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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第四章 マルス祭
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第69話:迷子

「で、どこ行く?」

「どこでもいいよ?」


 とりあえず町へ出てみた俺たちだったが、突然決まったことだったのでどこへ行こうかなどと言うことはもちろん話し合ってはおらず、今は適当に市場をブラブラしている。

 リナリアとは北の森のヌシを倒しに行く際、危ないので学園に置いて行った経緯がある。それによってリナリアは八卦魔術の習得を決意したのだが、今はそれは置いておく。その出発する際に、ある条件を代わりに付いて行くことを諦めてもらったのだ。

 1つ目に、同じベッドで寝ること。俺だって普通に男だからアレコレあるのだが、今のところ何もない。ノアもいるし。いや、ノアがいなけりゃやる、なんてことでもないけどね。

 2つ目に、なんかお土産買ってくること。これはもうあの時は無理だった。なので、今回はリナリアに何かプレゼントでもしようかと思っている。

 そして3つ目に、1日デート。つまり今のこの状態だ。元の世界では彼女はいなかったが、割と周囲に女性が多く、色々連れまわされることもままあった。だから過度に緊張する、なんてことはないのだが………


「こうも注目されっと、流石にねぇ………」

「え? 何か言った?」

「いや、なんでもないよ」


 そう言ってリナリアに笑いかける。

 注目されている、というのは、周囲の視線だ。俺は覚えてないがなんか派手な戦いをしたらしいし、リナリアに至ってはその力を垣間見せ、強さは折り紙つき。さらにその美貌が注目の的となっている最大の要因だ。

 最初は亜人だからなんかめんどくさいことがありそうだと思ったのだが、ここドレブナイズの町は闘技場があることから分かるように、戦士の町だ。そこはありとあらゆる人種が混ざり合い、亜人も大して珍しくない。まさに自分の地位は自分の力に依るところが大きいのだ。

 力とは権力。偉い奴が強いのではなく、強いから偉いのだ。


「ご主人様どうしたの? 難しい顔してるよ?」

「ん、ああ。すまんすまん」


 あはは、と笑う。そうだ、今はデート中なのだ。女性を疎かにするわけにはいかないよな。


「そう言えばご主人様」

「なんだ?」

「ご主人様って、ギルドに所属してるんだっけ」


 ああ、そういえば以前やってたな。学園やらマルス祭やらで全然行ってなかったが。

 そう伝えると、リナリアは目を輝かせて詰め寄ってきた。


「じゃあさ、なにか依頼受けようよ!」

「はぁ? いやいいけどそれでいいのか?」


 俺の知ってるデートというと、映画だったりショッピングだったりカラオケだったりするのだが。………元の世界なら。

 そう言えばこちらの世界の住人は、どんなデートをしているのだろう?


「さッ、行こッ!」

「うおっと、分かったから引っ張るなっての」


 自然と笑顔になりながら、俺たちはギルドへと向かって行った。



◆◇◆◇◆◇◆



 そうしてギルドに辿り着いた俺たちは、どの依頼を受けようかと迷っていた。

 今の俺のランクはDだ。ということは、1つ下のEから上しか受けられない。まぁそれはいいのだが。


「うぅん………、岩石採掘に薬草摘み、家の修理に引越しの手伝い、低ランクだとそんなのしかないわね」

「だな。魔物退治やら護衛任務もあるけど1日じゃ終わらないっぽいし」


 低ランクだと同じような依頼しかなく、そのほとんどが肉体労働系だったのだ。

 リナリアとせっかく遊びに出てんのに、何が悲しくて草むしりやら掃除やらせんといかんのだ。

 などと憂いていると、ギルドのドアが勢いよく開かれ、その音に2人同時に飛び上がった。


「すいません、依頼を!!」


 入ってきたのは年若い女性。その表情は酷く焦りを湛えていた。

 女性は入ってくるなりギルド職員になにやら依頼をしようとしていたのだが、紡ぎだす言葉は支離滅裂で、要領を得なかった。


「リナリア、ちょっといいか」

「うん、いいよ」


 もうリナリアは俺が何をするか分かっているようだ。なんともまぁ。

 それはさて置き、俺は女性に近付いて行った。


「どうされました?」

「え!? あ、あの、私が、あの!!」

「とりあえず落ち着いて。リナリア、お茶持って来て」

「分かったわ」


 そう言ってリナリアが小走りに去っていくのを見ながら、女性を近くにあった椅子に座らせる。

 その際ギルド職員に目配せをして、心配ないと伝えてみた。どうやらそれは正しく伝わったらしく、少し真剣な顔で頷いてくれた。


「さて、まずはお茶を一杯。作戦実行の遅延はそのまま成功率の低下につながりますが、何より貴女が落ち着かなければ依頼内容が分からず実行が遅れてしまいます」

「は、はぁ………」


 タイミング良くお茶を持ってきたリナリアに感謝しつつ、女性にそれを渡す。俺はなにやら難しそうで実はそうでもないことをダラダラ述べることで、女性の冷静さを取り戻そうとしていた。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。

