第10話「拡張開始」
境界を越えた個体が即座に内部構造へ適応する挙動が安定していることを確認したうえで、外部領域に対して段階的ではなく同時多点的にズレを配置し、局所的な変化を連結させることで短時間で面へ拡張できるかを検証する。
点では遅い。
面でいく。
町の外。
道が続く。
人は動いている。
迷いながら。
止まりながら。
選びながら。
その中へ。
ズレを置く。
複数。
同時に。
視線の高さ。
歩幅の間。
言葉の切れ目。
ほんの一拍。
「……あれ?」
数人が同時に止まる。
場所は違う。
だが、同じ反応。
「……こっちか」
選択が揃う。
局所的に。
流れが変わる。
別の地点。
同じことが起きる。
「……揃ったな」
短く言う。
点が増える。
同時に。
さらに置く。
離れた位置へ。
同じズレを。
「……増やす」
反応が広がる。
個体ではない。
領域で変わる。
数人単位。
そのまま。
数十人へ。
「……速いな」
観測する。
内部より速い。
工程が少ない。
抵抗も弱い。
だから。
広がる。
対象の男が歩く。
外部の中を進む。
止まらない。
視線を動かす。
「……こっちだ」
指を動かす。
その周囲が変わる。
一瞬で。
数人が揃う。
さらに広がる。
「……核になるな」
変質個体。
外でも機能する。
それだけで。
伝播が加速する。
別の通り。
すでに変わっている。
迷いが減る。
選択が揃う。
衝突が消える。
「……始まったな」
小さく言う。
点と点が繋がる。
面になる。
まだ完全ではない。
だが。
時間の問題だ。
男の視点。
自分がどこを通っても周囲の人間が同じ方向へ揃って動くことに違和感を覚えず、それが自然な流れとして成立していると感じている。
「……問題ない」
それで十分だ。
一方。
少し高い位置。
外の街並み。
いくつかの地点で。
同時に。
流れが変わっている。
まだ小さい。
だが。
確実に広がる。
「……いい」
止まらない。
戻らない。
「――ここからだ」




