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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第四章 マルス祭
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第76話:神様

 一夜明けて、今日はスィードとベルネアの試合だ。まぁスィードは近衛騎士隊隊長だし、そんなに心配することもない。というか、スィードとは一番最初にあった遭遇戦みたいなのでしか戦ったことがないので、一度ちゃんと戦ってみたいというのはある。

 ま、一度しか見てはいないが、ベルネアの戦闘には目を見張るものがあった。しかし、やはりスィードが負ける、ということは正直考えられない。


「ほれほれ、考え事しててよいのか?」

「ぐっほぁ!」


 ………で、まぁそんなことは今考えている場合ではない。なんでかっつーと、今、俺はノアと模擬戦をしているからだ。


 ―――ここは、街から出て少し行ったところにある草原地帯だ。ここには俺とノアとリナリアだけがいる。なんでこんなとこにいるのかというと、先程も述べたように、ノアと模擬戦をするためだ。簡単に言えば修行である。


「ほれほれ、回避は良いがその後動かなければ一緒じゃよ。回避すると同時、次にどうするのか、それによって相手はどう動くのか、それを理解しておかねばならんぞ」

「ギャー!! 回避以前に広範囲魔術使われたら防御しか選択肢がない件についてはどうお考えなんですか!!」

「フハハハハ」

「笑ってんじゃねぇよ!?」


 ノアって案外スパルタなのかもしれない。


「ユーリならばこれくらい大丈夫じゃろ?」


 というか、俺に対する期待値がやたらでかいのか。むむぅ、ノアにしろリナリアにしろ、俺に期待し過ぎなのではないかと最近よく思う。まぁもちろん悪い気はしないんだけどね。

 何はともあれ。


「こうも色々な魔術が次々放たれると、流石にキツいものがありますよー!」

「土遁・殺生石!」

「忍術!?」


 なんかノリで魔術以外も出し始めたノアから、どうにか生き残らなければならない。

 ちなみに土遁・殺生石とは、相手の周囲に石の壁を築き、中に錬金術紛いで作り出した硫化水素をぶちまけるという、わりとえげつない魔術だ。……まぁ俺はこれを見るのは初めてだし、ノア曰く忍術らしいが。

 というか、忍術って言ってるだけで実は魔術なんじゃないかと俺は睨んでいる。


「また考え事かの? ……ふむ、今日は集中力が乱れておるのぅ」

「う……、すんません」


 確かに今日はなんか色々考えている。なんでだろう。


「んー……、まぁよい。今日はここまでにしておくかの」

「む、そうか。仕方ないか……すまんな、わざわざ時間取らせといて」

「まぁそれは構わぬよ。わらわはユーリの飼い猫であり使い魔であるのじゃしな」


 そう言ってニカッと笑うノア。

 ノアにしろリナリアにしろ、なんでこうもイイ女が周りにいるんだろう。俺はこの運命に感謝すべきなのかもしれない。というかしてる。


「でもさ、俺の修行見てても楽しくないだろ?」


 俺はタオルで汗を拭きながら、離れたところで見ていたリナリアに声を掛ける。リナリアは俺がここで修業している間、ずっとこちらを見たまま、なんかほのぼのとしていた。


「んーん。私の戦い方の参考にもなるし、なにより戦ってる間のご主人様見てるから飽きないよ」


 なんじゃそりゃ。まぁつまらないよりかは遥かにマシだろうけど。

 とりあえず俺はリナリアの傍まで行き、横に寝転がった。後からついてきたノアは、俺の隣に座る。つまり今現在、寝転がった俺の両脇にリナリアとノアが座っている状態。


「両手に花じゃな」


 ノアがニヤリとして言い放つ。両手に花、か。なるほど。


「まさにその通りだなー」


 うん、この2人は言うことなしに美人だしな。両手に花ってのは否定できん。

 なんて考えながら2人をふと見ると、ノアもリナリアもちょっと照れていた。………照れるくらいなら言うなよ………こっちまで恥ずかしくなるだろうが。

 少しばかり熱くなった顔を、涼しげな風が撫でる。日中は暑いのだが、まだ朝の早い時間だ。まだ気温は上がりきっておらず、運動するにはもってこいの時間。そして恥ずかしさを誤魔化すにももってこいの時間だ。うん。意味が分からんよ、俺。


「ね、ねぇご主人様」

「ん?」


 なんとなく変な空気になってしまったのを感じ取ったのだろう、リナリアが俺に話しかけてきた。


「今更なんだけどさ、ご主人様の使う魔法って普通のと違うよね? どうなってるの?」


 魔法……魔術か……。

 あれ? そういえばどうなってるんだろう。ずっと前にノアから概念やら創造やらを使えるぜーって聞いたが、なんで使えるんだろう。

 ………あれ? なんでだっけ?


