試験3
先生たちは、廊下で全チームの様子をパソコンのモニターで見ていた。
Aチームは攻撃特化型だろうか。防御壁を作っている人がおらず、全員で攻撃している。それでも、今の段階ではまだ誰もけがしていない。
Bチームはバランスがいい。防御担当、攻撃担当に分かれていて、10分という長い時間を戦うために、何人かは能力を使わずに休んでいる。
Cチームは基本はBチームと同じだが、全員攻撃している。見た目はBチームよりこちらのほうが安定している。
「Aチームおもしろいわぁ。こんなチーム初めて見た。」
ガイア先生はAチーム推しらしい。
「Bチームは教科書通りね。何も事故がなければこのチームは10分間切り抜けそう。」
ほかの先生たちもうなずく。
「僕はCチームが好みかなー。育てがいがありそう。体力が持つかは心配だけど、ちゃんと教科書に沿ってやろうとして張り切りすぎちゃっているところがかわいい。」
とはルシフェル大将のコメント。
ほかのチームと違って、人外本来の姿に変化しているのもこのチームの特徴か。
「そうですねー。教師としてはBチームのような生徒が楽なのですが。」
とは教師歴の長いミストレ先生。
「Aチームはなんか我が強そうね。私、1位の子割と欲しかったのに残念だわ。」
モニターを見ながらガイア先生は悲しそうな眼を向けた。
誰かがけがをしたらしい。
しかし、誰もそれに気づいていない。気づいたとしても誰も直すことはできないだろう。Aチームで死亡判定が出るのは時間の問題。
ほかの先生たちもAチームの画面を見るのをやめた。
まだ、試験が始まってから3分しかたっていない。
そして、こちらはCチームサイド。
そろそろ体力がやばいです。
「スイ、大丈夫か。少し休め、今は向こうの攻撃もあんまり来ていない。」
「ごめん、アシュ。」
最初に二人同時に防御壁を出したのがまずかったか・・・。と、いまさらながらアシュは気づいたようだ。
スイの額には大量の汗が出ている。
「スイ、まだまだ君の力が必要だ。今のうちに安んどけ。アシュ、しばらく一人でも壁を出せるな。」
レインが防御壁を冷やすのを止める。スイの体力回復のアシストをするのだろう。
「1分!それ以上は俺もきつい。」
そう叫んで、アシュは自分の出している防御壁に集中する。
冷やす人がいなくなったせいで、氷が解けるのが早い。そのせいで、出し続けるエネルギーが多くなる。
結構きついな、これ。
「スイ、手を出せ。」
スイが作った手のコップに水を生み出す。飲め、ということだ。
スイも遠慮なく飲む。
「ごめん、もう1杯もらっていい?」
「遠慮するな。」
もう一度、水を生み出した後、スイの上がった体温を下げるべく、氷を生み出す。
氷を作るのはそんなに得意ではない。アシュのほうがこちらはうまく作れるが、レインは防御壁を作ることができない。
氷になり損ねたシャーベット状の水ができてしまうが、体を冷やすのには問題ないだろう。
戦況は悪くない。
龍たちの鱗はしっかり弾丸をはじいているし、人間は攻撃する前にやられることが多く、そんなに玉も出てこない。
問題は体力だ。
「カグラ、ルイ、どっちか休め。体力が持たない。」
「わかったわ、ルイ、休んどいて。私、攻撃力にはそんなに自信がないけど、体力だけは自信あるの。」
「うん、わかった。しんどくなったら言ってね。私も、まだまだいける」
カグラとルイは大丈夫だろう。
龍になって攻撃している人たちも、何とかなるかな。こちらから指示を出しても、声が届きそうにない。
本来の姿になったほうが攻撃力やなんやらかんやら上がるという話を聞いたことがある。
「レイン、もういいか。しんどいぞ、さすがに!」
「いまいく!」
レインは、アシュのサポートをしながら、若干先行きが不安になってきていた。
大丈夫だろうか。