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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第三章 フォレスティン学園
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第45話:使い魔

 俺は全く意味が分からないまま、校庭へ連れてこられた。

 校庭は、どこかの軍事演習場ですか?といった広さだ。

 一学年とは言っても、大陸中から人が集まってるわけで、この学年だけでざっくり1000人くらいいる。これで、いかにフォレスティン学園が大きいかが分かると思う。

 で、そいつらがみんな使い魔を召還するらしい。………いやいや、使い魔て。


「あっはっは。………ねーよ」


「ご、ご主人様? どうかしたの?」

「あぁ気にせんで良いぞ。いつもの現実逃避じゃ」

「現実逃避って………そんなのしたことあった?」

「うむ。特にこちらへ来た当初は―――」


 世間話すんなそこの2人。


 さて、現実復帰。

 使い魔召還、ということは、おそらく生物を召還して契約して、みたいなことなんだろう。


「異世界だねぇ………」


 呟くも、おそらく俺の耳にさえ届かない声だった。


「つか、俺もやんだよな?」

「当たり前じゃないですか?」


 何言ってんの?みたいに言われると、地味に傷付くのだが。


「………まぁいいや。で、召喚ってどうすりゃいいの?」

「えっとですね、召喚魔法陣というのが特別にありまして、それに自分の魔力を流しこんだら発動する、というやつです」

「詠唱とかないの?」

「詠唱魔法は力の弱い人が自分の魔法のイメージを固定化するために使うものなので、基本的に使う人はいませんね」

「あ、そうなんだ」


 なんか召喚魔法というと五つの力を司るペンタゴンがどうのこうのって言うのかと思ってた。


「………ってことは時間かかるよな」

「いえ、魔方陣自体は自分で書けるので、………ほら、もう召喚した人もいますよ?」


 ほら、とアンネが指差す先には、女の子が小さな鳥を腕に乗せ、笑っているのが見えた。


「はぁ、あんなのが出るんだ」

「あれくらいが普通ですよ? 他の人も犬やら馬やらしか出てませんね。後は使い魔に主が名付けをして終了です」


 周りを見るが、あまり見たことのない動物と言うのは出ていないようだ。

 なんというか、がっかりだ。もっとこう、マンティコアとかミノタウルスとか、魔獣大行進なカオスを想像してたのに。


 そんなことを考えている時、不意に生徒の間からどよめきが上がった。

 なんだろうとそちらへ向かってみると、ティアの特徴的な髪の毛が見えた。


「どうかしたのか………、って、おい。お前そりゃぁ………」

「あ、あなた………、こ、これは一体………」


 ティアが喚び出したのは、白い体に白銀のたてがみを靡かせた、翼のついた馬。

 いわゆる、ペガサスだった。


「お前………ペガサス召喚とか………ありえねぇ………」

「こ、この生物はペガサスと申しますの……?」


 まぁどこから見てもペガサスだな。ペガサスは鼻をブルルッと鳴らして、周囲をきょろきょろと眺めていた。

 ………が、俺を視界にとらえた瞬間、


『これは………ノア様にユーリ様………、御無沙汰しております』


 ………。


「しゃべんな。ややこしくなる」

『む……、申し訳ない』

「こらこら、ユーリ、そう邪険に扱うな」


 ノアが苦笑しながら歩いて来ると、フッ、と風が吹いた。

 その時その場にいたのは、黒猫ではなく、子供の姿のノアだった。長く艶やかな黒髪に、裾丈の短い崩した着物を着て、首に赤色のチョーカーを付けている。

 そしてなにより、猫耳と尻尾。これが俺の心を惑わせる………ッ!


