ガイア先生の声掛け
始業式後。
「なあ、サラ、特別科準備室までついてきてくれないか。」
「えー。自分で行きなよ。」
文句を言いつつもアシュの後をついてくる。このあとホームルームも授業もなくて暇なのだ。
この学校では、中等部から全寮制になる。初等部の生徒は自宅から通うことも可能だが、天空星に学校が一つしかないため、家から通い辛く寮を利用している生徒のほうが多い。
体育館を出ようとすると、サラがガイア先生に呼び止められた。
「あなたが、ウィンディーネのサラ?」
「あ、はい、サラです。」
急に思いもしない人物に呼び止められ、挙動不審になるサラ。それを羨ましそうに見つめるアシュ。
間近で見ると、本当にきれいな先生だ。女性らしくなよらかな雰囲気で、とても軍部中将だとは思えない。
「この後は時間は大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあ、特別科準備室へ後で来て。」
それだけ言うと、体育館をさっさと出て行ってしまった。
ちなみに、この星では苗字がなく、種族と名前で呼んで区別している。
「いいなー。絶対特別科推薦だろ。」
「違うと思うよ、私、成績そんなによくないの知っているでしょ。アシュのほうが絶対成績いいもん。」
たしかに、サラの成績はそこまでよくない。せいぜい中の下くらいだ。アシュのほうがかなりいい。
「いや、まあ、おれのほうが成績はいいけど、この時期にあの先生から声をかけられるのは絶対特別科推薦しかないから。」
「絶対去年の成績が悪すぎて、先生に怒られる感じだよ。仮進級にはぎりぎりならなかったけどさ。私、能力実習ほんとに欠点ぎりぎりだったの。」
能力実習とは、空を飛ぶ、簡単な火を出す、その火を消化できる程度の水を出す。などの簡単な基礎的な能力を伸ばす授業。個々の特性を伸ばす応用能力実習という教科も別にある。
「そりゃ、残念だな。今年はガイア先生が能力実習担当するのか?あの先生、一応新任だよな。」
「そうだっけ。あ、じゃあ筆記用具くらいは持って行ったほうがいいのかな。」
「あ、おれも持っていない。」
「じゃあ、女子寮の前で待っていて。私2階だから、すぐ取ってこれるし、女子寮のほうが近いでしょ。アシュにも貸してあげる。」
「ん、ありがと。」
サラは走って体育館を出て行った。
その途中で先生に廊下は走るな、と怒られたらしい。