焼くな!色々・・
「はああ・・」「はあ・・」
タメ息が多すぎるだろ?
言っておくが、俺ではない。
俺の目の前で、弁当を食っている神夜だ。
神夜と屋上ランチが始まって1ヶ月程たっていた。
「かぐや姫」ブームも、俺の超A級の注目度も少し落ち着いた、と俺は思っていた。
コイツの一言を聞くまでは・・。
「悠真様・・。交際のお申し込みをまとめてお断りする方法をご存知でしょうか?」
「・・・・ハア?」
そんなの俺が知るわけない。
自慢じゃないが、告白などされた事もした事もない。
「私は悠真様のものですのに・・」
「いや!違うし!!」
そこは、全力で否定しておこう。
「悠真様は私のフィアンセですわ。私は悠真様のフィアンセです。相思相愛なのに・・」
人の話をいつも聞かないんだよな。このお姫様は・・。
いつ相思相愛になったか教えてほしいものだ。
「はあ・・。で、男から交際を申し込まれている・・と。しかも複数って事か?」
「はい。複数・・」
「世の中には変わり者が多いんだな・・」
本音がポロッと出たが、気にせず弁当を食おうとした。
・・・暑い!いや熱い!!!!
俺の食いかけの弁当が灰になっていた。まだ煙がぷすぷす・・と音を立てている。
「おまっ!何するんだよ!指ごと燃えるだろうがよ!!」
しかも、まだ半分以上残ってたんだよ!!
「大丈夫ですわ。火加減は得意ですの」
ツーンって感じで横を向いて怒ってる。俺何かしたかよ・・。
「はあ・・。で、何の話で怒ってんだっけ?ああ、交際ね。適当にいい男でも見つけて付き合えばいいんじゃね?俺は止めないぜ別に」
さて、足りない分はパンでも買いに行くか。
「ゆ・・悠真様は・・私が・・別の・・男性と・・交際をしても・・いいんですのね?」
屋上から出て行こうとしたが、イヤな予感がして振り返った。
やばい!泣かした!!
綺麗な目から次々と溢れ出る涙を見て、少し罪悪感が募る。
本音では、別にいいんじゃね?だが・・これは言えない。
「私が、悠真様の・・フィアンセだと・・公表出来れば・・問題は・・解決します・・のに」
「ダメだ!それだけは、いくら泣かれてもダメだ。お前がそのワードを洩らした時点で俺はさすらいの旅に出る。さすらいの陰陽師になって・・」
「いやあああああああ!!!」
そこから、俺の意識はない。
気づいたら保健室に寝かされていた。
そして、なぜか体操服姿だ。
「あら?気づいたの?」
保健室のおばちゃん先生がのぞきにきてくれた。
「先生、俺??」
「大変だったのよ!屋上が急に爆発してね!全校生徒が緊急避難して、もう君以外は帰宅したのよ。屋上は立ち入り禁止なのに君は入りこんで何してたの??」
・・・・・
もしや俺は、爆破の犯人だと疑われているのか?
本当の犯人は悪魔なんですが・・。
この学校には歩く破壊兵器がうろついてて危険なんですよ!
「・・・・」
しかし、言えない。
「まあ、君の制服もかなり燃えちゃてて、綺麗な女の子が走って助けを求めにきたのよ。お弁当を食べてたら急に屋上が爆発したって泣きながらねえ」
お前だろ!!犯人は!!・・・って制服が燃えた?って事は・・
「俺もしかして裸で助けられたとか?」
「ぷふう。まあ、そうね。女の子が真っ赤になってたわ」
笑いながら教えてくれるが、こっちは泣きそうだ!
俺が一体何をしたって言うんだ・・。たとえ泣かせたとしても罰が酷すぎないか?
しかも高2になってピカピカの制服を買いなおさないといけないのかよ・・。
「はあ・・」
こっちがどうすればいいか教えてほしいぐらいだ。
体操服のまま帰宅したら、神夜がいて、普通にお茶を飲んでた。
兎に角むかついた。当たり前だが・・。
当分コイツとはしゃべらない事に決めた。力では勝てないからな!
神夜を無視して部屋に入ろうとしたら、神夜までスルッと俺の部屋に滑り込んで来た。
無視だ、無視。
いないものとして、ベッドに寝転んだ。体操服だから、もう着替えが面倒だ。
「悠真様・・・怒ってられます?」
あれで怒らないヤツがいたら見てみたいね。むしろ、そいつの所へ嫁げ!かなりの大物だぞ。
「あの・・悠真様?」
無視。
「ゆうまさまああ」
無視。
「悠真様の怒りんぼ!ばか!屋上で裸になる男!!」
人を変態みたいに言うな!決して自ら脱いでないだろうが!!
「悠真様が悪いんですわ。私が他の男性とお付き合いしてもいいっておっしゃったから・・」
どーぞ。どーぞ。俺以外のヤツの所へ行け!むしろ頼む!
「それとも、裸を見てしまったから怒ってらっしゃるの?」
まあ、それもある。久々に燃やされたぜ。
「わかりました」
全力で無視をしてたが、室内の不穏な音と気配につい口を開いてしまった。
「お前!!何してるんだよ!!」
神夜が制服を脱ごうとしていた。
「私も見せますわ。これでお相子ですわ・・」
止めなければ!わかっているのに・・
スルスルと制服のスカーフが外されて、ぼたんに手を掛けて外していく神夜を見続けてしまう。
最後のぼたんが外されて、神夜の白い肌が・・
1階でバタンと扉が閉じられた音が聞こえて、俺は我に返った。
「バカ!脱ぐな!!早く元に戻せ!!もう怒ってないから!頼む!!」
「本当ですの?」
「本当だから、頼む!服をちゃんと着てくれ!」
俺は神夜の方を見ないようにしたが、気配でちゃんと服を直していってるのを感じた。
ヤバイ!鋼鉄の自制心では足りない!!
ダイヤモンド並みの自制心がいる!!
俺に・・出来るだろうか?初めて心配になった。