18/24
人魚
その男は情熱に燃えていた。
「人魚だ!」
猛烈ダッシュで正体不明の物体に近付く。
「これは!?アザラシじゃないか」
男は肩を落とした。
男はこの島にたったの1人で生活している。
他の人間は生きているのかも分からない。
船も地図もないので、男は無闇に海を渡ろうとは思わなかった。
本で読んだ人魚姫。あれなら、こちらに来てくれるはずだ。
そう思って、毎日毎日、海を探していた。
「ハハハハハハ」
でも、本当は分かっていたんだ。
だって、あの本の最後のページには
『この物語はフィクションであり、実在の人物 団体 事件とは一切関係ありません』
と、書かれている。
少しだけ、ほんの少しだけ。
寂しさを紛らわす為に、信じてしまいたかった。
それも、今日で最後だ。
そう思い、海を探索すると、巨大な魚影を見つけた。
男は近寄ろうとしたが、一目散に逃げ出した。
人魚
上半身が人で、下半身が魚の、伝説の生物だ。
それが今、伝説ではなくなった。
下半身が食われ、悲鳴をあげる様は、まるで歌のように響いた。
こうして、最後の人間も、魚に食われた。
〈終〉




