特別科準備室にて
「失礼します、高等部二年、龍族、青竜のアシュです。」
「失礼します、同じく高等部二年、ウィンディーネのサラです。」
特別科準備室に行くと、ちょうどヴァナラ族のレインが応募をしに来ていたらしい。
成績は学年で5本の指に入るほど賢い。しかもかなりのイケメンで、女の子にすっごくもてている、らしい。
レインはアシュ達を見ると、口の端に笑みを浮かべて部屋を出て行った。
「ああ、サラ、よく来てくれたね。その隣の子は、さっき体育館でも一緒にいた子かな。」
「はい、龍族、青竜のアシュです。」
ガイア先生は、サラにしか意識が言っていないらしい。
「サラ、突然だけど、推薦枠で特別科に入ってくれないかな。」
「え、」
「な、」
なんだと、と言いたいのをアシュは必死にこらえる。
何度も言うが、サラは成績が良くない。特別科に入るなんて考えられない、なおさら推薦枠でなんてあり得ない話だ。
「私、成績、よくないですよ…」
「能力実習のことか。確かに40点、欠点ぎりぎりだね。基礎能力研究の成績もあんまりよろしくないのかな。数学とか化学物理も苦手そうだね。」
「うう。」
ガイア先生が、机のパソコンに向かう。サラの成績を改めて見直しているのだろう。
「いや、ね、特別科のチームに一人は回復役がほしくてね。回復系の能力にたけている子はなかなかいないじゃない。それで、私が欲しいタイプの回復系がサラだったわけなんだけど、どうかな。特別科に、きてくれる?」
サラは一度アシュの顔を見た。アシュはというと、できるだけ無表情になるようにと努力しているらしい。
「はい、喜んで。」
サラのいい返事を聞くと、ガイア先生はとてもうれしそうな顔をした。
「それで、アシュだったかな。」
「あ、特別科の応募に来ました。」
「昨年度のクラスと順位を教えて。」
「A組27番です。」
この学校では、成績が良い順に、A組、B組、C、D、最後はH組となっている。さらに、クラス40人の中でもテストごとに順位がつけられる。先ほどのレインはA組の3番。一方サラはF組9番。何度も言うが、推薦を受けることが信じられない。
「どの教科も素晴らしい。若干英語が足を引っ張っている気がするが、その英語も平均点よりは10点近く上だときている。頑張っているんだね。」
「ありがとうございます。」
素直に頭を下げるアシュ。
いったいこの先生は、何を基準に特別科への入学を決めるのだろう。
「特別科の試験を受けることを認めよう。明後日、午前九時半に第三能力実習室に来ること。一応、サラも来てほしい。持ち物は特にないけど、動きやすい服のほうがいいかもしれないね。」
「わかりました。」
二人そろって返事をし、準備室を出る。
試験が楽しみだ。