「つか、久しぶりだなぁ、その姿」

「うむ、たまには良いじゃろう?」

「………相変わらず幼女だな」

「うっさいわい」

「そして相変わらず胸はぶごふぉっ!!」

「うっさいわい!!」


 猫パンチではなく、リアルパンチが来た。猫形態より数倍の威力でした。


「いてて………、で、ペガサス。なんで話せる」

『む、おそらく我と話せるのはノア様とユーリ様ぐらいではないかと思いますが』

「………ふむ」


 俺は独り頷くと、召喚主のティアを見た。ティアは何かと話す俺に困惑中で、どうしていいかわからない様子だ。

 ………まぁ頭がどうかしちゃった人にしか見えないだろうな。今はノアも人間形態だから誰にも見えてないだろうし。


「ま、いいや。どうせこれもノアの不思議パワーだろ。………ティア、こいつはお前が召喚したんだ。どうにかしろ」

「え、いえ、どうにかしろと言われても………」

「とりあえず、契約みたいなのを結んどけば?」

「そ、そうね。こちらへいらっしゃい」


 ティアはペガサスを呼んだが、ペガサスはどうしようか迷っているらしかった。


「どうかした?」

『いや、我に相応しい少女だというのは分かるが、………少し不安でしてな』

「ま、ティアはいいやつだから大丈夫だと思うぞ。なんかあれば俺に言うといい」

『………そうか。ユーリ様が味方となれば心強い。では契約に応じようぞ』


 ペガサスはティアに近付いて行った。そこは、召喚した魔方陣の上だった。


「わたくしの名は、ティアリス・リンディア。あなたを召喚したものよ。契約に応じてくれるかしら?」


 ティアには声が聞こえないので、ペガサスは肯くことで肯定した。


「そう、………ありがとう。ではここに契約は成った。………汝の名はルーリィ。良いかしら?」


 再び肯くペガサス改めルーリィ。

 次の瞬間、薄い光が魔方陣を覆い、中に入っていたティアとルーリィを包み込んだ。そして一瞬後にそれはなくなり、そこには向かい合っているティアとルーリィの姿。


「これからよろしくお願いするわ、ルーリィ」

『こちらこそよろしく頼む』

「ッ!!?? こ、声が………」

『ふむ………。おそらく我と契約したことによって言葉が通じるようになったのだろうな』


 どうやらティアもルーリィの言葉が分かるようになったようだ。他の生徒たちは分からないといった表情をしている。


 さて、俺もアンネの元へ戻ろうかと踵を返したところで、………とんでもない魔力の流れを感じた。


「え、ちょ、これヤバいんじゃ………ッ」

「ユーリ!! アンネが召喚術を発動させておる!! あやつの魔力量じゃ、とんでもないものが出るぞ!!」


 なッ!

 クソッ! 勝手に発動させんなよ!


