


「す、ストップ! 暴れるな!」

「アエちゃん!? 我儘はダメだってお母さん言ってなかった!?」


「やだー! 我の周りのオス臭い上に弱いんだ! こんな理想的なオス、人間でも構わないからちょーうーだーいー!!」


 地響きすら起こしているアエの地団駄に俺達が必死になって止めていると、何処からか別の声が聞こえて来た。


『おい! あっちからだ!』

『オーガでも出やがったのか!?』

『兎に角囲むぞ!』


「やばっ!?」


 どう考えても冒険者の声だ。幸いにも囲むつもりで近付いているのでこちらに来るには時間が掛かるだろうが、このまま見つかってしまうのは不味い。


「アエ!」

「我欲しい!」


 未だに駄々を捏ね続けるドラゴンの頭を、俺はビンタ程度の勢いで引っ叩いた。


「っ~~!? いった――」

「――ほーら、良い子だ。良い子だよな?」


 手段は選んでいられなかった俺の瞳の光は、底の無い沼を出て異性を魅了する輝きを放った。




――同刻、魔王軍特殊部隊 兵舎――


「……どうしたらツムグ様の側に居られるのでしょうか……?」


 街の近くまでツムグを運んだクロエナは、魔王城の近くにある兵舎、団長室にて恋の悩みに浸っていた。


「団長、やっぱり様子が変ですぜ?」

「ああ……魔王様に御仕えするのが第一って位に訓練にのめり込んでいた団長が、まるで少女の様な顔で悩むなんて……」


 部下である魔鳥人達もその変化に気付いてた。


「「ありだな!」」


 けど団長が可愛いので割とどうでも良かった。


「いや、だけど一体誰にそんなに想いを寄せているんだ?」

「魔王様じゃないのか?」

「サキュバスの村に徴兵に行って帰ってからあの様子だし……まさか!?」


 1人の部下の声に全員の顔から血の気が引いていく。


「「「女が相手か!?」」」

「団長室の前で騒ぐな!!」


 声が聞こえ我慢の限界だったクロエナは部下達を一喝すると全員を地面に静めた。


「あー……どうすれば……」


 魔王や父親を裏切る事も出来ず、立場に縛られてツムグに会う事の出来ないクロエナ。そんな彼女の目には兵舎の外で剣を振るう団員達の姿が見えた。

 調子の可笑しい自分を気遣って、副団長が訓練の監督を行っている。


「……そうだ!」


 クロエナの頭に1つ、妙案が浮かんだ。それを実行する為に彼女は団長室に戻ると、積み上げられていた書類と向き合い始めた。


「待っていて、ツムグ様!」




***


「ツ~ム~グ~? 我の乗り心地はどう?」


「んー? メッチャいい、最高だ」


「えへへへ! もっと密着して良いからな?」


 現在、ドラゴンの背中に乗っております。なお、重患1名。

 擬態魔法を解いた瞬間凄い声で果てて失神した。


 魅了に掛かったアエちゃんは甘えん坊さんで頑張り屋さんです。この子、きっと将来は良いお嫁さんになれるだろう。(現実逃避)


「我の速度で直ぐに帝国とやらに連れて行ってやる!」

「安全にな……」


 冒険者に囲まれそうになった時は危なかったので思わず魅了して言う事を聞かせ、擬態魔法で俺の頭も黒い靄に見える様にしたから問題ないだろう。身バレは怖い。


「ツムグ、ツムグ! 我の家とか興味ない? 今度母上に合わせてやろう!」

「その内な、うん」


 このまま何事も無く帝国まで付ければ良いが……それよりも俺の中で重要な問題は元の世界に帰る方法だ。確かにクラスメイトの皆が心配ではあるが、洗脳まで施す予定の勇者達だ、簡単に殺される事は無いだろう。


(あの女神、どうやって俺達を帰す様に説得すべきか……)


 魔王が何代にも渡って存在しているという事は、例え今の魔王を倒しても俺達を平和の象徴とする事でこの世界の住人は勇者、それを召喚させたとされる神バーシアを信仰するだろう。


 魅了が通じなかったし、逆に効いてしまえば俺の居残り確定だし。


「……最高神に会えれば、もしかしたら帰還させてくれるかもしれないが……」


 残念ながら今の俺は連続徹夜チャレンジ中、神についての情報を四季の女神様に話して貰うのはリスクが高い。


 最悪、そのまま女神の間に閉じ込められるかもしれない。


 鎖で拘束され、現実の体を離れた俺の意識はずっとずっと女神様に貪られて――

「っ――!」


 そこまで想像してぞっとした。


「……っち、考えるのはやめだ」


 俺は辺りの景色を見渡す事で気分転換をする事にした。


「……ん?」

「ツムグ? 何か聞こえて来たよ?」


 周りを見渡す。海の上を通過中だが、一体どこからこの声、否、歌はしているんだ?


「……ツムグ?」


 歌の出所が気になった俺は、あまり深くは考えずに、アエの上で立ち上がって、一歩踏み出した。


「……」


「つ、ツムグ!?」


 当然ならが落下するが、俺はそれよりも聞こえてくる歌の方角を探る。


「ツムグゥーー!!」


誤字報告、感想、お待ちしております。

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