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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第三章 フォレスティン学園
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第46話:新しい絆のカタチ

 ◆ノア◆


「わらわは少し離れておるぞ」

「うぃー」


 そう言ってユーリの元を離れる。

 次の瞬間には、ユーリは空間を断裂させ、召還の体制へ入った。


「しかし、相変わらずの理力じゃのぅ………」


 実は、ユーリの理力はこの世界に来てからじわじわと増えている。本人は気付いていないだろうが。

 そして、理力と魔力の魔術を発動するにあたっての変換効率を考えると、理力が1増えると実際使える魔力は1000増える計算だ。

 そもそも、身体能力が異様に上がっていることに疑問はないのだろうか………。

 いや、どうせユーリのことだ。わらわが何かしたんだろう、としか思っておらんのだろうな。あれは純粋にユーリの力だというのに。


「さて、何が出るかのぅ」


 ユーリのことだから、どうせまた女のナニカを喚んでしまうのだろう。正直、これ以上ユーリの周りに女性が増えるのは好ましくない。それに、使い魔といえば、主人を守る相棒のようなものだ。自分はユーリの相棒だと自負している分、新たに相棒として使い魔が現れるということを考えると、胸にチクリと痛みを感じる。

 ………しかし、だからといってユーリに召還しないで、とは言えない。自分にだってプライドというものがある。

 わらわの主はユーリ1人。

 それは、ユーリに“ノア”と名付けられた時に、心に決めたこと。

 自分には、ユーリと生きていくより他に、道はないのだ。そして自分もそれを望んでいる。心から。


 しかし、次の瞬間、全ての思考が吹き飛んだ。


「む? な、なんじゃこれは!?」


 足が動かない。と気付いた瞬間、下に薄く魔法陣が現れ、徐々に足元から体が薄れていったのだ。


「ゆ、ユーリ! おい!!」


 しかし、ユーリとは存在する空間が違うので、声は届かない。

 ならば、とアンネを見るが、その瞬間に気付く。


 今は人型だ。


 すなわち、ユーリ以外には見えない。

 それはつまり、声も届かないということだ。


「アンネ!」


 叫んでみるも、誰にも届かず虚空へ消えるのみ。

 ルーリィとルドラは見えたはずだが、すでに天界へ還ってしまったようだ。他の使い魔ならいいが、神獣と神ともなれば、いつまでも地上にいるわけにはいかないだろう。どこかの研究所に送られるのがオチだ。


「この魔法陣は……、もしや転移陣か!?」


 魔力の流れからして、どこか違う空間へ自分を押し流すようにしているのが分かった。

 足元から薄れていったのが、すでに腰上あたりまで消えてしまっている。

 しかし、それではユーリと離れ離れになってしまう!


「くそっ! ユーリ! 聞こえぬのかユーリ!!」




 しかし、呼び掛けも虚しく、わらわはその空間から、消えた。





 一瞬後、周囲の景色は一変していた。砂が舞い上がり、視界は零。それに、空気も全く違う。………理力が渦巻いていた。それも莫大な。……………少なくとも、先ほどまでいたあの世界とは別の空間だ。

 そして次に、前方に気配を感じた。

 さらに、こうして召還されたことにより、先ほどの転移陣らしきものが召還陣であることを理解した瞬間、


 キレた。


「殺す」


 わらわの幸せを奪った召還者に、死を。


 この時、誰も気付かなかったが、自分の瞳孔は縦に割れ、その瞳は金緑色に輝いていた。………そう、猫の瞳だ。

 その瞳は、自ら発光しているかのように輝いていた。


 バネのようにその場を飛び出し、無意識に伸ばした爪で、確実に急所を狙う。


「く、おぉッ!!」


 頸動脈を狙った一撃は、しかし頬を掠るに終わった。

 一撃を与え、召還者から一旦離れ、思考する。

 やはり、わらわを召還しただけのことはある。先ほどの攻撃は、一般人なら視認すら出来ない速度だったはずだ。達人でも、視認は出来ても避けるのは不可能な速さ。

 それを避け、あまつ掠り傷しかつかないとなると、気配だけで次の行動が読めたのだろうか?

