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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第四章 マルス祭
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第74話:守りたいもの

「はぁ、じゃあつまり、ユーリさんが寝ぼけてノアさんを引きずり込み、朝になってリナリアさんが引きずり込まれ、目覚めたユーリさんがさらに引きずり込まれた、と」

「概ねそんな感じらしい」


 とりあえず冷静になったアンネを部屋へ入れ、ソファーに座ってもらっている。俺はアンネからいただいた攻撃魔術で負った傷を、ベッドで横になりながら癒している。

 ちなみにノアは隣に座りながら地味に補助してくれていて、リナリアはベッドを背もたれに、俺が創ったクッションに座っている。

 そして、俺を見ながらアンネがしみじみ語りだした。


「しかしあれですね。ユーリさん、治癒魔法が上手くなりましたね」

「俺の体は義体魔術が効かないからな」


 義体魔術とは、俺の理力を元に身体情報を上書きする、回復魔術のことだ。これはこの世界では俺しか使えない魔術である。

 こちらの世界の治癒魔術とは一線を画しているので、このような名前を付けた。

 名前の由来は、義手とか義足とかから。俺のは手足に限らないから義体、というわけ。

 というか誰のせいで治癒魔術が上手くなったと思ってんだ。などと、俺は自分の体を治しながら思う。


「んで、なんで来たんよ?」


 訊ねると、アンネはあっけらかんと言った。


「いえ、見に行くって言ったじゃないですか」

「え、そんだけ?」

「はい。それに、エイラさんの件で学園に来た際、帰り際に『また』って言ったじゃないですか」


 何言ってるんですか?みたいにアンネは言う。

 ………うん、まぁ確かに言ってた気がしなくもないが、それ伏線だったのかよ。分かりづらい………。


「それで、どうなんですか、試合の方は」

「昨日2回戦が終わったとこ。まぁ順調だな」

「誰が勝ち進んでいるんです?」

「えーっと、俺とリナリアとレイと、あとスィードか」


 サンローズのことは………一応言わないで置くか。アンネが、ではなく、リナリアがいるから。前の時はリナリア居なかったし。


「そうですか。だからローレルさんは学園に向かってたんですね」

「ん? ローレルに会ったのか?」

「ええ、今朝こちらへ着いた時に」


 ローレルは今日ドレブナイズを出て学園へ向かうって言ってたから、そん時か。

 ………ん? あれ、そういえば………


「アンネ、お前護衛も無しに来たのか?」


 俺の部屋に来た時は1人だったはずだ。王女なのに何やってんだ?

 そう思っていたが、アンネは小さく首を横に振り、否定した。


「いえ、ここまではバイマーに着いて来てもらいました」

「バイマー?」


 あー、どっかで聞いた気が。


「ユーリさんがいない間、私の護衛をしていた人ですよ」

「ああ、そういや言ってたなそんなこと」


 なるほど。確かスィードと同レベルの実力者なんだっけ。その人なら安心だわな。

 ………で?


「そのバイマーさんはいずこへ?」

「大会本部へ向かいました。私が来たことを伝えるためでしょう」

「あ、そうなんだ。んじゃアンネも後でそっちに?」

「はい。一応これでも第一王女ですから」


 そういえばアンネって、超VIPなんだよなぁ………。

 俺は回復した体を起こしながら思った。

 そんな俺を見つつ、アンネはふと話し出した。


「私はユーリさんがなんでこんな宿屋にいるのかが甚だ疑問なんですけど」

「え?」


 いや、宿に泊まらんと寝れないでしょ?

 てなことを言うと、凄く呆れた顔を向けられた。


「あのですね、何度も言うようですが、ユーリさんはクレスミスト王国特別近衛騎士なんですよ。言っておきますが、本部に言えば無料で豪華な宿に泊まれるはずですよ。特別近衛騎士だってかなりの重要人物なんですから」


 ………そうだったの?


「ええ、というかむしろ大会側としてはそれなりの宿を提供しないと礼儀がなってない話になってしまいますしね」


 そうだったのか。結構いきなりな話だったから手早く適当に宿取ったけど、よく考えればラルムさんが宿くらい用意してくれているはずなのだ。あの人のことだからそれなりに予想出来てただろうし。ただ、俺が適当に宿を取ることは予想できなかったのかもしれないが。

 ふむ、ならば今からでもそっちに移った方が良いのか?

 そう問うと、アンネは首を横に振った。


「いえ、今から行くと逆に悪いんで、ユーリさんさえよければここにいる方がいいと思います」

「そうか。ならそうすっか」


 別にここでも、だいたい元の世界の俺の部屋と同じくらいの広さがある。何の問題もないのだ。………まぁ飼い猫が幼女になったり狐っ娘が増えてたりするが、気にしないでおこう。

 ………そういえば最近リナリアの尻尾触ってないな。


 ぐわし。


「わひゃん!!」


 リナリアが飛び上がって床にローリングダイブして、後ずさりしながらこちらを見上げた。


「な、なにを………」


 ………ぷっ。


「ク、クククク………」

「なんで笑うの!?」

「い、いや、すまん……プッ」

「なんなのよもう!」


 やべぇ、なんでかツボった。腹いてぇ。


「………ご主人様」

「いや、悪い悪い。すまんかった」


 そう言って、俺はベッドから身を起こした。


「相変わらず仲いいですねぇ」


 アンネはその様子を和やかに眺めていた。


「ふむ………わらわも触りたいのぅ」


 そしてノアは狩人と化していた。

 あ、そういえば、と俺は少しアンネに訊ねてみたいことがあったのを思い出した。


「なぁアンネ。なんで俺はマルス祭に出ることになったのか、ラルムさんの真意とか分かるか?」


 実は、ずっと気にはなっていたのだ。いきなりではあったが、それはまぁいいとしよう。だが、俺の元々の役目はアンネの護衛だ。それを蔑ろにしてでもマルス祭に出した理由はなんだ?