「なぁ、ノア」

「んむ?」


 というわけで、久々に疑問が浮かんできたのでノアにスーパー質問タイム。


「俺の魔術って概念やら創造じゃん?」

「うむ、そうじゃの。正確には概念と解析じゃがな」


 おおう、そう言えば解析とかもあったな。というか義体魔術はそれがないと出来ないが。

 つーこたぁ創造魔術は頑張れば俺以外も出来るってことか。………そう言えば以前、アンネから言われたなぁ。創造魔術には莫大な魔力がいるから、個人で発動なんてほとんど出来ないって。つまり逆に言えば、魔力さえあれば……例えば複数人で発動すれば、それは可能だってことになるんだろう。


「して、それがどうかしたんじゃ?」


 おっと、話がずれた。


「ああ。疑問なんだが、なんでそれを俺は使えるんだ? それって俺が理力を持ってることとなんか関係あんのか?」

「ああ、そのことか。………あるといえばあるが、あまりないかのぅ」


 あれ、ないんだ。ならなんでだ?


「それはな、ある意味ではユーリの固有技能なのじゃよ」

「ある意味では、か。また曖昧なことを」

「すまぬな。しかし説明を聞けば自ずとそういう回答になるじゃろうて」


 そう言うと、ノアは思考をまとめるかのように暫し沈黙した。その間に俺は起き上がり、背中についた草をリナリアが払ってくれた。

 お礼を言うと同時、話がまとまったのかノアがこちらを見た。


「まず、わらわの存在から話そうかの」

「ノアの?」


 そう言えばノアって何者なんだろう? 名前からしてノアの方舟ってのは思いつくけど、………てかノアの方舟のノアって誰だ? 方舟造った人の名前なんだろうか。


「わらわは………そうじゃの、傍観者の従者、という立場かの」

「おおう、わけ分かんねー」

「今から説明するわい。頭から煙など出すでないぞ」


 おーけー。落ち着いた。


「まず、世界には神様がいるのじゃ」

「というかノアも神様じゃん」

「いや、そうではない。確かに神ならばいくらでもいよう。日本など八百万の神がいるとさえ言われておるんじゃからな。キリスト教やユダヤ教、イスラム教にヒンドゥー教、そして神道に仏教。各々性格は異なれど、神はそこら中にいるもんじゃ」

「ふぅん?」

「ちなみにじゃが、キリスト教とユダヤ教とイスラム教は同じ神様を信仰しておるぞ」

「え、そうなの?」

「そうなのじゃよ」


 と、そこでノアは1つ区切りを入れた。


「しかし、その神々には死がある」

「神が死ぬってことか?」

「うむ。神が死ぬ、というのは、つまり忘却じゃ」


 忘却。

 神は忘れ去られてしまえば、それすなわち死である、ということか。


「結局の、神なんてものは人が生み出した妄想じゃ。生活の上で、慣習の中で、理解の外で在った出来事。その力、不可思議さ、不気味さ。それら全てが異質なもの、つまり神と定められた。要は、神なんて人の都合によって創られた、ただそれだけの存在じゃ。その存在は曖昧で不安定なものなのじゃよ」


 そうか、なるほど。そう考えると神ってのは随分と悪い足場に立ってんだな。


「そして先ほどわらわの言った世界にいる神様というのは、さらにその上位にいる存在じゃ」

「そんなんがいるのか?」

「うむ。そしてわらわはその従者みたいなものをしておった」


 え、なんだろう。想像が追い付かないけど、とりあえず今俺の知ってるどんな神よりも上位の存在であると考えてオーケィ?


「その神とは、ただずっと世界を見ているだけの存在じゃ。それはつまり、いてもいなくても変わらない、ということは感じることが出来ない、すなわち存在しない存在なのじゃ」

「………神様の話ってわけ分からんのが多いな」

「存在自体曖昧じゃからの」


 そこでなんとなくリナリアの方を向いてみた。


「………すぅ……」


 寝てた。


「さて、わらわはそんな感じじゃったのじゃが、ある世界に置いて滅多にないイレギュラーが発生したのじゃ」

「イレギュラー?」

「うむ。というかユーリのことじゃけどな」


 ………俺?