 俺はすぐにティアの元からアンネの方へ走り出す。その間にも周囲を渦巻く魔力は膨張し続けている。

 空気中の魔力を感じられない一般生徒は急に不調を訴え、レベルの高い教師などはその魔力の渦に腰を抜かしている。使えない。


「アンネ!」

「ユ、ユーリさん………、何かとんでもないことに………」

「とりあえず俺が結界を張る。それまでにさっさと召喚しとけ」

「このまま続けていいんですか?」

「途中でやめて変な所に出たり、ややこしいことになるよかマシだ」

「………分かりました」


 さて、と俺は頭を切り替える。


「魔力遮断結界。物理結界。不干渉結界。空間断裂」


 俺は、アンネのいる召喚場のみを、空間ごとズレさせた。つまり、アンネのいる場所のみ、異空間化している。

 かなり無茶苦茶なことをしているが、その代償か、俺の魔力……理力がドンドン削られていってる。保ってあと数分。魔力では出来ないことをしているからだろう。


「あと数分……ッ! いける、か?」


 しかし、それは杞憂に終わった。

 アンネの周囲でブワッと風が吹くと、そこには光り輝く蛇がいた。

 俺はそれを確認した瞬間、気が抜けて、空間断裂を解除した。

 その瞬間、漏れ出す魔力は洪水のように広場に溢れたが、それも一瞬。すぐに元の様相を取り戻した。


「えっと………あなたは……?」


 はぁ、………お前かよ召喚されたのは。驚かすな。


「私は、ルドラですよ。久しぶりですね、アンネルベル」


 そう、出て来たのは、暴風雨神であり、破壊神、ルドラだった。その姿は燃える蛇。しかし次の瞬間には、長身の女性へと姿を変えていた。

 そういえばアンネはこの姿のルドラとは初対面なのか。前回は俺の体を貸したからな。


「貴女がルドラ? ………お久しぶりです。というか、使い魔召喚の儀式で喚んでしまったんですが………」


 アンネが恐る恐る訊いてみる。相手は神なのだ。そこいらの使い魔とはわけが違う。

 しかし、ルドラは微笑み返した。


「いいですよ。私でよければ」

「いえ、こちらこそ私にはもったいない使い魔でどうしようかと思ってたんですよ」

「ふふ……、それもまた一興、ではありませんか」

「………あは、それもそうですね」


 アンネとルドラはそれだけ話すと、契約の儀式へ入った。名付けは、やはりルドラ、という名前だそうだ。

 ………しっかし驚いたな。あの魔力、異常すぎるぞ。


「そりゃ神じゃからの。神は世界と同期しておる。神、すなわち世界じゃ」


 へたり込んだ俺の隣に座り込みながら、ノアが言う。

 つまり、魔力はほとんど無限じゃねーか。俺より酷い理力だぞそれ。


「ま、それでも神によって扱える理力量は決まっておるし、神にも上下関係はある。ルドラはそのうちでも高位の神じゃがな」

「なるほどねぇ。………ノアはどうなんだ?」

「わらわか? ………ふむ、わらわは世界と完全に同期しておるから、ルドラより高位の神じゃ」


 だからルドラやペガサス……ルーリィに“ユーリ様”って呼ばれたのか。ノアの主が俺だから。


「はぁ………、アンネも無事契約が済んだようだし、俺もやるかぁ」

「何が出るんじゃろうな。この世界最強じゃと、レイの父親である龍王などが出るのではなかろうか?」

「いやいや、龍王ってたぶんおっさんだろ。そんなん出ても楽しくないから」


 ノアはニヤニヤしながら言っているが、俺にとっては死活問題だ。龍王とか出てきたら、一瞬でレイのところに飛ばしてやる。

 そんなことを考えながら、地面に召喚陣を書き終える。


「ういしょ、っと。おっけ。じゃあいくか」

「うむ。わらわは少し離れておるぞ」

「うぃー」


 俺は一応周囲を空間断裂しておいて、召喚陣を発動させる。

 案の定周囲は吹き荒れ、砂塵が巻き起こる。


「お」


 と、その時、魔方陣の外からノアの声が聞こえた気がした。空間が断裂しているので聞こえるはずはないのだが………。


 そうこうしている間に、目の前に何かが降り立つ気配を感じた。


 次の瞬間!


「く、おぉッ!!」


 目の前を何かが通り過ぎ、頬に薄く切傷が走る。

 すぐにそちらを振り返り構えるが、一向にこちらに向かってくる様子がない。

 なんとか姿を確認しようとするが、周囲は渦巻く魔力のせいで砂が舞い上がり、視界はほぼ零だった。

 そうこうしている間に、前から声が聞こえてきた。


「断りもなしに我を喚ぶとは………貴様のその重すぎる罪、死によって償ってもらう………」


 その声は、幼い女の子のような声色だった。しかし、それでいて威厳に溢れ、声だけで平伏しそうになる。


「ククク………、もし元の空間に戻れないとするなら、この世界を終わらせて戻るとしよう」


 え、世界を終わらせる?

 いやいや、それは困る!


「ちょっと待て、とりあえず話し合おう!!」

「フッ……、貴様なんぞと話すことなど………んむ?」


 ふと、正面からずっとあった威圧感や殺気が、少し和らいだ気がする。

 俺は今がチャンスだとばかりに、たたみかけようとした。人間話せば分かりあえるんだ!


「まぁまずは落ち着いてくれ。おもに茶でも飲んでゆっくり話し合おう」

「………はぁ。お主、相変わらずじゃのう」

「は?」

「いや、わらわは―――」


 ここで、周囲を覆っていた砂塵が晴れる。

 相手の姿が、少しずつ見えて来た。


 そこにいたのは――………


「はぁ………。まさかわらわがユーリの使い魔となるとはのぅ………」

「ノ、ノアぁ!?」


 片腕を腰に当て、呆れ笑いをする、ノアだった。

 非常に眠たいです………。


 あ、一つお知らせと言うか、お断りがあります。

 この小説ですが、六月に入ったら更新頻度が超絶に下がります。と言うのも、中学校へ教育実習に行かねばならなく、三週間ほど中学一年生に地理を教えてくる予定です。

 なので、色々と教材研究やら学習指導案の作成やらで忙しいと思います。

 六月後半には確実に戻っては来ますけどね。


 というか、まだ少し期間はあるのですけどね。それまでは今まで通りやっていきます。


 では、とりあえず、総合40万アクセスありがとうございます!

 どんどん増えるアクセス数。なにやら気恥かしいですね………。


 ではまた次回、お会いしましょう。


 ではでは~。

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