「ああ、それは簡単な話ですよ。父様はユーリさんの魔王討伐に協力的な姿勢ですが、大臣の中にはユーリさんに対して懐疑的な意見も存在します」


 いや、むしろその考えの方が普通だろう。ラルムさんが俺を信じてくれたのは、俺が異世界人だと知ったからで、アンネやセラフィムを助けたからだ。

 しかし他の人たちはどうだろう。何も知らされず、ただポッと現れた旅人風情を信じろと言われ、しかもその旅人に支援をするという。予算を考えねばならない文官は反発するだろう。

 武官はまた違うかもしれないが、確かに俺は一度スィードを倒した。しかしそれを見ていたのは近衛騎士隊の一部であったから、他の人はどれだけ強いかなんて分からないはずだ。………まぁ一度だけサンローズを大っぴらに虐めたことはあるが。逆に言えばその一度だけなのだ。


「だからこそ、このマルス祭という大きな舞台でユーリさんの実力を計っていきたいんでしょう。そうすれば大臣やらも抑えられますしね」

「………いや、俺としては凄くありがたいんだけど、なんだか迷惑かけてる気がするな」


 うん、言わずもがな凄く迷惑かけてる。


「いえ、ユーリさんを支援することは、結果的に我が国を守ることに繋がると信じていますから」


 そう言って、アンネはニコリと笑う。

 ………なんというか、女性に信頼されると男って弱い気がする。男って馬鹿だなぁ。………俺もか。

 ま、そこまで思われてんなら、きちんと始末しないといけないね。元からそのつもりだけどさ。


「ん、ガンバリマス」

「ほどほどでいいですよ。私も手伝いますしね」


 そういえばアンネも高位の魔術士なんだよなぁ。………あ、高位の術者といえば。


「なぁ、マルス祭にベルネアってやつが本部から参戦したんだが、何か知ってる?」

「ベルネアさん、ですか? 確かアーノルディ聖国から来たらしいということは知ってますけど」

「アーノルディ聖国?」


 なんかまた聞き慣れない国の名前だ。


「アーノルディ聖国は、いわゆる宗教国家です。聖王とその娘である聖女によって統治されている国ですね」

「む、宗教国家もあるのか」


 これはまためんどくさそうだ。あまり関わり合いにならないでおこう。


「あ、でも今のは内緒でお願いします。一応秘密らしいので」

「おう、了解した」


 まぁアンネは何でも知ってそうだしな。というか主催だろうし、知ってないとおかしいんだけど。

 ま、とりあえずこれで勝つしかなくなったわけだし、当面の目標も出来た。やっと頭がすっきりしたぜ。


「おっけーだ。さてと、アンネはこれからどうすんだ?」

「私はこれから本部へ向かいます。ユーリさん、久々に護衛をお願いしても?」


 その言葉に俺はふと笑みを浮かべた。


「仰せのままに、お姫様」


 そう言って、立ち上がり、1つ礼をする。特に意味はないのだけどね。

 ふと、外を見る。街はお祭り騒ぎが未だ継続中で、そこかしこから元気な売り子の声が聞こえてくる。魔物の脅威に晒されているなんで想像もできない光景だ。

 しかし、だからこそこの光景を守らなければならない。知らずにいられるならその方がいいのだ。


「のう、ユーリ」

「ん?」


 なんて考えていると、隣からノアが話しかけてきた。

 何だろうとそちらを向くと、ノアは俺と同じように外の音に耳を傾けながら、こう言った。


「この光景、守りたいものじゃのぅ」


 その言葉を聞き、一瞬ポカンとして、笑いだした。


「あっはっは、だよなぁ」

「ん、うむ。それはいいが、なぜ笑う」

「内緒」


 ニヤニヤしながら人差し指を唇にあてる。 ノアはちょっと不審そうにしたが、あまり気にしていないようだった。

 俺はアンネやらリナリアがいるから恥ずかしかっただけで、ちょっと言いたい。


【なぁ、ノア】


 念話でノアに話しかけてみる。

 ノアは不思議そうにしながらもこちらを見て、同じく念話で返して来てくれた。


【なんじゃ。こんなに近くにいるのに念話とは】

【いや、さっきのことなんだけど、】


 俺はノアの頭に手を乗せ、撫でながら言う。


【俺もおんなじこと考えてた】

【………守りたいと?】

【ああ】

【そうか………】


 んでちょっと嬉しそうにするし。ノアはこういうちょっとした仕草が可愛いんだよなぁ、って何考えてるんだ俺は。病気か?


「………なに見つめあってるんですか?」

「っと、なんでもない」

「うむ、なんでもないぞ」


 俺とノアの華麗なるコンビネーションでアンネを煙に撒く。

 撒けてないかもしれないけど。


「んじゃ、そろそろ行くか?」

「ええ、よろしくお願いします」


 そう言ってアンネが立ちあがる。

 俺は、次の対戦誰だっけ、と考えながら、扉を出るアンネについて出るのだった。

 はっぴぃはろうぃーん。もうすぐ終わりますね(現在23:48)。


 なんだかちょっとスランプ気味です。だからどうだって話なのですけどね。

 今回やるはずだった試合は次回に持ち越しです。すいません。今回は伏線張りが主でやることが制限されてしまって、上手く書けたか自信ありません。気になったことがあれば言って下さい。ちょいちょい手を加えるやもしれません。


 それではこのあたりで失礼します。


 ではでは。

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