試験4
試験が始まってから5分が経過した。ここから折り返し地点、正念場だ。
試験監督たちは、Cチームの様子の変化が気になっていた。
「壁役が一人になったのね。土の子は体力切れかしら。あら?土の子のお世話をしている子は誰かしら。ミストレ先生、調べて下さらない?」
「氷の壁の子もよくやるね。向こうは炎が強くてすぐに氷が解けそうなのに。」
ガイア先生とルシフェル大将様がCチームのモニターにくぎ付けになっている。
「わかりましたよ、あの子は3位のヴァナラ族のレインです。得意な能力は水系なので、このチームではサポート役に徹しているようですね。」
「風を送っていた子と何か話した後に、風の子が1人減ったわね。体力が持たなくなりそうなことに気づいてきたのかしら。」
「彼は、賢いね。おや。彼が氷の壁の子をサポートするようになってから、小売りが解ける速度が減っている。」
「気温を下げているのかしら?まったく、器用ね。」
ガイア先生とルシフェル大将様がCチームを見ている間も、ミストレ先生はBチームの様子をしっかり見ていた。
陣形に変化はない。時々、メンバーを入れ替えつつやっているようだ。
「あ。」
画面に映っている生徒の一人が赤く点滅し始めた。けがをしたようだ。
「ガイア先生、ルシフェル大将、Bチーム、一人けがをしました。」
「あらら。」
「それは、意外だね。」
2人はBチームの画面を見直す。
Aチームと違い、けがを治そうとしている子がいる。氷か何かで出血を止めようとしているのか。
しかし、けがが大きすぎた。
30秒もしないうちに、死亡判定のブザーが鳴る。
「試験終了ね。ミストレ先生、よろしく。私は下に行くわ。」
「わかりました。」
ミストレ先生は試験終了の放送をかけるべく、マイクを手に持った。
「これより、試験を終了します。全員、能力の発動をやめるように。」
この放送が聞こえたとき、アシュは焦った。
まだ10分は経っていないはずだ。いったいどうしてこんなにも早く試験が終わってしまうのか。誰か、このチームで死亡判定がついたひとは・・・。いないようだ。
いったいどうして。
悩んでいるうちに、元の第三能力実習室に戻った。
みんな呼吸が荒かったり、汗を大量に掻いたりしていて、しんどそうだ。
「受験生は第三能力実習室に移動してください。」
放送が鳴ってから、移動していたチームの人たちが返ってきた。
「ごめん。」「気にするな。」という声が聞こえてくることから、ほかの2チームは死亡判定がついた人がいるらしい。
俺たちは合格したのだろうか。
「みんな静かに、」
ガイア先生が実習室に入ってきた。
「今の試験は、個人技を見るのはもちろんのこと、チームワークやリーダーシップ性を見ていました。これから2次試験に移ります。」
2次試験もあるのかよ、という声があちこちから聞こえる。
アシュもレインもこの試験しかないものだと思っていた。
こんなに疲れている状態で、2次試験はきついな。
「呼ばれた人から、第2能力実習室に行ってください。ほかの人はこの教室で待機です。待機しながらモニターで、ほかの人の試験を見ます。試験の内容は、演武、今持てる最高の能力で演技しなさい。今回の試験では人外化はなしです。人間の姿で、より激しく、より美しい能力の使い方をしたものを評価します。試験の順番は、A、B、Cチームの学年順位が下の人からよ。」
ここで、ミストレ先生とルシフェル大将も実習室に入ってきた。先生たちも、ここで試験を見るらしい。
「まず、Aチーム、カーバングルのエソラ。第2実習室に入ったら好きなタイミングで能力を出しなさい。制限時間は能力を発動してから1分間です。」
カーバングルのエソラが第2実習室へ移動する。
土系の能力者はどのような演技をするのだろう。
エソラは第2能力実習室に入ると、深呼吸をして精神統一。
いきなり大量の砂埃を巻き上げた。
エソラの姿が見えなくなるほどの大量の砂。画面にも砂しか映っていない。
それから一瞬で、2つの大きな竜巻になった。能力を使って、砂を2つに分け、風の方向を変えて作ったのだ。
これは、土系統の力にたけているだけでなく、風系統の力も使える必要がある。
さっきの1次試験の影響もあってか、1分演技をし続けることはできなかったが、圧巻だった。
「次は、」
次の生徒も、その次の生徒も、素晴らしかった。今まで準備をしてきていたのか、というほどだ。
「次は、龍族ワイバーンのクラウ。」
いよいよ、学年1位の生徒のお出ましだ。