お前ヘンだぞ?
気づいたら飛び出していた。叫んで。
「晃!神夜を頼む!!」
ある意味、晃がいてくれてよかった。
神夜はカグツチしか出せない。
つまり、あの爆発しか起こせない。
結界を張ったり、程ほどの式神で戦うという事が出来ないんだ。
まさか、コインパーキングごと爆発させる訳にはいかないだろう?
背後で晃が結界を張ったのを感じた。
まあ、これで神夜は大丈夫だ。晃はあんなヤツだが、力は信用している。
「犬鳳凰!行け!」
犬鳳凰が九十九神に炎を浴びせかける。
こんなので、効く訳がないけどな・・。本命は・・
「こっちだよ!!」
柄杓の柄の部分に札を張りつける。
「ナウマク・サンマンダ・バサラ・ダン・カン!!」
柄杓の柄が弾け飛ぶ。
真言による爆発。これで、直撃だ。
「少しは・・・効いてるか?」
柄の部分が少し弾けて無くなっている。・・・なんかヘンだぞ??
九十九神に俺の真言なんて効く筈が無いんだ。それなのに・・。コイツ・・??
「悠真様ーーーー!!そいつは本物の九十九神ではありませんわ!」
やっぱりな。九十九神になるにはまだまだ、若すぎるって事か・・。
「それなら・・犬鳳凰!」
犬鳳凰が九十九神の頭上から炎を浴びせかける。
「シイ!行け!」
シイはヤマアラシの物の怪だ。全身の鋼の棘で九十九神に突進していく。
犬鳳凰の炎と、俺の真言、そしてシイの体当たり。
もう限界だったのか柄杓が砕けた。後は・・
柄杓の体部分に札をつける。
「オン・マイタレイヤ・ソワカ」
九十九神の浄化・・で完了。
柄杓の体は煙のように消えて、木片の残骸だけが残った。
「ふーーっ。何なんだ・・今のは?」
九十九神に似た偽者って事か?目撃が多いっていうのはアイツの事か?さっぱり訳がわからない。
「悠真様ーーーー」
神夜が抱きついてきた。あっ・・ちょっと忘れてた。
「バカバカ。悠真様のバカ!万が一、本物だったらどうする気だったんですか?」
こ・・・・・怖えええええ。俺一体何で飛び出したんだ?
「私の為に命を懸けないで下さい!!」
「イヤ!マジでそんなつもりは無い!!」
そうだ。そんな事考えてもなかった・・。
俺・・・なんで??
「1人でカッコつけやがって!今のは何だ?九十九神の偽者か?」
「晃は聞いてないのか?最近の九十九神の目撃情報」
知らないのか?本家なのに・・。
「聞いてない。まったく!九十九神目撃情報だ?ふざけやがって!!」
なんで本家が知らないんだ?
いや、晃だけが聞いてないのか?
トップシークレットか??
うーん・・。わからないな。
神夜が抱きついてきたまま離れないで泣いていたので、しばらくはそのままでいた。
晃は怒って帰った。
神夜の事だけじゃなく、九十九神の情報を聞いてない事にも本家次男のプライドが傷ついたのだろう。
「神夜。お前何か知ってるのか?さっきの九十九神?」
本家のお姫様なら何かを知ってるかも知れない、唯それだけの気持ちだった。
神夜が異常に反応を見せた。
「知らない!!知らない!!私・・いやっ!いやああああああ!!!」
さらに抱きついてきた。コイツは何を・・
「いやっ!私・・悠真様の側を・・うわああああっ」
大声で泣き出した。
ヘンだ。ヘン過ぎる。
神夜がこんなに取り乱すなんて、一体何があるんだ?
一体、何を・・隠してる?
「神夜・・お前何を・・」
隠してる?聞きたいがこの取り乱しようでは・・
「ゆう・・ま・・さま・・」
「何だ?」
「私を・・すぐに・・今すぐ・・」
悠真様のものにして下さい・・と小声で呟いた。
!!!!
コイツは何を??意味わかってるのか??
涙目で上目使いで・・何を恐れてる?何を・・・?俺に関係があるのか?
「はあああ。無理だな」
神夜の目にさらに涙が溜まるが、ソレはダメだろ?
「まず、俺はそーゆーのは嫌だ。そして、お前が何かを恐れてそーゆー事を言ってるのはわかる。そんなのヘンだろ?そんなのは嫌だな。投げやりで」
「恐れ・・なんて・・」
「無いのか?本当に?嘘だな。だてにガキの頃からの付き合いじゃない。バレてるよ。お前は何かを恐れて逃げようとしてるってな」
また、大泣きになった。
とりあえず、神夜が落ち着くのを待つしかない。
そして・・聞くしかない。
何を恐れているのかを。