 などと考えながら、女性がお茶を飲み干すのを待ち、いざ話しかけた。


「それで、どうしたんです?」

「お、弟が迷子になってしまって………」


 それと同時に女性の目に涙が浮かぶ。冷静になったことで、気持ちが不安定になってしまったのだろう。

 しかし今は、申し訳ないがそれを気にかけている暇はない。


「なるほど。名前は?」

「………ロアンです。もうずっと探してて………でも見つからなくて………」


 そう言うとついに女性は泣きだしてしまった。俺は泣いている女性の慰め方なんか分からなかったのだが、空気を読んだリナリアが女性を優しく抱きしめていた。

 ありがと。

 さて、俺は俺でなんとかする方法を見つけないとな。今は特別相談役ノアがいないから自分で考えないと。


「ふむ、その弟とは血縁関係だよな?」

「ぐすっ……ええ、はい」


 なら簡単だな。

 俺は創造魔術でバケツのようなものを創り出し、そこに属性魔術で水を満たす。そこに再び創造魔術で作った葉っぱを1枚浮かせる。

 ほい、出来あがり。簡易型迷子探知機の完成でござい。


「さて、そこなお嬢さん。ちょっと血を分けていただいてもいいですか?」

「何をするの?」

「いえ、この葉の上に一滴垂らして下さいな」


 そう言うと、女性はギルド職員から刃物を貸してもらい、指先を小さく切った。そしてそれを先ほどの水面に浮かべた葉の上に落とす。


「ねぇご主人様。これなんなの?」

「ああ、これは簡単な探索魔術だな。その血に近しい人の場所に葉の先端が向くはずだ。この場合は弟さんだな」


 そうこうしている内に、葉はくるくる回転し、次第に一方の方向で動かなくなった。よし、これでいけるはずだ。

 さて行こうか、と言おうとして立ち上がって少し動くと、葉の向きが急に動いた。なんだ?と思い立ち止まると葉も動かなくなる。再び俺が動くと葉も動き、止まるとやはり動かなくなる。

 何だこれ失敗か?と思い葉の向いている方向を見ると、そこには俺を見上げる女性。


「……………あー」


 少ししてから気付いた。

 近しい血を探すのであれば、本人が一番の鉱山だろう。本人を検索除外しておかないと永遠に女性を追ってしまう。


「どうしたの?」

「なんでもない。ほら、行くぞ」


 言いながら、ちょっと焦り気味で魔術を書きかえる。

 ………うん、よし。これでおっけぃ。


「さ、迎えに行きましょうか」


 そう言って、俺は女性に手を差し伸べた。



◆◇◆◇◆◇◆



 結果からすると、弟さんは見つかった。葉の指す方へ向かうと、兵士に保護されている男の子を発見したのだ。

 そして感動の再会。

 俺たちに感謝の言葉を幾度も述べつつ、彼女らと別れた。

 うん、一件落着。


「良かったわね、あの姉弟きょうだい

「だな。もし路地とかに入ってたら安全は保障できないからな」


 町の中であっても薄暗い路地は存在する。そこはスラムと化していて、乱雑にばら撒かれたゴミによる腐臭と、犯罪者が横行する闇の部分となっている。ということを以前アンネから聞いたことがある。いづれなんとかしないといけませんね、なんて仰られてたが、そう簡単ではないことも承知だろう。

 まったく、世の中ってのは本当に優しいね。どんな人にもえこひいきせず、ただ黙って見ているだけの平等。

 いやいや、まったく世界は完全に十全に完璧な平等主義者なんだなと、改めて思うよ。なんてありがいんだろう。


「ねーねー、そろそろお昼にしない?」


 そんなリナリアの声で我に返った。


「そだな。何食べたい?」

「肉!」

「………元気だなー」


 そんな肉食系九尾のあとを追いつつ、俺は何を食べようかな、と思考を再開するのだった。

 どうも。


 総合評価3000突破ありがとうございます!

 なんだか投稿していない日もちょっとずつ上がる評価に感動しつつ、日々過ごしています。

 最近暑くなってまいりましたが、夏バテなど大丈夫でしょうか? 無気力と食欲不振は夏バテの症状ですので、栄養のあるものを意識して食べるようにすると良いですよ。


 それとどうでもいいですが、アイスコーヒーにハチミツ入れて飲むと美味しいです。やってみてください。味がまろやかになりますので。


 さて、それでは失礼。またそのうち。


 ではでは。

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