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エクストリームワールド  作者: 百円


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雷的運命

猛烈な勢いの雨が降る中、一人の少年は学校に行く為に仕方なく歩いていた。

休みたかった。しかし、雨程度で己の歩みを止められるのは、あまりにも屈辱的であった。

矮小な自尊心を維持する上で、この行いは正当化された。


激しい雨である。つまり、積乱雲である。だから、雷が落ちても何ら不思議ではない。

傘という格好の的があれば尚更だ。


この日、少年は雷によって亡くなった。


………ように見えた。

彼の死体は見つかっていない。





「……ここは?」


見慣れない景色だ。

金閣寺や中尊寺金色堂でもここまでの量はないだろう。

そう思えるほどに辺り一面が金で創られた街だ。


少年も金は好きだが、これだけあると不気味である。

と、感じるような性格ではなかった。

特に何かしたわけでもないが、まるで自分の物のように感じられる街が一瞬で気に入った。


足音が聞こえる。

振り向くと、一人の女性が近付いてきている。

髪は金髪で、顔は整っている。

胸も大きく、高身長で、まさに少年にとって理想の女性だった。


「こんにちは。あなたの名前を教えていただけませんか?」

「名前はないわ。あなたが付けて下さる?」


不思議な話だが、少年は魅了されており、まるで気にしなかった。


「そうですね。では、巡人(めぐり)というのはどうですか?」

「良い名前ね。気に入ったわ。今から私はめぐりよ」

「それで、ここってどこなんですか?」


めぐりは悲しげな表情を浮かべた。


「まず、謝っておくわ。ごめんなさい。ここは私が生み出した世界よ」


少年は世界の作り方を考えてみたが、ろくに思いつかなかった。

しかし、目の前には地球にないであろう光景が広がっている。

目の前の女性が真実を言っているのか、妄想癖があるのは判断がつかないが、とりあえず話を合わせることにした。


「なぜ謝罪を?」

「私があなたのことが欲しくなったから、あなたはここにいるのよ。あなたは死んでも元の世界には帰さないわ」


世界単位での誘拐。


「まあ、俺ほどの存在ともなれば、そういうこともあるでしょう」


本人の中で完璧な理論が構築されている。そこに再現性や客観性は存在しない。


「あなたのいる世界に行こうかとも考えたのだけれど、ほんの少し動いただけで壊れてしまいそうだから止めたわ」


世界というのがどの程度の規模なのか。

星なのか、銀河なのか、宇宙なのか。

自惚れまくっている少年にも、検討がつかない。


「地球に帰れないなら仕方ない。ところで、金のお菓子ってあります?」


めぐりは飴とチョコを少年に渡した。



金に包まれた世界での生活は、とても平和で退屈なものであった。


少年はめぐりから貰ったタブレットで、宇宙のあらゆる場所を見ることができる。

地球以外の星にも生物はいたが、人間と同レベルの文化水準を持った存在は発見できなかった。

結局、地球を見ることになる。

時間の流れは大体同じようで、新しい情報を楽しむことができた。

タブレットなら金もかからずにあらゆる作品は読み放題だ。

それが良いこととは言えないが。


「ねえ、オセロをしましょ」

「負けると分かって挑むとは。その勝負、受けて立とう」


少年とめぐりは一緒に遊んだり、ベッドでプロレスをしたり、色んなことをした。


「せっかくだから、賭けをしないか?」

「良いけど、勝っても帰さないわよ」

「そんなつまらないことは言わないさ。俺が負けたらめぐりが望むことを何でもしよう。代わりに、俺が勝ったら本当の姿を見せてくれないか?」


めぐりは言葉が詰まった。


「……せっかくあなた好みの見た目にしたのに」

「常に化粧をしているのって面倒じゃないか?いや、好きなら別に良いんだけどね」

「その条件で良いわ」

「決まりだな」


少年の黒は序盤こそ優勢だった。

しかし、終盤には白が多くなり、角も取られ、60体4で負けた。


「負けたか。じゃあ、何をして欲しい?」

「そうね。………私の本当の姿を見て貰おうかしら」


世界から金が消えていく。

巡人はボロボロと崩れていき、目の前から消える。

少年の目には黒とも白とも言える歪みが映った。


「どう?」


人の姿をしているだけで親近感が湧く。

それほどまでに見た目は重要だ。

しかし、それは初見の印象に限る。


「ありだな」


巡人は笑った。

少年も一緒に笑った。


少年は死ぬまで巡人と一緒に過ごした。




〈終〉

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