二日目 後編エルフだって美味しいものが食べたい
肉を食べる事は大事だ!
鴨であろうか、おそらく丸焼きにした肉の一部だ!
多少の臭みはあるが、良く言えばワイルドな味って奴!!
この世界に来ての二度目の食事は、栄養的には申し分ないものなのだけど・・
「気づいたかい?」
そう、調味料が使われていない。空腹が手伝って、完食できたけど食べ終えると確かに物足りないのだ。
「調味料ですね」
ミモザは頷くと話を続けた。
「私達エルフは、この森で自給自足で生活している もちろんここで手に入る物だけでは、生活できない」
確かにこの森は、清らかな空気に守られているのは感じていた。豊富でないにしても、獲物になる動物も住んでいるだろう。食べられる植物も採れるはずだけど・・・
「元々物に対する欲が少ないから、人間のようにお金も扱わない。弓の矢じりや皮を剥いだり調理するためのナイフとかは、同盟関係にあるドワーフから定期的に物々交換で手に入れる」
ドワーフもこの世界に存在するんだなぁ。
「塩が足りないのですか?」
魔術と言うより錬金術かもしれないけど、塩は触媒に利用されるってのはゲームとかでありそうな設定だ。
そしてなにより調理には欠かせない。
「察しが早くて助かるよナツキ」
「それで、今まではどのようにして塩を手に入れていたのですか?」
お金を持たないエルフ達が、どのようにして塩を手に入れていたか?想像が付いてはいた。
「今までは誰かがこの森で獲れた動物の毛皮なんかを町まで下りて交換してたんだ」
「では今回も?」
ミモザは首を振った。
「人間達に足元見られてるんだと思う・・僅かな量しか手に入らないから皆で貴重に使っていたんだ」
ここにきて珍しくえりりんもが、語りだした。
「ドワーフ達が訊ねて来てくれた時やお祝いの時に少しづつ使っていた・・」
「そうなんだ・・・」
俺もそうだけど・・人間は仕事して手に入れた給料で少しずつ豊かさを求める。ボーナスでTVを一回り大きいのに買い替えたり、新しいパソコンだって欲しい。お金があれば欲求を少しずつ満たしていく。だけど彼らは、自然と共に生きる事が生活の基本だったのだろう。でもどこかで美味しい味を知ってしまった!一度美味しさを、知り舌が贅沢になってしまっただけだ。ささやかな贅沢を、手に入れるのが今回のクエストだな。
「半年前の事だ!獲物も少なく毛皮も手に入らなかった・・・」
冬場はこの村も厳しいのだろうか?確かにここが、中世ヨーロッパ程度の文明だったら人間の村だって毎年餓死で亡くなる人も多いはずだ。
「ドワーフから手に入れたダガーナイフを代わりに持って町に下りたんだ」
ドワーフって、ゲームや小説だと鍛冶は凄い得意な印象なんだけど・・・この世界でも同じなのかな?
「えりりんはね!なんと金貨20枚も手に入れてね そのお金で皆を救ったんだよ」
「はぁぁ・・・」
この世界のお金の価値が解らない。金貨20枚がすごい事なら毛皮はかなり安く買いたたかれたんだ。
「今回も仕入れに使うのは同じナイフをつかうのですか?」
「あぁ同じ物をドワーフから手に入れてる」
「拝見してもよろしいですか?」
受け取ると鞘には、宝石らしきものがちりばめられている。抜いてみると、丁寧に打ち鍛えられたのであろう短剣だ。しかし写真やTVで見る刀や包丁より光りの色と言うのだろうか、刀はともかく包丁は板前の業物ぐらいは生で見たことはある。そのどれともちがう輝きを感じた。
「鋼ですか?」
「いや違う。それはミスリル鉱石から作られた物だよ・・ナツキ」
「ミスリルダガー!」
ゲームだと時期にもよるけど、昔のゲームならかなりの高額アイテムなのに、金貨たったの20枚?
この世界の相場が解らない。まずは相場調査しないと更に買い叩かれる恐れもあるな・・・
「このダガーナイフのお勧めって何ですか?」
単刀直入に聞くのが早いよね・・
「鋼より鍛え抜かれてるんだ!切れ味は言うまでも無い」
ここまではセオリーどうり・・
「短剣じたいにも若干魔力を帯びているけど・・鞘にあしらえた石も魔法石だから魔力がある!」
魔力って言われても具体的な効果は知っておきたいな。
「まぁ多少運が良くなるんじゃないの?」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだよ!」
見た目の美しさと効果のあやふやな魔法石を、上手く商談で嘘じゃない程度に膨らませないとダメかな。
「前回はこの国の首都まで行かれたのですか?」
「あぁナツキにはこの国の勢力図ってか地理も教えといた方が良さそうだね」
勢力は確かに知っておいて損はない。他にも、人間側の宗教とか情報はなるべく多く欲しい。
「僕の方でも今回の任務に必要と思える質問項目があるので教えていただけますか?」
ミモザは、少し肩を落としながらも苦笑いしながら答えた。
「ナツキは勉強熱心で結構!智を探求するものに悪い子いないってね」
こうして俺は旅の仕度を整える前に可能な限りの情報を思いつく限りミモザから教えてもらう事になった。
とりあえず今は、この世界で生きていくために地盤を必要だと感じていたんだ。