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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第四章 マルス祭
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第66話:共闘

 視界が白く染まる。

 それだけで、俺は諦めてしまった。

 だってそうだろう?

 きっとこの後すぐに気絶して、気がついた時には医務室みたいな場所にいて、きっとそばにはノアやリナリア、レイがいるんだ。そんな未来が待っているのだろう。

 なんか今日は疲れたな。全身痛いし。


 これで楽に―――


「おい、ユーリ」


 ―――なれないのかよ。


 いつまでたっても衝撃は来ず、しかし周囲には暴風が巻き起こり、ドガガガガと何かが競りぶつかり合う音が聞こえた。

 俺は荒れ狂う風に晒されながら、薄目を開いた。


「おいおい………、オレを倒したくせにこんなとこでヘタばってんじゃねぇよ」

「………誰だ?」

「あぁ? オレだよオレ」


 オレオレ詐欺ですか?

 ………まぁ声がなんとなく聞き覚えあるんだけどね。


 なんて言ってるうちに、バシュッ、という音とともに風が霧散した。

 いつの間にか離れたところにグローとアルがこちらを警戒しながら立ち、床に倒れている俺の目の前に誰かの足が見えた。


「なんでお前がいるんだよ………」


 話しかけてみた。


「オレも出るっつったろ?」


 笑って応えられた。


 そこにいたのは、―――ローレル・リンディアだった。


「で、ユーリ。お前は何してんだよ。なんで本気出さない?」

「少し修行みたいなことしてたんよ」

「これ以上強くなりたいのかよ?」

「ああ。でないと勝てないかもしれないのがいるからな」


 北の森のヌシは理力でしか倒せなかった。つまり障気相手には理力が有効だということ。

 今のままでは元魔王と相対して勝てるとは限らないのだ。


「ユーリより強いやつか………。そりゃまたゾッとする話だ」


 言いながらもローレルは注意を怠ることはない。

 この辺り、経験の差を感じる。


【こンの………】


 ローレルを観察していると、ふと、頭に何かが響いた。

 なんだろうと意識を傾けた次の瞬間!


【あほうがああああああああああああああああああ!!!】

「うぉ!!」


 頭の中にノアの罵倒が響いた。響きまくった。


「………なにやってんだ?」


 ローレルが不可解な視線を向けるが、それには苦笑でなんでもないと答えた。

 次いで、普通に耳からも遠くから『あほうがあああああぁぁぁぁ………』と聞こえてきた。どうやら念話と口頭の両方で叫んだため、音の方が時間差で聞こえたらしい。

 俺は念話でノアに話し掛ける。


【なんだよ………?】

【どれだけボロボロになっとるんじゃこの戯けが!! リナリア泣かせてどうするんじゃ!!!】


 え、まじで?

 リナリア泣いてんの?


【ボロ泣きじゃわい。周りの客もオロオロしとるくらいじゃ】


 もうなんかリナリアには迷惑というか、めちゃめちゃ心労かけてるな………。

 なるほど、とにかく俺の方向は決まった。


【リナリアに伝えといてくれ】

【………何をじゃ?】

【俺はもう傷付かないから大丈夫、ってな】

【………ククッ、了解じゃ。楽しみにしておるぞ。とりあえずはリナリアをなだめるかの………】


 そうして念話が切れる。と同時に全力で治癒魔法をかける。

 というか、普通の治癒魔法と俺の治癒魔術は全然違うもんだよな………。俺のは……そうだな、義体魔術とでも言うのだろうか。


「………フンッ。やるんなら最初からしておけ」


 ローレルが吐き捨てる。

 しかしその目は好戦的で、また再戦しようとか言われるんだろうな、とか思っていた。


「つか、ティア……ティアリス・リンディアはどうした? アイツの護衛だろ、お前?」


 そうだ、こいつはティアの護衛のはずだ。………まぁ結構離れて行動していたような気もするが、やはり学園から離れてしまうとなると、それは拙いのではなかろうか?


「ああ、それは大丈夫だ。国から違うやつ10人くらい派遣させた。あれだけいれば大丈夫だろ。安全装置もつけたし」

「10人て………。ティア大丈夫なんか?」



 ◆ティアリス◆


 一方その頃、フォレスティン学園のティアリス。


「なんでこんなに護衛がいますの!?」

「ハッ。ローレル殿のご命令であります!」

「今すぐにその命令を破棄なさい! そしてリンディア帝国へ帰りなさい!」

「それはなりませぬ。閣下からも許可と、ご命令を拝命仕りましたので」

「………その命はなんですの?」

「ローレル帰還までティアリス様を片時も離れず全力でお守りしろとのことです」

「………はぁ、早くローレルが帰って来ませんと、胃に穴が空きますわ………」


 大丈夫じゃなかった。



 ◆ユーリ◆


「あ、それと安全装置って何だ?」

「何かあったらオレに連絡が来るような魔法を使ったんだよ。精霊魔法の一種だな」


 なるほど、精霊が教えてくれるのかな?

