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105号室の君。

作者: 明樂

俺と彼女が出会ったのは、病院だった。

俺は兄の付き添いで病院に来ていた。


「おいバカ兄貴。早く退院しろよな」


「なんだなんだ悠稀〜兄ちゃんがいなくて寂しいのか?」


「あ?んなわけねーだろ。病院に見舞い行かされんのがだりーんだよ。」


「はいはい。いつもありがとな。」

兄貴は申し訳なさそうに笑って俺の頭をなでた。


「なんだよ兄貴気持ちワリーな!!」


「気持ちわ……ひどいやつだなぁ。」


「(σ-д・´)ベーッだ!!じゃー、俺帰るわ。」

俺は病室を出た。

遅くなったけど、俺は東悠稀(あずまはるき)

兄貴とは五つ離れている。



確か兄貴は車で事故にあったって言ってた。

向こうから突っ込まれたらしい。


毎日見舞いに来るのは、正直めんどくさい。




*****






ある日、また兄貴のお見舞に来ていた。

俺の兄貴病室は106号室。

「……だるい……。」

母さんは仕事で忙しくなかなかお見舞に行けないからかわりに俺を行かせてる。



携帯をいじりながら、廊下を歩いていた。




《ガラガラ……》

いきなり105号室のドアがあいた。

「わっ!」


「あっ、ごめんなさい……。」

中からは車椅子にのった女の人が出てきた

黒髪のストレートで、左目の下にホクロがある。

「あ、いや、俺の方こそすいません…急に。」


「いえいえ、私こそ……」


「あの、その」


「申し遅れました、私朝比奈更紗(あさひなさらさ)といいます。」


「あ、俺は東悠稀といいます。」


「悠稀くん、よろしくね」

笑った顔が、とても素敵だった。

そう、俺は一目惚れしてしまった。






*****




更紗さんに会ってから、暇さえあれば隣の病室に遊びに行っている。

もちろん、兄貴のとこも行ってる。

「悠稀くんは、お兄さんが退院したらもう会えないのか……」

ちょっと寂しそうに更紗さんが言った。


「更紗さんは?」


「私は生まれつき心臓が弱くて……ずっと病院なの。退院するかどうかすら……」


「そ……なんだ。」

俺、更紗さんのこと何も知らないな。


「更紗さん!」


「はい?」


「今度、一緒に外出てみない?屋上でもいいし、外のリハビリの場所でもいいし!」


「……ええ、行きたい!」

その笑顔はとても綺麗だった。

俺は、更紗さんに抱き着いた。


「悠稀くん?!」


「俺…更紗さんのことが好きです。」


「え!?」


「……一目惚れして……」


「……悠稀くん、実は私も……」

そう言って抱きしめ返してくれた。

更紗さんの匂いが広まる。



更紗さんの役に立ちたい。何かしてあげたい。

健康で元気な俺が出来ることは……………。




****




今日は、更紗さんと屋上に来ていた。

「外の空気は美味しいのね、」


「そうだな。」


「太陽ってこんなにも眩しい……」


「あんま外出たことないの?」


「うん。ずっと病院暮らしなの。」


「じゃあ、良かった!」


「あ、そうそう。悠稀くん!」


「ん?」


「私ね心臓移植が決まったの!」


「ほんと!?良かったじゃん!」


「うんっ!これで退院出来る。それに、悠稀くんとも色んなトコに行けるね!」


「……ああ、そうだな。」

俺らはここで初めてキスをした。





******






この日も俺は病院に来ていた。

今日はお見舞ではない。更紗さんに会いに来たわけでもない。

「悠稀……お前……」


「兄貴、元気になって良かったな。」


「考え直せよ……」


「んーん。俺は、彼女を助けたい。」


「悠稀っ!!!」


「彼女を……更紗さんをよろしくな。」

俺は、手術室に入っていった。



「……大好きだったよ、更紗さん……」





****




春になった。私は臓器移植が終わり、退院が出来る。

悠稀くんは、屋上でキスした後から会わなくなった。

連絡先も知らないから、連絡とることも出来ない。


《ガラガラ……》

扉があいた。


「悠稀くん!?……じゃない……?」

悠稀くんに少し似ていたけど、少し違う。


「初めまして。俺悠稀の兄の東晴哉(あずまはるや)といいます。」


「悠稀くんの……お兄さん……?」


「悠稀の彼女さん……って聞いたので……お見舞に……。悠稀に頼まれてたので……」


「あ、あの、座ってください!」

ベッドの近くの椅子に座ってもらった。


「悠稀くんは……?」


「……。」

お兄さんは、泣き出してしまった。



「……臓器移植……成功したんですってね」


「え、えぇ。」


「その心臓が、悠稀のものだ、って知ったらどう思いますか」


「……え!?!もしかして……」


「……悠稀は、あなたを助けたいと、ドナーになったんです。」


「……あ……えっと……」

悠稀くん……私を助けようと……そんな事を……

ありがとう、悠稀くん……





*****






私は退院した。そして今は20歳となった。

悠稀くんは私の中で生き続けている。

「更紗」


「晴哉さん……」

私は今、晴哉さんと付き合っている。

悠稀くん、私を助けてくれてありがとう。



大好きだったよ。

昔も今も、そしてこれからも。



───────────────────────


だいぶしんみりとした話になってしまいました…。

自分でも書いてて少し辛くなっちゃいました…。

ドナーとは、臓器を提供する人のことをいいます。

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