第06話:アンネルベル
「うぅん………」
と、龍人に連れ去られていた少女が眼を覚ました。
うっすらと開かれた瞳は深い蒼で、それは透き通るような白い肌とライトイエローの髪によく映えた。
「あー、おはよう」
なんと言っていいかわからないので、とりあえず挨拶をしてみる。
「あ、え、お、おはよう……ございます?」
そういえば一応言葉は通じるらしい。ノアが何かやったかな。
「あの……?」
「ああ、ごめんごめん」
いつの間にか長考してしまっていたようだ。
「ここは一体………?」
「ここはとある村の、村長さんちだよ。で、俺たちは旅の途中で気絶した君を発見して連れて来たわけだけど………何があったか覚えてる?」
「え? えっと………」
しばし考え込むかと思ったが、すぐに顔を青ざめ、震えだした。
「お、おい、大丈夫か?」
「あ、は、はい。大丈夫、です」
いやいや大丈夫にゃ見えねーよ。
「で、もし君さえ良ければ送って行くけど?」
「え?」
ぽかんとする少女。すげぇ可愛いんですが。いや、ロリコンじゃねーですよ?
「ほら、こんなところを女性が身一つで歩くには物騒だろうし、どうみても旅の途中って服装じゃないしね」
なんか白いドレス着てるし、なんかヒラヒラがいっぱいついてるし。一歩あるいたら裾踏んで転けそうだ。
「あ、あの、でも、私の名前………ご存知ですか?」
は?
いや、知るわけないだろ初対面で。
「いや、知らんけど」
「私は……私の名前は………」
そこで少女は軽く息を吐き、キッとこちらを真っ直ぐ見つめて言った。
「私は、アンネルベル・クレスミストです」
「そうなんだ」
「そ、そうなんだ!? それだけですか!?」
え、いや名前訊いただけじゃん。もっと反応して欲しかったのか?
「のうユーリ」
「あ?」
と、ここでいつの間にか猫形態になっていたノアが話しかけてきた。
………やはり猫に話しかけられるって、なんか微妙だ。
「一応、クレスミストといえばこの大陸最大規模のクレスミスト王国が思い出されるの」
「ほぁ、王国とかあんのかよ」
「あ、はい、それです。その国の第一王女が私なんですけど………」
なるほど。知らないほうが不思議ってわけですな。
「そっか。よろしく」
「ええ、よ、よろしくお願いします……?」
なぜ疑問形。
「………ところで、その猫さんは喋れるのですか?」
「ん、ああ。こいつはノア。俺の旅のお供だよ」
「ノアじゃ。よろしくの」
「は、はい。よろしくお願いします」
つか、この世界では喋る猫なんか珍しくないんだろうか。
どんどん常識が破壊されていく気が………。
「それで、あなたの名前は……?」
「あれ、言ってなかったっけ」
目の前のことに必死になりすぎたか。
とりあえず、この世界初の名乗り上げだ。
「俺の名は月城優璃。しがない旅人だよ」
芍薬牡丹ですこんにちわ。
とりあえず、見て下さっている方、ありがとうございます。お気に入り登録されている方、こんな拙作を登録して下さり、マジでありがとうございます。というか、2話目くらいで最初の1人の方が登録されたんですが、早過ぎてびっくりしました。こんなんでいいんでしょうか………。
短かったり長かったりと安定しませんが、これからもよろしくお願いします。