 ………なんて考えているうちに、治癒終了。俺は立ち上がった。

 つか、普通の怪我ならもう義体魔術いらんな。


「よっこいしょ」

「もう治療は終わりか? 相変わらずのバカ魔力だな」

「おろ? 魔力が多いって知ってたん?」

「見てれば分かるっつの。基本だぞ」


 基本だったのか。

 それはまぁいいのだけど、俺はこれ以降怪我が許されなくなってしまった。修行はここで一旦終了かな。


「おう、グローだっけか?」


 俺は少し離れてこちらをうかがっている2人、グローとアルに話しかけた。

 グローはこちらを警戒しつつも、短く言葉を返す。


「何だ」

「すまんな。ここからは本気で相手するぜ」

「………お前ごときが本気だと? 経験も浅い奴が何を言ってるんだか」


 グローは口角を上げ、嘲笑の表情を見せる。アルもその横で、苦笑いをしている。

 いやぁ、なんか悪いね。

 確かに経験は浅いさ。だが、それでも負けられないと決めた人間ってのは、なかなかにしぶといんだぜ?

 それに、俺にはその浅い経験を埋める程度には強い能力は持ってるしな。


「ローレル」

「あぁ?」

「共闘ってことでいいんだよな」

「何を今更」


 よし、じゃあ小手調べだ。

 俺は魔力を風という概念に変換して手に集め、圧縮。さらに集め、圧縮。圧縮。集め、圧縮。

 そうしている内に、風は青緑色をしたボールのようになった。


「いっひっひ、こいつを防げるかな?」


 そう言うと、俺はそれをグローとアルに投げつけた。


「ふん、なんだこんな、」

「グローさん、伏せて!!」


 手で払おうとしたグローをアルが押し倒し、防壁を張るのが一瞬見えた後、俺はボールに込められた風を解放した。


 ッドガアアアン!!


 次の瞬間起こったのは、暴風と言うよりも、むしろ爆発だった。そのボールを起点に、四方八方に風が飛び出していったのだ。

 それを俺は立ったまま眺める。


「おおぅ、予想外の威力」

「あほうか貴様! オレまで飛ばす気か!!」


 俺の横では風爆発に耐えきったローレルの姿があった。


「よぉ、流石だな」

「流石だな、じゃねぇよ」


 風がやみ、辺りが砂塵に覆われる。

 視界不良。五里霧中。一寸先は何とやら、だ。


「見えないな」

「貴様がしたんだろが」


 ローレルの憎まれ口も可愛いものだ。

 ………なんか、制限を取っ払ったおかげで少しテンションがおかしいかも知れない。


「さて、どうなったか、」


 ガギィン!!


「………不意打ちご苦労さん」


 俺の目の前には、剣を握ったグローが、俺の肩口から袈裟がけに切ろうとしていた。

 しかし、それは俺の体の表面から少し浮いた状態で静止している。


「貴様、何をした」

「別に? 結界張って次元ずらしただけ」


 というか、無防備で突っ立ってるとでも思ったのか。まぁ今までの戦闘からすればそう思っても仕方ないだろうけど。

 ちなみに剣だが、結界を張って受け止めた後、剣ごと一部の次元をずらして空中の座標に固定した。結果どうなるかというと、剣がビクともしなくなる。無理矢理取ろうとすれば剣を折るか、次元に干渉するほかない。

 亜空間魔術の応用だ。


「で、いつまでそうしてんの? 反撃してもいいのか?」


 言うが早いか、グローの腹めがけて超電磁砲を予備動作なしで放つ。

 いつもの轟音が鳴り響くが、グローは紙一重で避けていた。


「なるほどね、身のこなしはやっぱはえーな」

「フン。お前がこうも強いとは思わなかったな」


 グローとやり取りをしつつも、周囲に素早く視線を巡らせる。

 ローレルはどうやらアルと戦っているようだ。なんか火やら水やら岩やらが飛び交っている。そして、どうやら舞台にはもうこの4人しかおらず、あとは吹っ飛んだらしい。

 ふむ。マルス祭って、そんなにレベルの高くない祭りなのかな?


「どうやらお前が本気であるなら、こちらも本気で行かせてもらおう」

「ほほぅ、それは期待してもいいんだな?」

「ああもちろんだ。ビックリすんなよ?」


 ニヤリと笑うグローに応え、俺もニヤリと笑う。

 しかし、本気とな? 何するんだ?


 なぁんて考えてるうちに、事態は思いもよらない方向へ進んでいた。


「ではゆくぞ」


 ズ……ズズズ、ズシィン………


 再び砂埃が舞い上がる。

 そして、目の前に立ちふさがる莫大な圧力。


 いつしか俺はグローを見上げていた。


「………そういうことかい」


 俺は茫然と声を発する。


「そういうことだ」


 グローはどこから発しているのか分からない声で、応えた。


 龍―――


 見上げた先には、なんと体長10メートルは越すであろう龍が、俺を睥睨していた。中国のような細長い龍ではなく、足と手がちゃんとあり二足歩行の出来る、西洋龍がそこにいた。

 ………龍化、かぁ………。グローは龍族だったんね。

 龍化は、俺の気持ち的には反則だと思う。

 ………なんて、言ってられませんがね。


 俺は気持ち新たに腰を低くし、構えを取る。


 そしてここに、新たな戦いが始まった。


 ………しかし、そんな俺の気持ちとは裏腹に、思考がドツボにはまっていたことを知るのは、すぐ後だった。

 第64話:八卦

 を、地味に編集完了です。


 さて、ここで少し訊ねたいのですが、何か掘り下げて話して欲しいストーリーや、こういうシチュエーションとかどうよ、みたいなのがあれば、言っていただけるとありがたいです。

 最近少しネタ切れと言うか、まぁネタはあるんですが他の意見が欲しい感じなので、よければ案をいただけないかな、と思います。


 それではこれにて失礼。また次回お会いしましょう。


 ではでは。

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