 なんかそう言われると凄い不安なんだけど。


「まぁそれは過去に何度か例があったことなんじゃけどの」

「そうなの? ってかそのイレギュラーって何さ」

「神様に似通った存在である、ということじゃよ」


 似通った存在、か………。それは肉体的なってことか、もしくは波長って意味なのか、それとも他の何かなのか。


「正確には言えんのじゃが………、存在性みたいなものかの」

「あー……、そうなんだ。………えーっと、つまり物理的なもんじゃなくて精神的なもんというか観念的なもんと言うか概念的な何かか」

「うむ、まぁ曖昧な何かが似ている、と思っておいてくれればよい。そこは理解せずとも良いからの」


 そういえば聖人なんかも神様と似通った特徴を有しているとかそんな話を聞いたようなそうでないような。まぁこの場合の神様は一般的な神様のことだが。


「ちなみにそれって過去に何度かあったことなんだよな?」

「うむ、そうじゃの」

「何度くらい?」

「ふむ、別次元の世界を含めれば、これで9度目じゃの」


 ………多いのか少ないのか分からない。そもそも別次元の世界とか言われても、どれくらいあるのだろう。


「それで、じゃ」


 しかしその疑問はノアが話し始めたことによって、置いておくことにした。


「その中でも、ユーリは特別での」

「ほほぅ」

「まさかの理力保持者だったのじゃよ」

「………ほほぅ」


 そういや理力は神様の力だっけか。すっかり忘れとった。


「こちらの理力保持者というのも珍しくての。ユーリで5人目くらいかの」

「あー、つーこたぁカミサマと似通った……存在性だったか? それプラス理力保持者ってのが珍しいわけだ」

「うむ、その通りじゃ。加えて言うなら、両方持っておるのはユーリが初めてじゃけどな」


 ………うん、それならイレギュラーって言われるのにも納得だ。


「そして、両方を持っていた故に、より神に近い存在となり、神の力の一部を使えるようになったのじゃよ」

「それが創造と解析、ってわけか」


 ノアは微笑みながら、そうじゃ、と肯いた。

 俺は、そうか、と言いながらも頭の整理に追われていた。流石に頭がパンクしますよ。


「しかし、そんなデカイ能力があっていいもんかねぇ」

「というと?」

「いや、世界の意思とかそんなのから弾き出される、とかそんなんあるんじゃないの?」


 そう言うと、ノアは呆れたように溜め息をついた。


「世界に意思などありゃせんよ。世界はただそこに鎮座し、全てを受け入れるだけのハードじゃからな」

「………そうなんだ」

「そうなのじゃよ。世界に決められた道筋などなく、ただ漫然と突き進むのみ。決まっているのはハジマリとオワリだけじゃ」


 ふぅむ。これもなかなか難しいな。


「あと、これは理解してもしなくても良いことなのじゃが」

「ん?」


 ノアが少し神妙な顔つきで続けた。


「わらわは元々神の従者じゃった。しかし今はユーリの従者じゃ。これには理由があっての。神と似通った存在であるところのユーリが道端で拾った猫に“ノア”と名付け、飼い猫に、つまり従者とした。その瞬間、ただの黒猫は神の従者であるノアとなり、わらわの黒猫としての過去の歴史が創られた」

