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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第二章 ギルドと依頼と
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第38話:やりすぎた

 俺は創造魔術で毛布を創ると、リナリアをその上に寝かせ、対物対魔結界を張った。これは物理的な攻撃と魔術的な攻撃、どちらも受け付けないという優れモノだ。これで、何が起きてもリナリアに支障はない。


「おやおや。誰かと思えば、噂の特別近衛騎士サマじゃあないか。そこの屑をとりに来たのかい?」


 とりあえず、これはこれでよし。

 あとはアレの口を壊すだけだ。


「どうせ夜の供にしか使ってないんだろ、それ?」

「黙れ。ぐちゃぐちゃ言わずにさっさとかかって来いよ。脳みそ足りてないのか?」


 俺が笑いながらそう言うと、女――サンローズは無表情になったかと思うと、手を上へ挙げ、斜め下へ振り降ろした。

 と同時に、不可視の風の刃が俺に迫ってきていることが分かった。

 しかし俺は動かない。サンローズがニヤリと笑った瞬間、


 バシュッ!


 俺の目の前でそれは霧散した。


「なッ!」


 驚くのも無理はない。いきなり魔術が消えたんだから。

 しかし俺には理由がはっきりしていた。

 あの刃は魔術だ。ならば、打ち消せばいい。


「面白くないことになっとるのぅ」


 ノアだ。

 以前、ノアにはある程度の魔術は効かないと言われたが、ここでも綺麗に打ち消してくれた。


「よぉノア。お前、魔術打ち消すのはありがたいが、代償は払ってたりすんの?」

「わらわの理力が多少削られるだけじゃ。今くらいの魔術ならほぼ無限に打ち消せるぞ?」


 はー、凄いなぁ。てことは打ち消すことによって削れる理力より、自然回復される理力の方が多いわけだ。さすが神様。

 そういえば、やっぱりノアは魔力ではなく理力を持ってたんですね。神様だから当たり前だけど。


「く、クソがぁ!!」


 サンローズが風の刃に加え、炎弾、氷弾なども打ってくる。が、全てノアによって消える。

 驚いた顔が滑稽だ。


「ノア、短刀」

「うむ」


 手の中に短めの刀が現れる。今は銃を使わない。


「さて、遠距離攻撃とはまたセコいな。性格がよく表れてる」


 クスクス笑う俺にサンローズは顔を真っ赤にさせて怒り、剣を構えて向かってきた。


「ああ、そうだ。向かって来いよ」

「死ね!」


 上段から迫る剣を半身でかわし、短刀を薙ごうとした。

 しかしサンローズは片手で剣を握っている。ではもう片方は?

 剣をかわした瞬間、俺の死角にあったもう片方の手から、氷の槍が突き出た。しかしそこはノアの短刀。あっさりと氷の槍を切り裂き、サンローズの左の二の腕を浅く切った。


「ッ!」


 そこで、サンローズは距離を取る。


「貴様ァ………ッ!」


 五月蝿いなぁ………。あ、そういえば。


「なぁノア。さっき氷の槍が消えなかったんだけど、なんか制限あるの」


 ノアは魔術を打ち消すはずなのに、切り裂いた。なにかカラクリがあるはずだ。


「打ち消す、というよりも、結合を解除する、と言えば分かるかの?」

「ああ、なるほど。だから遠距離攻撃は打ち消して、槍は切ったのか」

「うむ」


 つまり、炎弾などはその核を消せば消える。しかし氷槍は核が魔術師本人だろう。だから氷槍は刃の触れた部分のみ結合が解除され、切断という結果になったのだ。


「随分と余裕だなぁオイ!」


 再びサンローズが切りかかる。が、それを避け、受け流し、魔術は消しながら後退する。


「まぁ何にせよ」


 俺は短刀に氷を纏わせる。


「リナリアの受けた痛み。それ以上を払ってもらう」


 俺は後退していた足を前へ踏みしめ、身を屈める。

 いきなりの行動に、サンローズは振った剣を抑えることが出来ずに、俺の真上に右腕が来た。

 その機を逃さず俺は、その腕を………切断した。


「う、あ、ああああああああああああああああああああああああ!!!」


 切れた腕と、その手に持たれていた剣が宙を舞う。しかし、血は飛ばなかった。

 俺は刃が当たる直前、風で鋭さを増した刃で腕を切断し、氷で止血したのだ。

 理由は簡単。血が流れて死なれては困るのと、下が汚れるからだ。噴き出すだろう血も目障りだし。


「う、が、あ………ッ!!」


 サンローズが片手を押さえ立ち上がろうとするが、あまりの痛みに足が震えている。

 凍らせたから痛みは緩和されているハズなんだけどなぁ。

 俺はちらりとリナリアを見る。治療のために解析した結果、左手足と肋骨が2本折れていた。そして右肩の切り傷と、肋骨が折れて刺さったことによる、肺の損傷。骨折はともかく、肋骨が肺に刺さっていたのはヤバかった。放っておいたら肺が血で満たされ、呼吸困難で死んでしまう所だった。


