第4話「不可視」
観測によって存在が確定する構造において、その前提そのものから外れることで干渉を受けない状態を成立させる個体が存在するかを観測する。
見れば、決まる。
なら。
見なければいい。
通り。
人が歩く。
揺らぎのある流れ。
だが。
その中に。
“空白”がある。
対象の男が視線を動かす。
人を見る。
存在が固まる。
別の人間を見る。
同じように。
確定する。
だが。
その間。
“何もない場所”。
不自然な空間。
誰もいない。
はずなのに。
足音が、わずかに途切れる。
空間の流れが、そこだけ歪む。
「……いるな」
短く言う。
視線を固定する。
その場所へ。
だが。
何も見えない。
輪郭がない。
音もない。
存在が“確定しない”。
「……出ないか」
小さく言う。
観測している。
だが。
対象が現れない。
別の人間が歩く。
その空間を通る。
わずかに肩がずれる。
ぶつかったような動き。
だが。
何もない。
「……今の何だ?」
周囲を見る。
誰もいない。
存在が共有されない。
対象の男が一歩近づく。
その空白へ。
手を伸ばす。
触れる。
はずなのに。
感触がない。
だが。
“抵抗”がある。
空間が押し返す。
見えない何かが、そこにいる。
「……観測できないな」
短く言う。
その瞬間。
足元の影が、わずかに揺れる。
光の中で。
影だけが、不自然に動く。
対象の男が視線を落とす。
影を見る。
その瞬間。
“輪郭が出る”。
一瞬だけ。
人の形。
だが。
すぐに消える。
見えなくなる。
「……そこか」
理解する。
直接ではない。
“別の形”で存在している。
見られる位置を避ける。
視線の外へ逃げる。
観測されない場所に留まる。
それで。
確定を拒否する。
別の人間が立ち止まる。
何もない空間を見る。
だが。
何も見えない。
「……いる気がする」
呟く。
その瞬間。
影が、わずかに揺れる。
存在が“近づく”。
だが。
見えないまま。
男の視点。
観測そのものを回避することで存在を確定させず、結果として外部からの干渉や書き換えを受けない状態を維持している個体が存在していることを明確に認識している。
「……面白いな」
短く言う。
見れば確定する。
見なければ。
決まらない。
その隙間に。
存在している。
一方。
高い位置。
世界を見る。
揺らぎの中に。
歪み。
空白。
確定しない領域。
そこだけ。
変わらない。
「……逃げてるな」
静かに言う。
観測から。
定義から。
すべてから。
外れている。
「――これもありか」