「はい? ……えーっと、なんだ、つまり俺がノアって名付けたから黒猫がノアになったってこと?」

「そうじゃな」

「じゃあノアになる前の黒猫は?」

「いや、黒猫は元からわらわじゃよ」

「………どういうことだ?」

「わらわにノアと名付けたその瞬間に、ノアとしての過去が創られたんじゃよ」

「……………わけわからん」


 そこまで言うと、ノアはクスクスと笑いだした。


「納得せずとも良い。理解せずとも良い。ただ、知っておいてくれればそれで良い。これはただのわらわの自己満足じゃからの」


 まぁそれでノアの心が軽くなるんなら自己満足だろうが愚痴だろうが聞くけどさ。

 俺はそう考えると、再度リナリアに顔を向ける。すると、俺の横で丸くなって本気で寝ている姿が目に入った。いやまぁ話し長かったけどさ、寝るってのはどうなんよ。

 なんて考えていると、反対側から軽く重みがかかってきたので、反射的にそちらを見る。


「………」

「………」


 まぁ、ノアだよね、常識的に考えて。

 しかし腕に絡みつくのではなく、腰に抱き付くとはこれ如何に。


「珍しいな」

「なにがじゃ」


 ノアはなんだか少し幼くなったような口調で、ふてくされたように応える。しかしながら、少しだけ見える顔がちょっと赤いことから、どうやら照れ隠しらしいと分かった。

 ………うわぁ、なにこの可愛い生物。

 などと思いつつも、表面上は平静として応える。


「いや、なんつーか、ノアが甘える、とかさ」

「ふ、ふんッ。このような美少女に甘えられとるのじゃからありがたいと思え」


 いや、顔真っ赤にしてまで言わんでも。


「まぁそれは否定せんけどね。………ふむ、これ以上は野暮だな」

「そ、そうかもしれんな、うむ」


 その言葉を最後に、静寂が訪れた。

 草原に吹く風はどことなく暑くなってきており、もうちょっとすれば朝御飯の時間であることがうかがい知れた。

 最近少し伸びてきた髪の毛を掻き上げつつ、空を見上げる。

 うん、今日は晴れるかな。



◆◇◆◇◆◇◆



 ……―――なんて俺が考えている間に、マルス祭ではスィードとベルネアが戦っていた。それは知っていた。

 しかしこんな結果になるなんて、予想の右斜め下辺りをマッハ2くらいで突き抜けるくらいの衝撃だった。

 その結果とは………


「………降参した?」

「………ええ、まぁ………」


 このヤロウ、降参しやがったのだ。

 それを聞いたのが、俺たち3人が宿に帰って朝飯食って露天を冷やかしに行って街中で昼飯食って宿に帰ってきた時である。


「貴様ぁ! 俺と準決勝で戦おうって約束したじゃねぇか!!」

「そんな覚えないんですけど!?」


 まぁしてないけども。

 しかし降参か。スィードが降参か。ということはベルネアが勝ち進んだわけだ。


「ってこたぁベルネアって強かったのか?」

「えっと、そうですね。強かったです。以前よりもかなり強くなってましたね。これではいつ追い抜かれるかヒヤヒヤしますが、同時に楽しみでもあります」

「………オイコラ待てや」


 なんですかそれ。ツッコミどころが満載なのですけど。ツッコミたいんですけど!


「ツッコミ可?」

「………不可でお願いします」

「以前って以前に会ったことあるの? 追い抜かれるってことはお前の方が強いってことなのに降参ってどういうことよ?」

「さっきの質問は完璧に無視ですか!?」


 いや、気になったし。というか訊かないといけない気がしたし。

 ………ちょっと頭がバグっていたが、実際どういうことなんだろう。まぁ言ってしまえばおそらくスィードがベルネアに勝ちを譲った、と考えるのがベターだろうか。でもなぜそんなことを?


「………ですが、やはり質問には答えられません」

「どうしても?」

「………はい」

「じゃあいいや」


 へ?とスィードが呆けた顔をする。その表情は女の子がしてこそ可愛いのであって、お前がしても可愛くねーから。


「いやまぁ言いたくないならそれなりの理由があるんだろ?」

「ええまぁ………」

「なら無理に訊くのは違うだろう」


 スィードもそれなりに考えて俺に言わないわけだし、まぁ無理に訊くことでもない気がするんだよなぁ。これは完全に勘だけどさ。でも俺は結構勘ってやつを信用するようにしている。

 答えたくないことを無理に答えさせようとしても、互いが後々ぎくしゃくするだけでいいことなんか全くないしね。


「でも1つだけ答えてくれ」

「なんでしょう」

「それは俺たちに害のあることなのか?」


 それによっては俺も色々本気にならんと駄目だしな。

 しかしスィードは少しポカンとした後、軽く笑った。


「いえ、害は全くありませんよ」

「ふぅん? ならいいや」


 そう言うと、俺は何気なしに窓の外を見る。

 それと同時、スィードからちっさい声が聞こえてきた。


「いや、でもユーリ殿には害があるのか………?」

「聞き捨てならねぇなぁオイ!」


 なんで俺限定!?


「いえ、お気になさらず」

「気にするわ!」


 そして騒がしくも今日と言う日は過ぎていく。

 明日はリナリアとレイの対戦だ。どうなるかは……まぁ大体予想はつくが、はてさてどうなることやら。


 俺は一抹の不安を抱えつつ、スィードを追いたて回した。

 明けましておめでとうございますそして遅れてすいませんでしたー!!


 というわけでいつもより多めの文章でお送りいたします。

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