絶対守護者~あなたを守ってみせましょう~
中身は同じなのですが、間違えて短編で投稿していたので、ほかにもう一度再投稿しました。
そちらの方をよろしくお願いしますm(_ _)m
『あなたを守ってみせましょう』
そんな台詞とともに、私の前に現れたのは一人の青年だった。
「まも・・・る?」
えぇ、青年は大袈裟な動作で頷く。
「何人からでも、あなたを守って差し上げましょう」
意味が、分からない。
「マモル?」
えぇ。
青年は頷く。
「でも、誰から守るの?」
「あなたに害を成す全てから」
そう言った青年の顔は、真っ直ぐだった・・・。
そう、見えたのだ・・・・・・
中学生というのは平凡だと思う。
高校生のように派手に遊んだり出来ないし、だからと言って小学生のような自由さもない。
平凡とは退屈だ。
私は―――――国森美雪は―――――そう思う。
そんな平凡で退屈な女子中学生の私は、ある日一人の守護者にあった。
それが―――――
「美雪様、美雪様っ」
私を後ろから追いかけてくる彼だ。
名前は恭唯都というらしい。
「美雪様ってば、お待ちください」
肩で息をしながら、彼は私に追いついた。
どうでもいいことだが、彼はいちいち動作が大袈裟すぎる気がする・・・
「もう、先に下校されるとは・・・。聞いていませんでしたよ?」
それは言ってなかったからそうだろう・・・
「親切なご友人が教えて下さらなかったら、美雪様を一人で下校させることになってしまっていましたよ」
一体誰から聞いたのだろう?正直この人には、あまり私の友達と接触してもらいたくはないのだけど・・・
「今日はそういう気分だったのよ」
そうでしたか。そう言いながらも、彼は自然に私と歩調を合わせる。
「・・・・・・」
「どうかされました?」
「・・・・・・」
こういう無神経な所が―――――いや、分かってるのに聞いてくる所が、嫌いだ。大嫌いだ。
「ご気分を害したのなら―――――
聞き終える前に足を速めてその場から去る。
彼はつい先日。本当につい先日、私の前に現れた。
あまりにふざけた事を言うものだから、本気にしていなかったのだけど・・・。彼は本気だった。
殆ど四六時中私にくっついている。
家にも、学校にも・・・
流石に学校は敷地内は入れないようだったが、外でずっと待たれているのは気味が悪い。
と、考えている間にも、後ろからの足音は近づいてくる。
どうやら私には、心休まる場所も時間もないようだ。
家に着く。帰宅した。
帰宅部の私は本来ならもっと早く帰れるのだが、真っ直ぐ家に帰ったためしがないので、いつも家につく頃には日が落ちている。
今は冬だ。日が落ちるのは、まぁ早いのだが。
「ただいま」
がらんと無駄に広い部屋に、私の声が吸い込まれる。
明かりのない部屋には、温もりというものがない。
明かりを点け、カーテンを閉めてまわる。
意味もなくテレビをつけた。音のない空間は嫌いだ。
「美雪様」
しかし、彼の声ばかり聞くのが嫌だというのもあるかも知れない。
「何?」
ついついぶっきらぼうな口調になる。
「上着を預かりましょう」
しかし彼は意に介さない。
守護者を自称する彼は、執事のような事ばかりしている。(正直執事自体どういうものかよくは分かっていないが)
そもそも私に、守ってもらうような必要はない。
平凡な中学生の私には、平凡な生活が約束されている。
敵なんてものは、ない。
夕食。二人で夕食。
二人と言うのは私と彼だ。親はいない。
そもそも私の家は母子家庭だ。いるとしても母だけだし、その母も今はまだ仕事をしているはずだ。
だから夕食は一人の時間。四人用のテーブルでいつも一人で食べて、いた。
だが今は二人だ。私と、彼。
正直二人して食卓を囲むのは、御免こうむりたかったのだが、私も流石に夕食を作ってくれる彼を一人除け者には出来なかった。
夕食を自分で作るという選択肢は、既に諦めている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
夕食のとき、彼は静かだ。
二人して無言の食卓とは、気まずい。
普段は常に、何かと話している彼は、夕食のときだけは静かなのだ。(行儀はいいのだろうが・・・)
私の方から話を振るのも癪だし、あまり話したい相手でも、彼はない。
毎度毎度夕食のとき、こんなことを考えているものだから、最近の夕食は気が滅入る。
そして、私がこんなに一人で考えているのに、どこ吹く風で淡々と食べる彼に、妙に苛立つ。
食事というのは、料理の味が良ければ言いというものじゃない。
