田舎のファンタジー学校
万物に超常的存在が宿る。
神とも精霊とも称されるそれを、人はついに使役した。
「はぁ」
学校とは勉強をする場所だ。
そして、とてつもない量の宿題を出すカスみたいな先生がわんさかいた。
「こいつが人の化身だったらな」
化身の中で最も便利で最強と言われているのは人の化身だ。
人にできることは大体何でもできる。
しかし、彼が使役しているのは帽子の化身だ。
宿題ができるはずもなかった。
この世にあるどんな物からでも生まれるが故に、ハズレの化身を引いてしまうことは多い。
帽子なんて化身でなくとも帽子そのもので十分なのだ。
化身であることのメリットはどんな帽子にでもなることができる点だ。
夏は日差しを遮り、冬は温かくなる。
拡大解釈によってヘルメットに変え頭を守ることもできる。
まあ、その程度だ。
化身である以上、超自然的な能力こそあれど、帽子の変化というのは地味すぎる。
この特殊な能力も化身によって微妙に違うらしいが、2度目の運試しもハズレであった。
嘆きながらも手は止めず、宿題をさっさと片付けて外に出る。
頭には帽子の化身を被っている。
なんだかんだ言って死ぬまで付き合う自分だけの化身だ。
多少なりとも愛着は湧く。
向かった先では激しい爆発音がしていた。
「おお、ようやく来たか」
村長の息子と油の化身がいた。
「へい、親分。今日は何をするので?」
化身によって人には格差が生じる。
強いやつに遜ることが長生きするコツといえる。
「森に行って獣を殺そう。肉が食いたい」
「さいですか」
帽子を被った少年はいなくてもいいのだが、偉そうなやつに限って人を侍らせたがるものだ。
雑用をしたくないと言い換えることもできる。
森に行き、足が6本ある獣を油で窒息させた。
死んだことを確認してから二人で移動させて焼く。
帽子を被った少年はナイフで解体していく。
「足の部分が意外と美味いんだよな」
「そうっすね」
肉を食べることができたので役得である。
食べきれない分を持ち帰り、それぞれ帰宅した。
次の日
宿題を持って学校に行く。
そこには同じ年か1歳上の連中が合計30人ほどいた。
椅子はない。
胡座か正座で台の近くに座っている。
帽子の少年も村長の息子の近くに座った。
「今日は遅かったな」
「寝坊しました」
「やれやれ駄目なやつだな」
昔、油の化身がいる自分こそこの村で最強だと少年は思っていた。
実際、この村にいる他の化身が全員敵にまわっても油の化身には勝てない。
一時期は有頂天になっていたが、かつて村を訪れた人の化身を従える旅人に負けてから大人しい。
この出来事があったから、彼らは人の化身が最も強いと思っている。
先生も現在確認されている中では一番だと言っていた。
昔だったら自分より遅れただけで拳骨が帽子に直撃していた。
先生が来て、授業が始まる。
元々は強い化身を集めるために作られた学校だが、今では簡単な計算や為政者にとって都合の良い歴史も教えている。
内容を厳選すれば有効活用できることに気付いたのだ。
こんな田舎では、農業に関する知恵なんかも教えている。
偉い人が全然来ないから緩くやっているわけだ。
授業も終わり、宿題を回収し、新たな宿題が出される。
少年少女達は憂鬱になった。
「今日は何する?」
「いやそれが、親が今日は手伝えって言ってたので」
「そういや俺のとこもそうだった」
特に山も谷もなく一日は終わる。
〈終〉