 ………いや、それは今はどうでもいい。やることは1つだけだ。


「断りもなしに我を喚ぶとは………貴様のその重すぎる罪、死によって償ってもらう………」


 しかし、召還者を殺したところで元の世界に帰れるというわけではない。ならばどうする………?

 その方法を思いついた瞬間、笑いが零れた。


「ククク………、もし元の空間に戻れないとするなら、この世界を終わらせて戻るとしよう」


 世界を終わらせる。

 そうすれば、神である自分はその世界から弾き飛ばされ、一番馴染みある世界に飛ばされるはずだ。それが元々ユーリがいた世界なのか先ほどまでいた世界なのかは分からないが、どちらでも構わなかった。もう一度ユーリと会えるなら。

 すると急に、召還者は慌てだした。


「ちょっと待て、とりあえず話し合おう!!」


 話し合う?

 何をふざけたことを………。


「フッ……、貴様なんぞと話すことなど………」


 と、軽く流してしまおうと思ったのだが、妙に今の物言いが引っかかった。

 今の、殺されかけたにしては甘過ぎる言葉。

 ………よく考えてみると、いやに声色に覚えがある。気のせい、だろうか。

 そして、わらわの召喚主は口を開き、


「まぁまずは落ち着いてくれ。おもに茶でも飲んでゆっくり話し合おう」


 なんてことをのたまった。

 ………はぁ。知らず、溜め息を吐く。


「お主、相変わらずじゃのう」

「は?」


 甘い、なんて言葉じゃ足りない。コーヒーに蜂蜜と砂糖をふんだんに入れたような、甘ったるさだ。

 ………ま、それがこやつの良いところではあるのだけど。


「いや、わらわは、」


 言おうとして、まだ周囲に砂が舞い、視界が開けていないことが気になった。

 邪魔だな、と思い手を振ると、風が巻き起こり、砂塵を吹き飛ばした。


「はぁ………。まさかわらわがユーリの使い魔となるとはのぅ………」

「ノ、ノアぁ!?」


 そこにいたのは、我が主、ユーリだった。



 ◆ユーリ◆


 使い魔はうちの猫。

 いや、こんなタイトルだと、そんなに萌えない漫画やドラマな気がする。昔、奥さまは魔女ってドラマがあったよなぁ。見たことないけど。


「おーい、ユーリ。戻って来ーい」

「ん、ああ。すまん」


 おおう、ヤバい。現実逃避が普通になってきた。


「とりあえず、空間を戻してはどうじゃ?」

「あ、そうだったな」


 言われて、空間を元に戻した。

 断裂した空間内に渦巻いていた魔力は、アンネの時と同じように、洪水のように流れ出し、空中に霧散した。


「………ほいっと。で、なんでノアが使い魔?」

「知らんわい」

「………さっき、俺を殺す気で来なかった?」

「気のせいじゃろ」


 いや、あの殺気は尋常じゃなかった。現に、俺の頬には血が流れている。気配が動いたから反射的に身を引いたんだけど、どうやら正解だったようだ。


「まぁいいや。で、一応喚んじゃったんだけど、どうする?」

「うむぅ………、ま、良いのではないか?」

「使い魔になっても?」

「うむ」


 いいのかよ。いや、俺はもちろんいいんだけど。


「んじゃ、名付けだけど、ノアのままでいいよな?」

「うむ。それがわらわの名じゃからな」


 その言葉に、俺は微笑む。


「だよな。これからもよろしく、ノア」


 そう言うと、ノアもニカッと笑って応えた。


「ん、よろしくの、我が主よ」


 ここに、新しい絆のカタチが出来た。

 ま、俺たちの関係はあまり変わらないんだけど。


 ………しかし、関係が変わるかもしれないことも、起こっていた。


「あのぅ、ユーリさん」

「ん? ああ、アンネか。どした?」


 俺の後ろからアンネが恐る恐ると言った感じで声をかける。

 どうかしたのだろうか。


「そこの方って………ノアさん、なんですか?」


 はぁ? 何を言ってるんだ。


「いや、どこからどう見ても―――」


 ちょっと待てよ?

