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エクストリームワールド  作者: 百円


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イニシエ リバイブ

「「「ウオオオオオー!」」」


止まぬ歓声。熱狂。血の匂い。

全てが客の心を上限突破させる。


その先にいるのは巨大な二つの闘志。

アロサウルスとステゴサウルスである。


本来なら人間とは同じ時代に生息していないはずの恐竜がそこに確かに存在した。


かつて繰り広げられたジュラ紀の闘争は、新たな地球の頂点捕食者によって蘇る。


皮膚も爛れ筋肉も細い肉食獣は、頑強な被捕食者に襲いかかる。

まるで危機感も何もないまま突撃し、あっさりと尾に付いているスパイクによって手痛い反撃を食らう。


「あ、このバカ」


「ハハハ、病気の個体をつかまされたか。復元率(リバイブパーセント)も足りていないようだなぁ!」


そのまま何度もめった刺しにされた異竜は屋根トカゲによって殺された。


再びの歓声。賭けに負けた者と勝った者の嘆きと喜びで場が騒がしなる。

動物の権利も福祉も度外視した日常の一幕が広がっていた。

 

賭けに勝った者と同じように、勝負に勝った者の金も増える。


「おお、今回は多いな。あんな雑魚とはいえ、肉食相手だと金になるな」


恐竜の個体差は激しいが、大きな恐竜にはそれだけ多額の飼育費や運送費などがかかる。

通常は戦争や運搬、畑での運用を考えて国や企業、宗教組織、最低でも村単位での管理が必要になる。

よほどの金持ちでもない限り、ステゴサウルスを一人で飼育はしない。


そして、その例外が選んだのが闘技場での戦闘だった。

負ければ恐竜を失い、勝てばこれからの生活費が手に入る。

恐竜の命をチップにした賭けは今日も続いていた。


ここまで勝ち続けてきたことには理由がある。

それは卵から育てた復元率ほぼ100%の個体だからだ。

化石の状態が良いほど、そして多くの部位が残っているほど復元率は上がる。

復元率が10%を超えれば復元(リバイブ)できるが、大抵は弱々しい個体になり、すぐに死ぬ。

逆に100%に近付くほど頑強な個体になり、寿命も伸びる。

復元率が高い大型恐竜は弓矢や剣といった武器を簡単に弾き返す。

このステゴサウルスも人間の貧弱な力ではかすり傷くらいしか負わせられないだろう。

化石という発見の難しいものだからこそ、復元率の暴力でステゴサウルスは勝ち続けてきた。



1週間ほどの休息を終え、再びステゴサウルスは戦いの舞台に立つ。

生きる為に、戦わなければならない。

例え、それが見せ物だとしても。


相手は誰だ。二足歩行だ。小さい。

となれば小型の肉食恐竜か?

いや、直立二足歩行だ!

それは人間のみが持つ特徴のはず。

しかし、長い尾と鋭い爪を持っている。

体表も毛ではなけ鱗だ。

まさか、恐竜人間(ディノサウロイド)か?

あり得ない。隕石が落ちなかった場合の仮説であり、妄想であり、空想のはずだ。


「両者入場!

 百戦錬磨!常勝のグラディウスと相対するはぁ!

 衝撃怒涛の新入り!混合生物だぁ!」


違う恐竜の頭を身体をくっつけて復元させよう、という取り組みは昔からあった。

そして、大抵の場合は失敗してドロドロの液体になり、成功しても1日と経たずに死んでしまった。

それでもごく稀に成功することがある。

だが、これは······


かつて生きていた人間の祖先と恐竜を混ぜたのか。


飼育者の葛藤もよそに、戦いは始まる。

ステゴサウルスはいつも通りの型だ。相手に尾を向ける。それだけだ。

対して混合生物はそのままだ。何もしない。

すると後ろにいた管理人らしき人物達が火矢を放った。

何発かは避けるが数が多すぎた。

逃げるようにステゴサウルスに突進する。

武器も持たないその行動はあまりにも荒々しかった。

いつものごとく振りかぶられたスパイクは、あまりにも簡単に避けられる。


飼育者は覚悟を決め、後ろに走る。


混合生物は、ステゴサウルスの下をくぐり抜け、頭の近くに到達する。

身体に対して小さすぎる頭を人間とは段違いの力で殴り付けた。

いくら弱点とはいえ、復元率ほぼ100%の個体。加えて、人間より力が強い混合生物といっても体格の差が大きすぎた。

反撃に重量分だけ威力がある体当たりを食らい吹き飛ぶ。

 

もうここまでか。混合生物は死を悟った。

一撃に動けなくなるほどに重かった。

生きていたのは運が良かっただけだ。


その時、闘技場が荒れる。

緊急性を示す警戒音が鳴り響く。

それは恐竜の脱走だった。

観客達はパニックになる。

そんな中、飼育者は倒れている人間を抱えてステゴサウルスの板に張り付いた。

その恐竜もどさくさに紛れて逃げ出した。




〈終〉

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