人に似た何か
「なあなあ、あれ知ってる」
「どれだよ、といつもなら言うところだが、あれだな。東京に現れた空間を歪ませる人の話だな」
「そーそー。あれ何なんだろうね。俺は異世界人だと思う」
「いやいや、異世界自体は非科学的でも現実に絶対に存在しないともいえなけどさ。じゃあ、あり得るか。でも、俺は宇宙人説を推すね」
「えー何でだよ」
「だって空間が歪んでるんだぜ。それなら光の速度なんて度外視して知らない星からワープできるし、よくわからん言葉をぶつぶつ言ってるのも納得できるだろ」
「それこそ異世界でも通じるじゃないか。魔法ドカーンの世界からワープしてきた可能性だってあるだろ」
「水掛け論だな。まあ俺達には関係ないだろ。歪んでるのも東京だけみたいだし、こんな田舎は安全だろうさ」
「楽観的だな。危機感を持てよ、と言いたいところだが、そんなものを持ったところで俺達に何ができるんだって話だな。地球がぶっ壊れるにしても、対処法なんて誰も知らないわけだし」
「空間が歪んでるおかげでそいつには誰も近づけないみたいだし、他国の介入とかも物理的にできないだろうな」
「介入したところで何ができるだって話だけどな。
案外ワープ装置を作れたりして」
「異世界旅行か。夢が広がるな」
「いやいや、そこは宇宙旅行だろ」
「終わらないな。このわだ······はっ?」
あまりにも突然の出来事だった。
一瞬の、という間すら与えず、どこかにワープしていた。
それも海の上だった。
「いやまあ、地球の7割は海だけども」
これは勘弁して欲しい。
もしかしたら自分も巻き込まれるかもしれないとは思った。
だが、未来でも見なければ対策のしようがない。
確率は収束する。
人類の7割は海に跳ばされ、陸に着けずに大半の者が死んだ。
山に、ライオンの檻の中に、銃弾の目の前に、様々なところに跳ばされ人類はその数を大幅に減らした。
生き残った人類は民族や宗教、資源について争いあった。
団結したことがあるとすれば、それぞれの団体が東京に向けて、それぞれが持つ最も強い兵器を使用したことだろう。
だが、空間の歪みに阻まれた。
地球の人口が10人になった今でも歪みの拡大は続いている。
〈終〉