 今、ノアの姿は人間の姿だ。この姿って、普通の人には見えないのでは………?


「………アンネ。あいつが見えるのか?」

「え、ええ。女の子ですよね、猫耳と尻尾のついた」


 おおぅ、見えてるよばっちり。


「ノア、どゆこと?」

「ふむ………、おそらく受肉でもしたのかの」


 受肉? 召喚でそんなことになんの?


「………いや、これはまさか………」

「どうしたノア?」

「いや、………ふむ、これはまた凄いのぅ………」


 ノアは独りで何か納得しているが、俺にはさっぱりだ。


「アンネ、とりあえずあれはノアだよ」

「そうなんですか………。もしかして、最初の出逢った時に、見えない何かに手を置いていたアレですか?」

「ああ、あれあれ」


 確か、スィードと初対面で攻撃されて返り討ちにした後、銃から人型に戻ったノアの頭を撫でている時のことだろう。

 あれはノアが見えない人からしたら、変態さんか頭が可哀想な人にしか見えなかっただろう。


「で、召喚も終わったし、帰るか」

「ええ。その前に先生に何を召喚したか言わないといけませんがね」

「………とりあえず、アンネは蛇って言っとけ」

「あはは………、了解です」


 何人かの教師は気付いているだろうが、隠してくれることを願う。というか、王女相手なのだから手出しは出来ないとは思うのだけど。


「俺は猫って言っとくよ。おーい、ノアー」

「んむ?」


 まだ考え込んでいたノアが頭をあげる。


「姿はそのまんまでいいから、教師に何召喚したか言いに行くぞ」

「うむ、それは良いが、本当にこの姿で良いのか?」

「大丈夫だって。………ちょっと脅せば簡単さ」

「………さすが我が主、あくどい」

「誉めるなよ、照れるじゃねぇか」

「誉めとらんわい」


 互いに一瞬見つめあい、同時に吹き出す。


「あっはっは! まぁいいじゃん。なんとかするさ」

「ククク………、“なんとかなる”ではなく、“なんとかする”と言うところがユーリらしいの」

「誉めるなよ、照れるじゃねぇか」

「今のは誉めたんじゃよ」


 さて、もうそろそろ昼時だ。飯でも食いに行くか。


 そうして、俺たちは新しい一歩を踏み出した。


 後書きに何かを書こうとするも、いざ書くとなると忘れてしまう。

 こんにちは、私です。


 ノアは、人型で誰からも見えるようになりました。これからは基本的に人型で行動することになります。

 で、今回のノア目線ですが、ノア目線で始めようかすぐ次のシーンに入るかで迷っている時に、Rairtさんの感想を読んで、ノア目線を採用しました。

 ノアの性格が恐ろしくなっていた理由、理解できた………でしょうか?


 ちなみに、感想やら何やらで言われたことを、ガチで反映するのがこの小説です。こんな話書いてーとか、ここもっと詳しく書いてーとかあれば、書きますよ。一応それぞれのストーリーは頭に入っているので。

 というか、頭ん中で好き勝手に動き回ってる感じ?


 どうでもいいですね。

 で、次回はもしかしたら閑話が入るかもしれません。少々フラグ回収などしておこうかと。説明回になるやもしれません。だからこその“閑話”なのですが(笑

 ま、普通に本編入ってても見逃して下さい。あと、ティアのほかに新キャラが、と言ってたの、まだ出せなくてごめんなさい。


 ではまた次回も見ていただけると幸いです。


 ではではまたー。

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