第41話:フォレスティン学園
第三章 フォレスティン学園
さて、今日は学園が始まる日で、つまりアンネが学園へ行く日だ。
アンネは「これでやっと書類整理から解放される……ッ!」と言っていた意味が、今更になって理解出来た。
アンネたちが通うフォレスティン学園は、どうやら寮で暮らすらしい。一々城に戻れないので、書類整理が出来ない、というわけなのだ。
にゃるほどね。
「で、アンネ。俺はどうしたらいい?」
「そうですね………、普通なら行く準備なんですが………」
「まぁ元々着の身着のままだからな。荷物なんてないし」
「ですね。ではしばらく待ってて下さい。すぐ準備してしまいますので」
「まぁ俺のことは気にしなくていいから、ゆっくり確実に準備しな」
「ええ、ありがとうございます」
そう言うと、アンネは廊下を歩き去った。
実はまだ学園へ向かっておらず、城内で準備の最中だ。さすが王女となれば準備が多いらしく、朝から色々動いている。
実はもう前日までに準備は終えていたのだが、学園に着くまでの食料やら服やらを追加で馬車に入れているらしい。
ちなみに、学園までは馬車で半日ほど。現代っ子には厳しい距離だ。
「さて、俺はどうしようかね………」
とりあえず、ノアを呼び出さなきゃな。
俺はノアに念話を繋げる。
ちなみにまだノアとしか念話が出来ない。
【ノアー】
【む?】
【そろそろ出るからこっちゃ来ーい】
【うむー】
さて、………リナリアはどうしよう。そういえば訊いてなかった。
【ノアー、再びすまん】
【なんじゃ?】
【リナリアも連れてきてくれるか?】
【ああ、運良く近くにおるの。了解した】
【すまん。よろしく】
さ、俺は外に出ときましょうかね。
◆◇◆◇◆◇◆
「私も付いて行くわよ!」
「了解ィ」
「え、ちょ、………早くない?」
「いや、予想出来たし」
城を出て、城門あたりでのんびりしていた俺に、城の入り口から猛スピードでこちらへ走ってくるリナリアを見た時には驚いたが、俺の前に地面を削りながら止まったリナリアの言葉が、それだった。
「というか、契約までしたのにリナを置いて行くとか、ないから」
「そ、そう?」
リナリアが顔を赤らめる。………なんだろう。猛烈に恥ずかしい。
「ノアはもちろん付いて来てもらうからな。反論は許さん」
「ククク……。反論などあるはずもなかろう?」
まぁ名実ともに俺のパートナーだからな。ついて来てもらわないと色々困る。
それはいいんだけど、レイはどうするんだろう。
「あ、ユーリ。もう行くの?」
と、そこに、レイが現れた。偶然にしちゃタイミングよすぎないかい?
「そろそろ行くんでしょ? 見送りに来たんだよ」
………なるほど。
「つか、その言い方からすると一緒には行かないんだな?」
「うん、まぁね。ま、言ってしまうと第三王女の護衛を頼まれたんだけど」
第三王女と言うと、ルチアーナのことか。確かルチアーナだけ学園に通える歳じゃないから、城でお留守番なんだよな。
「ふぅん。でもなんでまた」
「アンネルベルを攫ったアレの罪滅ぼしさ。護衛くらいは引き受けようと思ってね」
「ははぁ、なるほど。しっかりやれよ」
「うん、ユーリもね」
そう言って、互いに笑いあう。
と、その時、城の扉が開かれるのが見えた。出て来た人物は、予想通りアンネだった。
「ユーリさん、お待たせしました」
「いんや、大丈夫だ。もういいのか?」
「ええ。ユーリさんは?」
「俺は挨拶なんかは昨日のうちに済ましたからな。………あ、リナリアも連れていくぜ?」
「ええ、大丈夫です。その予定で荷物を考えましたから」
なんか悔しかった。
俺が立っている城門のすぐ外には馬車が4台あり、1つに俺とアンネ。1つにセラフィムとスィード。1つに馬車護衛のための近衛騎士。1つに荷物が入っている。ちなみにスィードは馬車を運転するらしい。俺は出来ないので大人しく馬車の中。
「アンネー、セラとスィードは?」
「もうすぐ来ると思いますよ? ………あ、ほら」
アンネが指し示す先に、スィードを伴いセラフィムがやって来た。
セラって、歩く姿から仕草から何まで、本当にお嬢様、って感じがする。