「後は足だな、とりあえず」


 俺は足元にうずくまるサンローズを見た。

 ………なんかやる気なくすな、この光景。

 俺からすれば、サンローズは明らかに弱者だった。俺に弱者をいたぶる趣味はもちろんないし、すでに牙を失った獣に追い討ちをする趣味もない。

 しかし、こいつは牙を失う前に、俺の大事なものを傷つけた。それだけは許せない。


「ひッ!」


 俺を見上げたサンローズが、引きつった声をあげ、最後の力か何か知らないが、俺と反対の方向へ走り出した。火事場の馬鹿力というやつだろうか。

 俺はその場から瞬間移動をした。転移と違う点は、目に見える範囲でしか出来ないこと。その代わり、移動位置は詳細に決めることが出来る。

 シュッと出た位置は、サンローズの3メートルほど先。


「い、いやああああああああああ!!」


 いきなり目の前に現れた俺に、叫び声をあげる。

 しかしそれに構わず、俺は短刀を振る。風の斬撃が飛び、サンローズの足を、


 バツンッ!


 切断した。


「ッ!!!!!!」


 すでにサンローズは声をあげられず、白目を剥いていた。

 もちろん傷口は氷で止血している。


「………ユーリ。もう良いのではないか?」


 ノアから声がかかる。………俺もようやく正気に戻ってきたところだったので、素直に聞くことが出来た。


「………やりすぎたか?」

「いや、正直手足全部切断してその辺に転がしておいてもよいと思うが、」


 ノア落ち着け。


「これ以上やるとアンネや王族に迷惑がかかる」

「あー」


 忘れてた。ここ、兵士の練習場で、さらに闘技場の上だった。

 周囲を見ると、何事かと集まってきた兵士や、状況の分かっていないアンネやラルムさんが青ざめた様子でこちらを見ていた。この場を満たすのは、果てしない静寂。

 サンローズはすでに気を失っていた。


「………若干不完全燃焼だけど、これくらいにしておくか」

「うむ。不完全燃焼じゃが」

「ユーリさん!」


 と、これまで端で黙っていたアンネが駆け寄ってきた。


「ちょ、これはやり過ぎじゃないですか?」

「………かもなぁ。まぁ治すよ、もちろん」


 俺はいやいやながらもサンローズに近付き、額に手を乗せる。


「解析。抽出。複製。上書き、と」


 するとサンローズの切られた場所が光りだし、一瞬後には切られたはずの部位があった。

 オーヴァーライトである。


「ふぅ。まあこんなもんか」

「………相変わらずの治癒魔法ですね。今度病院や医務室に来て下さいよ」

「別にいいけど、国的には借りとか気にせんでいいの? 俺はもちろんそんなこと言うつもりないけど、なんつーか、対外的に」

「重病人だけでもお願いできないかな、と思いまして」

「………ま、いいんだけど」


 そして俺はリナの元へ近寄り、抱き上げた。


「俺はリナリアを部屋へ連れてくわ。あと頼んでもいい?」

「………ええ。近くにいた兵士に聞いたところ、どうやらサンローズが一方的に悪いらしいですから」

「ん。すまんな、面倒事押し付けるみたいで」

「ユーリさんには借りがたくさんありますからね。これくらいは引き受けますよ」

「ありがと。んじゃな」


 そう言うと、アンネに申し訳ないとは思いながらも、俺は転移でその場を後にした。

 上手く無双出来ずに弱いもの苛めみたいになってしまったorz


 イジメカッコワルイ!


 ………はい。で、そろそろ学園に入りますが、やはり生徒が出てくるもので、名前決めにゃいかんわけで。

 さらにキャラが増えるとわけわかんなくなる上に、空気な人が必ず出るので、少なめにします。たぶん。確証はありません。


 ああ、そういえば、リア友に内緒で猫神は投稿してたんですが、このたびバレました。この芍薬牡丹という作者名も友人からバレないためだったんですけどねぇ。


 ではまた次回。

 さよなら、さよなら、さよなら(ネタが古い

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