トランスジェンダー
同じ顔をした人達が何人もいた。
双子とかそんな話ではない。
市を名乗れる規模の人数で、その数は万を超えていた。
世の中には産まれた時に決まっているものがある。
その一つが性別だ。
しかし、違和感を抱く者は当然いる。
なぜ、二人の異性がいなければ性交ができないのか。
どうして、自分にはこんなよくわからん性器があるのか。
かつてはどうしようもない自認だった。
いくら喚こうが事実を変えることはできない。
決して少なくない人々が嘆いた。
時代が進んだ。
有性生殖という枠から人類は解き放たれた。
「知ってる?」
「よそから来た人のことでしょ」
「知ってたか」
同じ顔の二人が険悪な様子もなく平穏に会話をしている。
同じ人間だからこそ、自己嫌悪や同族険悪からは逃れることができないが、それも所詮は個人の趣向の問題に過ぎない。
友達を作ることを良しとするものがいるように、独りでいることで安心を得るものもいる。
結局は相性だ。
「なんかルールを守らないんだよね」
「具体的に何をしたの?」
「騒音やポイ捨て、窃盗に暴行だね」
「邪魔だね」
相性が良い場合、形成されるのは強力な仲間意識だ。
そこに迎合できないものは排除される。
後日、ルールを守らなかった者は家を燃やされた。
ここは一種の王国だった。
全ての人間が王であり、国民であり、奴隷である。
統一された意思のもと、自分の為に行動することができた。
感染症が広まった。
燃やした時には既に遅かった。
入れるべきではなかった。
同じ人間であるが故に、耐性も同等だ。
有性生殖という環境への適応力をなくした結果、市の人口は3割にまで減少した。
〈終〉




