第09話:断罪(?)の時間
「ふむ。なんじゃろうなアレ」
そうこうしているうちに、砂煙の主は、村の入口にまでやってきた。
それは、西洋の甲冑を着た、軍人のような人たちの集団だった。その手には長い槍を持っている。もちろん鉄製。数は、だいたい20人程度だろうか。
「この村の村長はいるか!」
高圧的でありながら、どこかあせっているような雰囲気を出している。なにかあったのだろうか、と、その時の俺ぼんやりと考えていた。
「こ、これは騎士様! 私が村長のゴルドーでございます。このような辺境に一体どのような御用事で……?」
「驚かせて済まない。この村の人々に少々聞きたいことがあるのだ。………この辺りで龍人を見なかったか?」
りゅ、龍人!?と、集まってきていた村人は驚きに身をすくめた。
龍人は、この世界の人にとっては、恐怖の対象でしかないのだ。
「い、いえ、私は見ておりませんが………、しばらくお待ちいただいてもよろしいですか? 村人たちにも聞きたいので………」
「ああ。済まないがよろしく頼む」
そう言って、ゴルドーさんは集まっていた村人たちに、他の村人を呼んでくるように言った。
やっべー、心当たりがありすぎる。俺、龍人を知ってるどころか、一発やりあったんだけど。まぁ逃げたけど。
「あたしみたよ?」
と、突然の声に、俺を含め、騎士も村人も固まった。
「ど、どこでだね!?」
ゴルドーさんが訊き返したのは、まだ5歳くらいの少女だった。
「ちょっとまえに木に登ってあそんでたの。そしたらずっとむこうでりゅうさんがいっぱいとんでたよ?」
「それはどちらの方向へ行ったかわかるか?」
少女の答えに冷静に質問する騎士。だが、その目は答えが早く知りたいと、猛然と語っていた。
「遠くてわかんなかったけど、いっかい降りて、二つくらいにわかれてとんでったよ?」
「二つに分かれて………。ふむ………」
深く考え込む騎士に、俺はどうも落ち着かない気分に陥った。
この人ら、絶対アンネ探してるよな………。でも敵か味方かわからんから手の出しようがない。
あ、あるわ、手の出しようが。
「あの………」
「ん、なんだ?」
俺は話しかけた。ぶっちゃけ、手の槍が凄く怖いです。
「私は旅をしていて偶然ここへ流れ着いたものです。騎士様方は、どこの国の所属でしょうか?」
ふむ、と騎士は頷き、答える。
「我々はクレスミスト王国軍だ」
えーっと、確かアンネの名前がアンネルベル・クレスミストだったから、この人らは味方か。
「すみません、騎士様。少し耳を貸していただいても?」
「ん? なんだ?」
そう言って騎士は顔を横にした。その耳に口を近づけて、言葉を発する。
「もしかして、アンネルベルをお探しですか?」
「ッ!? 王女様をご存じか!! どこだ! どこにおられる!!!」
「ちょ、お、落ち着いて………」
肩をガックンガックンされながら、訊ねられても、答えられませんよ。
「ユーリさん、着替え終わりました……よ?」
そこで、件の話の中心人物が顔を出した。
「貴様がアンネルベル様を攫ったのかあああああぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「違ぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええ!!!」
突如槍を振りかぶった騎士から離れると同時、鼻先を槍が通り抜けた。
さらに二度、三度と、槍の刃がある部分に囚われず、棒術のように前と後ろを巧みに使い分け、連続攻撃を俺に叩きつけて来た。
もちろん刃がある部分も迫ってくるので、避けないと普通に殺される。
「よっ、ほっ!」
それを紙一重でかわしていく俺。なんか目やら反射神経やらが良くなっている。これも理力と関係あるんだろうか。
って、あぶねぇ!? 今掠ったぞ!?
「くそッ! 忌々しい賊め! こうなれば………!」
というと、少し間を開けて何かを唱え始めた。良く見れば、他の騎士たちも同じように唱えている。
なにこれ。複数人で行う魔術ですか? オーバーキルじゃね?
「ちょ、それは!! ユーリさん逃げて!!」
我に返ったアンネの警告も空しく、騎士の手は下ろされた。
「死ねぇ!! “アイシクル・サンダー”!!」
雷が走るほどに冷却された氷。それは、確かに個人で出来る魔術の限度を超えていた。複数人だからこそ行使できたのだ。それは魔術についてまだ理解の浅い俺には理解できないレベルで、もちろん防御の仕方もわからない。
しかし、
「ユーリ!!」
ノアがそれを許さない。
轟音とともに俺にぶつかった魔術はその役目を終え、もくもくと砂塵を巻きあげながら余韻を晒していた。
やべぇ、これは死んだんじゃないか?
そう思うも、思っている自分に気付き、生きていることを実感する。なんというデカルト。
「一体何が………、あれ? なんだこれ」
いつの間にか、俺の手には大きな鎌が握られていた。にしては異様に軽い。漆黒の鎌は、死神のような恐ろしさではなく、どことなく神々しさを感じた。
ふむぅ、なんだこりゃ。
「大丈夫かユーリ」
「大丈夫だけど………ノア?」
「ああ、今はその鎌じゃ」
………なぜ武器になったし。
「わらわにはある程度の魔術はきかんからの」
「あれで“ある程度”なのかよ………」
ほとんど完全防御じゃねぇか。
「で、なんで武器になれる?」
「猫じゃからの」
「………つまり化け猫的な変化?」
「うむ。ま、猫神じゃからスペックは桁違いの段違い、月とすっぽんじゃがの」
………なんかもう、神ってなんでもありだな。
「変化は一種類?」
「いや、色々出来るぞ」
「じゃあ、拳銃になってくれ」
「うむ」
なぜ、とは訊かず、いつの間には手にある鎌は拳銃に変わっていた。もちろん漆黒の。………ふむ、なぜかよく手に馴染むな。
ここで、砂煙が晴れた。
「なッ……なんだと……!?」
「ざんねんでしたー。俺には神の加護があるんよ」
―――ノア、銃弾であいつらを気絶させることは出来るか?
―――出来るぞ。銃弾は魔法で出来とる。威力を間違えなければこれほど使い勝手の良い武器はないのぅ。
おーけー。断罪(?)の時間です。
「じゃあな。今は眠れ」
ドゥン!
銃声が鳴り響いた。
こんにちは。芍薬牡丹です。
もうそろガチでストックがなくなります。
それでもジワジワ進めますけどね。
あ、一応。
この物語はフィクションであr(ry
2010/10/29 00:54
一部改稿