第3話 俺の班がこれまたカオスすぎやねん 1
俺の班のメンバーは次のようなもんやった。
男子
出席番号五 俺
出席番号七 大柿敬史
出席番号九 尾野道直樹
出席番号十三 葉田村佳秀
出席番号十八 御幸弘紀
女子
出席番号二十一 飯嶋靖子
出席番号二十二 大壽賀彩
出席番号二十八 マックス・トキコ・希望
出席番号三十六 比良野有実
出席番号四十 八木瑠衣
班が決まった後は各班に分かれて、遠足で行うバーベキューの材料決め、役割分担などを決めることになった。
さて。この籤運に俺は満足しとった。
理由は二つある。
一つは親友、葉田村がいたことや。
欲を言えば、百々村もいて欲しかったけど、二人とも違う班であるよりははるかにましや。
そしてもう一つ。
大壽賀彩がいたことだ。
「大壽賀彩です。よろしくお願いします」
この自己紹介からも分かるように数少ない常識人。
さらに、個人的にこのクラスの美女ナンバー一は彼女やと思うとる。
聞いたところによると勉強もかなりできるらしい。つまりは才色兼備や。
そのため他のクラスの男子からも告白されるらしいけど、
「高校の間は家からお付き合いは駄目と言われているの」って断っとるらしい。
うちのクラスでも阿品が告ったらしいけど、同じく振られたらしい。
まあ当然の結果やろな。
葉田村、大須賀。
この二人が居るんはついてたけど、それでも曲者が多く話は進みづらい。
男子は実質、俺と葉田村しか参加しとらん。
尾野道はボーとして何もしゃべらんし、御幸はずっとパソコンいじっとる。
大柿に至ってはずっと睡眠中や。
「それじゃまず食糧を何にするか決めよう」
しっかりものの葉田村が指揮をとる。
「バーベキューだからその辺も考えて。どんどん意見を出していこう」
「やっぱ肉が大事やろな。牛、豚、鶏。バランス良く買っていこ」
俺は思ったことをそのまま口に出す。
「そうだね。僕もそれがいいと思うよ」
うん。
やっぱりこいつがいたら気が楽やわ。
周りがアレなだけに感動するレベルやわ。
一人の女子が手を挙げる。
出席番号四十、八木瑠衣やった。
「じゃあ、八木さん」
「八木」
はい? 山羊?
「……えーと、山羊が食べたいのかな? 八木さん」
葉田村が少し困った顔で訊ねる。
山羊は横に首を振り、「八木」と答える。
いや、せやから山羊やん。葉田村あっとるやん。
「多分そうじゃなくて、八木ちゃんは『うんそれでいいよ』ということを伝えたいんだと思う」
大壽賀が助け船を出した。
「そうなの? 八木さん」
葉田村の問いかけに八木はコクリと頷く。
いや、そうなんかい!
ってか、大壽賀よう分かったな。天才やな。
そういや八木は自己紹介ん時も……。
「八木」
……いや、それだけかい! 二文字で終わったでこの人。おそらく全世界の自己紹介最短記録出したんやないか。ギネス載るで。
みたいな感じやったな。
それにこの間の砂ヶ浜先生の数学の授業のときも……。
「はい、じゃあこの問題の答え言ってもらおうかね。八木さん」
「八木」
「はい、正解。三ね」
いや、なんでやねん。今確実に「八木」言うたろ。このおっさんめんどいから先進めとるだけやろ。
みたいなこともあったな。
前から思うとったけどこのクラス、コミュニケーションに問題あるやつ多すぎやろ。
「じゃあ、肉以外でも食べたいものがあれば言っていこう」
葉田村が仕切り直す。
「私ハ、お寿司を食したいデス」
出席番号二十八。マックス・トキコ・希望。
彼女は日本人とジャマイカ人のハーフやった。
陸上の推薦で高校生から留学したらしい。
「本日ハお日柄もヨク、私ノ自己紹介をさせていただけるとのコト誠ニ光栄に思いマス。フツツカモノの私デスガどうぞよろしくお願いしマス」
なんかえらい日本語うまいな。江波より日本語できるんとちゃうか? けどちょい堅いで。
「マックスさん。お寿司はバーベキューには向いていないんだよ」
葉田村が優しく教える。
「そうですカ。残念デース」
マックスは首を横に振り、突然「ノ~~」っと言って教室を出てった。
なんやねんあいつ。
そんで足むちゃくちゃ速いな。