それに引きかえアンネは………
「ユーリさん? 死にます?」
「………なんでもないです」
なんでバレたんだろう。女性の基本スキルなのだろうか。
「姉様、ユーリ様、お待たせしました」
「おー、もういいのか?」
「はい、大丈夫です」
「んにゃらば出発するか」
そして、それぞれ馬車へ乗り込む。
俺も乗り込もうとしたその時、レイが俺に近付いて来た。
「どうかした?」
「ルチアーナから伝言だよ。“その内、学園に遊びに行くから”だって」
「あー……、了解」
まぁ1人で城にいるのは面白くないだろう。まぁいつでも来ればいいさ。そん時はレイも一緒だろうから、なお良いしな。
「で、ルチアは何してんの?」
「まだ寝てるよ」
クスクスと笑い合う。
「んじゃ、行くわ」
「うん。頑張ってね」
「そっちもな」
俺たちは軽く拳をぶつけ合い、別れた。
さぁ、出発しよう。
◆◇◆◇◆◇◆
そして、夕方。
「早朝に出発して、着いたのが夕方とか………」
とりあえず、ケツが痛い。
馬車を降りたのだが、まだ地面が揺れている気がして、若干気持ち悪い。
「ユーリ様、大丈夫ですか?」
「あー、大丈夫。ありがとな、セラ」
セラは優しいなぁ。それに引きかえアンネは………
「ユーリさん、どんな死に方がいいですか?」
「………なんでもないです」
女性には人の心が読めるスキルがあると見た。
さて、ここは王立フォレスティン学園。一応クレスミスト王国内ではあるが、かなり辺境に位置する。
フォレスティン学園は12歳から17歳まで学問を学ぶ場所で、主に魔法と武術について、そして基本的教養を学んでいる。まぁ平和でない限り専門知識は必要ないからな。
ここでは主に貴族が学んでいる。正直なところ、平民には必要ないのだ。
まぁこの辺の格差は仕方のないことだろう。
そして俺たちは学園の正門で入園許可をもらい中へ入ったところで、馬車を降りていた。
俺たちの他にもところ狭しと馬車が並び、生徒らしき人が多々見受けられた。
「で、後は荷物を運べばいいのな?」
「ええ。ただ荷物が多いので、運ぶ人を要請しているところです」
「面倒だな。亜空間に入れてけばいいんじゃね?」
「亜……空間?」
アンネも大変だな。一々俺に驚いてたら身が保たんぞ。
唖然とするアンネは置いといて、馬車の中身を亜空間に堕とす。
「さ、行こうぜ」
「………はぁ、もういいです。ホント非常識ですね」
「照れるじゃねぇか」
「誉めてませんよ」
そういえば、馬車の中身ってセラの分もあるんだよな。あとで届けるか。
あれ、そういえば。
「ノアとリナはどこ行った?」
「リナさんは馬車の影でうずくまってます。ノアさんはその隣にいます」
酔ったか。
「セラとスィードは先に寮に行ってて。ちょっと休んで行くわ」
「分かりました」
「了解しました。荷物は後ほど?」
「ああ。あとで部屋の位置調べて行くから」
「あ、それなら大丈夫です。アンネルベル様とセラフィム様は隣の部屋にしていただいたようなので」
「なんだ、隣かよ。んならまた後で」
「はい、では」
そう言って、2人は寮へ歩いていった。寮といってもここから10分はかかる場所にあるらしい。とてつもないデカさだ。
というか、途中で荷物を運ぶためにきた人たちに、断りの言葉をかけている。………迷惑かけて申し訳ない。
さて、とりあえず。
「き、気持ち悪い………」
「弱いのぅ………」
ぐったりしているリナリアを、休ませないとなぁ、と思った。
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感謝文が長い!!
………で、だ。昨日、読者に何があったんでしょうか?
一昨日の日別アクセス数が19000ちょっとで、過去最高だぜ!と喜んでたんです。………なのに昨日のアクセス数、なぜか30000。
………何があったんでしょう。私の目が悪いだけなんでしょうか。
さて、ようやく学園です。ようやくです。
学園で何が起きるかはだいたい決まってます。それをなんとか文章に起こして、提供出来ればいいなぁと思っております。
ではまた次回。
さよなら~。