「・・・ごちそうさま」
給食は食べるのが遅いが、夕食はとても早い・・・
「お粗末さまでした」
12時ももうすぐ回る。流石に眠りにつく時間だ。
彼は私の家に寝泊りしている。(四六時中、だからだろう)
しかし決して、親公認と言うわけではない。
そもそも私の母親は―――――
・・・ガチャリ―――――
玄関のドアが開く。足音。
・・・カチャリ―――――
リビングへと続く扉が開く。
2階にある自室に行こうとしていた直前。私はまだリビングにいた。
「・・・・・・」
母は―――――私に一瞬視線を向けると、何もなかったかのように・・・。私など、その場にいないかのように・・・。立ち去った。
まぁ、これは、いつもの、事だ。
私はよく知らないが。他の家庭で朝、「おはよう」と挨拶するようなあたりまえで、彼女は私を無視している。
いや、違うか・・・
私はいないのだから、無視も何もない。
そういう、ことだ。
「・・・・・・」
彼の視線が背中に突き刺さる。
彼もこの光景を見るのは初めてではないはずだった。
それでも・・・。それでも彼は、毎回のように、私を視線で突き刺してくる。
それが・・・。優しくはなく、痛い。ひどく痛い。
彼の視線から伝わるものは、私に対する優しさや、そういう類のものでは、ない。
私を通して、母を突き刺している。その視線で。
普段はどちらかと言うと、柔らかな雰囲気な彼。
しかし今は、違う。今だけは、違う。
今の彼へ向ける、もっとも適切な感情は―――――恐怖、恐れ、慄き、怯え、畏怖・・・
普段の彼は嫌いだが、今の彼は、とても、とても怖い。
今日も一日が終わる。私の一日が終わる。私の、平凡な一日が終わる。
おやすみなさい。明日もいいことがありますように・・・
いじめられた。イジメラレタ。学校で。
これは仕方ないと思っている。むしろ、今まであんな奇怪な男がくっついている私に、誰も何のリアクションもとらなかったのがおかしいのだ。おかしかったのだ。
そもそも彼女達がしていることは、いじめには至らないのかも知れない。
じゃあ何?
嫌がらせ?あぁ、嫉妬か。
彼女達は、彼が気になるようだ。
「あの人は誰なの?」
誰、なんだろう・・・。誰?
「さぁ」
私の態度が気に入らなかったの?
「何よ・・・ちょっとモテルからって、いい気になってんの?」
私は周りから見ると、容姿が綺麗な方らしい。そして彼も、端整な顔をしている、らしい。ようだ。そのようだ。カレハカッコイイ。
「さぁ」
さぁ。これが良くなかったの?
さぁ?
後は殴る蹴る、暴力に訴えかけられた。訴えかけられた暴力も迷惑なんじゃ、という程の有様だった。
まぁそれでも、一応女の子が大切にしているという、顔は傷つけられなかった。
あざくらいはできただろうが、まぁその程度だ。
そしてその程度の「いじめ」は平凡なものだ。
平凡な私とお似合いだ。
3日後。朝。ホームルーム。学校。
私をいじめてた生徒が死んだそうだ。殺されたそうだ。
昨日の夜。ちょっと背伸びしている彼女らは(不良という程でもない)いつものようにいつものごとく、夜の街で遊んでいたそうだ。
彼女達の夜遊びは結構有名で、何度か補導されていたとも聞いている。
死に様は綺麗な方だそうだ。担任曰く「安らかに」・・・
殺されたのに「安らかに」??
まぁ個人的には死んだ後どんな姿であろうと、死んでいるのだから関係ないと思うのだが・・・
詳しいことを担任の教師は話さなかった。
話したことは、
死んだのが私をいじめていた彼女達(3人)であること。
夜遊びをしている時に殺されたこと。
こんなところだ。
しかし噂や情報といったものはすぐに広まる。人の口に戸はたてられないのだ。
私は正直、友人と言ったものが少ない。(見栄を張った。正確には皆無だ)
だがここは学校。言葉を交わすくらいの間柄の人間が一人もいないことは、まずない。
聞いて回ればもっと集めることが出来たかもしれないが、とりあえず私が集めた情報はこういったものだ。
事件現場は学生が遊びまわる繁華街の中心から、少し離れた所に位置する公園であること。
事件が起きた時間帯は、夜の10時から12時の間ではないか?ということ。
この時点で、私は既に、1つの憶測を頭から消していた。
憶測・・・
それは・・・
彼が、恭唯都が犯人ではないかという憶測だ。
なんとかここまで書きました・・・
最後まで読んで下さった方、ありがとうございました!
次回読んで下さる気がある方は、連載版の方をよろしくお願いしますm(_ _)m