第2話 2年5組の女子もカオスすぎやねん
クラス替えから一週間が過ぎた日のLHの時間。
四月の遠足の班決めが行われることになった。
「ええー、班は皆が話し合って勝手に決めてください。以上」
担任の砂ヶ浜先生はそれだけ言って本を読み始めた。
せやから適当すぎやろ。「勝手に」って言いよったで、あのおっさん。
ほんでなんやその読んどる本。『いかに手を抜いて仕事をするか』って。性格そのまんまやな。
「じゃあ、まずはどうやって班分けするかを決めましょう。笙平手伝って」
副生徒会長の鑑山嶋がてきぱき指示をする。
さすが副生徒会長や。
この人が担任やった方がええんとちゃうか?
鑑山が司会して、高原が書記を務めるみたいや。
「班は全部で四班作り、各班十人です。男女それぞれ五人ずつになるように。では、意見がある人は挙手を!」
一人手を挙げた。
出席番号二十四、河部沙希やった。
「じゃあ、河部さん」
「男子は皆私の下僕になりなさい」
なんて? ごめん。なんて?
どれだけ女王様気取りなんやこの女。
そういやこいつ自己紹介ん時も……。
「河部沙希よ。膝まづきなさい」
とか言うとったな。
ってか今は班決めの方法決めとんのやろ。全く関係あらへんがな。
「喜んで~~」
阿品順平が河部目掛けて突っ込む。
河部は足蹴りを入れ、倒れた阿品を足裏で踏んづけた。
やり過ぎかと思うたが、阿品が幸せそうな顔をしとったさかい、気にしないでおいた。
「……あー……他に意見がある人」
鑑山が流れを変えようとする。
出席番号二十五、神邊李奈が手を挙げる。
「神邊さん」
神邊は毛筆で半紙に何か書きだした。
一分後くらいに書き終えてその半紙を皆に見せる。
達筆で「籤引き」と書かれていた。
いや、どう考えても口で言った方が早いやろ。
しかも、「籤」ってわざわざ漢字で書かんでええやろ。
神邊の自己紹介を思い出す。
「(半紙に書いて)切磋琢磨」
口で言え口で。画数の多い熟語選びよって。
達筆なんは分かるけど、書いとることは毎回普通のことやんけ。
その後、普段通り二年五組特融の混沌状態に陥りかけたが、鑑山がうまいところで切り上げた。
結局、班決め方法は神邊がゆーた……いや、半紙に書いた籤引きに決定した。