第6話「適応」
融合された二つの時間構造を持つ世界において、個体がその両方を同時に認識し処理できるかを観測し、適応の可否とその限界を確認する。
重なっている。
だから。
処理が必要になる。
通り。
人が歩く。
二つの足音。
同じ動き。
違うタイミング。
それが、同時に存在する。
誰かが立ち止まる。
「……多い」
呟く。
耳が追いつかない。
音が重なる。
分かれる。
また重なる。
判断が遅れる。
「……どっちだ」
問いが出る。
だが。
両方だ。
対象の男が歩く。
止まらない。
速い流れにも。
遅い流れにも。
同時に合わせる。
呼吸を分ける。
視線をずらす。
処理する。
自然に。
「……問題ない」
短く言う。
別の人間。
歩こうとする。
だが。
足が迷う。
どのタイミングで出せばいいのか。
分からない。
一歩が遅れる。
その瞬間。
身体が崩れる。
バランスを失う。
「……っ」
倒れる。
だが。
完全には倒れない。
別の時間の自分が支える。
同時に。
崩れている。
保たれている。
「……無理だ」
声が出る。
処理できない。
情報が多すぎる。
別の人間。
目を閉じる。
片方の流れを切る。
遅い方だけを見る。
その瞬間。
安定する。
だが。
速い流れを失う。
「……見えない」
選ぶ。
どちらかを。
完全ではない。
だが。
成立する。
男の視点。
この世界ではすべてを同時に処理する必要はなく、どの層を認識するかを選択することで適応が可能であることを理解している。
「……選べばいい」
短く言う。
それで足りる。
一方。
高い位置。
世界を見る。
適応できる者。
できない者。
分かれている。
完全ではない。
だが。
自然に。
振り分けられる。
「……いい」
静かに言う。
この世界は。
全員を求めない。
適応した者だけでいい。
「――それで成立する」




