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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第二章 ギルドと依頼と
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第35話:特別近衛騎士

 ギルドで依頼を達成してから数日、俺は軽い依頼を受けたり、アンネをおちょくったりして過ごしていた。リナリアも、最初はずっと俺の後ろについて来ていたのだが、最近では1人で色々動いてるみたいだ。城の人も、一部を除いて比較的友好的に接しているらしい。しかし、俺が城の外に出るときは、必ずついて来る。俺としては危ないから城にいて欲しいのだけど………。

 レイは相変わらずのんびりとしている。たまに町に出てみたり、屋根の上で昼寝してたり。ただ、寝てる最中に寝ぼけて龍化するのはやめて欲しい。一番最初に寝ぼけて龍化した時は、城内がパニック状態になった。何人か転けて怪我までしたし。もちろんレイの仲間である俺が責任もって治したが。

 アンネこと、アンネルベルはずっと書類を整理している。ただ、もうすぐ学園が始まるらしく、そうすれば書類整理をしなくてもいいらしい。すげぇ喜んでた。セラフィムも同じく学園に通うので、冷静ないつもの態度よりは、わくわくしている感じだった。ルチアーナはまだ学園に通うほどの年齢ではないので、家庭教師みたいなのを雇っているらしい。


 で、だ。もう一週間くらいで学園が始まるらしいのだが、その前にやらねばならんことがあるらしい。

 そのため、俺は豪奢でデカい扉の前に、両脇にスィードともう1人知らない近衛騎士をたずさえ、やって来た。


「一体なんなんだよ………」

「まぁまぁユーリ殿。少なくとも悪い話ではないと思いますよ?」


 スィードが右側で苦笑している。

 ちなみに俺の服は、色々考えた結果学生服にした。ちなみにブレザー。でも失敗だったかもしれない。首が締め付けられるし、ネクタイが鬱陶しい。

 でも、ここでいつまでも立ち往生しているわけにはいかない。


「はぁ………、行くかぁ」


 俺は呟き、扉に手をかけ、開く――


「………よくぞ参られた」


 遥か先の、何段も高くなった位置に座っている、ラルムさん……いや、国王が声をかける。

 その隣には、王妃であるフィーネリアさんの姿もある。

 少し段が下がった場所には、王女三人が座っている。

 そこからさらに段が下がり、階段下には真ん中の道を挟むように何人かの老人、おそらく大臣とかの幹部の人、が座っており、さらにそこから今俺が立っている扉の所まで、ずらりと兵士や騎士が床に傅いている。

 それはまるで重要人物を迎えるような………、え?


「報告します!! ここにユーリ・ツキシロ殿をお連れいたしました!!」


 隣にいたスィードが王座に届くよう、声を張り上げ叫んだ。


「御苦労であった。下がれ」

「ハッ!!」


 そういうと、スィードともう一人の近衛騎士は俺から離れ、兵士に混ざり、傅いた。

 正直、少し心細かった。


「参られよ、ユーリ殿」

「………はい」


 国王の言葉に従い、前へ歩き出す。

 やはりいつもは柔らかな雰囲気であるラルムさんも、ここでは国王の威厳がビシビシ伝わってきていた。先ほどのラルムさんの声も、そんなに大きな声ではなかったのにもかかわらず、ここまで普通に聞こえて来た。これが大陸最大国の国王か。プレッシャーが凄い。

 俺は段の下あたりまで行くと、片膝を立て、跪いた。


「ユーリ殿、まずは礼を言わせてくれ。我が娘、アンネルベルを攫い人から救っていいただいたこと、そしてセラフィムを意識不明から救っていただいたこと、深く感謝する」


 その瞬間、兵士たちはざわついた。その端々から聞き取るに、どうやら俺がアンネやセラを助けたことを知らなかったらしい。しかし幹部は驚いた様子がないので、どうやら上層部だけ知っていたことなのだろう。


「静かに」


 ラルムさんの一言で静まる。やっぱすごい。


「それで、そなたに褒美をとらせようと思う」

「え?」


 それは書庫を漁っていいとかでもう済んだんじゃ………?


「それで褒美じゃが、………一応そなたに訊いてから決めたいと思っておるのじゃ」

「あ、いえ、いらないっちゃいらないんですが………」


 と言った瞬間、よこの老人たちからすげぇ睨まれた。

 どうやら断ってはいけないものだったらしい。つかそうならそうと先に言えよ。この場で考えるとか、これなんて無理ゲー?


「………すみません。この場で思いつくことはありません」

「そうか、ならばこちらから2つほど提案させていただいてもよろしいかな?」


 あんのかよ!とは言わないのが大人な対応。ではなく、空気が読める子なだけ。


「まず、報償として白金貨1枚。そして、特別近衛騎士としてユーリ殿を我が国に迎えたいと思っている。確かユーリ殿は旅をしておるのじゃろう? 少しここでゆっくりしてはどうじゃ」


 いやいやいや、ちょっと待て。整理しよう。


「えっと、まずお金としての価値しかないのであれば、白金貨は遠慮します」

「この白金貨は、我が国の紋章が刻まれておる。これは私の友好の証でもあるんじゃ」

「……………ありがたく承ります」


 あとで黒牙のアジトから盗んだ財宝をあげよう。王室の財源がどうなってるかは分からないが、ないよりかはあったほうがいいだろう。


「で、特別近衛騎士、というのはなんですか?」

「簡単にいえば、近衛騎士と同等の権力を持ちながら、近衛騎士に属さない者じゃな。そなたの性格上、その方が良かろう?」

「ええまぁ………」


 というかこの短い間に俺の性格まで読み取ってたのか。すごいな。


「ではこの2つを授与しようと思う」


 ラルムさんが言い終わると同時、横の扉から神官っぽい荘厳な格好をした長身の女性が現れた。その手には布が掛けられ、その上に金貨より少し大きめの白金貨が1枚乗せられていた。

 ラルムさんは席を立ち、段を降りその白金貨を受け取ると、俺の前までやってきた。


「そなた、ユーリ・ツキシロ殿に信頼と友好の証として、我が国の紋の入った白金貨を授与する」

「………ありがとうございます」


 俺は座ったまま、白金貨を受け取った。

 そしてラルムさんは元の席に帰ると、再び話を再開する。


「さて、次に、アンネルベル及びセラフィムについてだ」


 その声に、大臣の数人が眉をひそめる。


「知っての通り、セラが意識不明から目覚め、めでたくも学園へ通うこととなった。それに伴い、近衛騎士隊隊長スィードをセラフィムの護衛に付けようと思う」


 スィードが立ちあがり、王座に向かって深く礼をする。

 兵士や騎士、それに大臣たちも、それは相談されていなかったらしく、動揺が走っていた。

 しかしその動揺は、次の言葉で爆発的に広がった。


「そしてアンネルベルの護衛は、スィードに変わり、ユーリ殿についてもらいたい」


 俺は先にアンネから条件として言われていたので、あーあれか、としか思ってなかったのだが、流石に大臣から反発の声が上がった。


「国王様! なぜそんなまだ会って間もない旅人風情をアンネルベル様の護衛に!?」


 俺もそれは思った。


「まだ会って間もない、か。確かにそうだ。しかし私も何年もただ王座について来たわけではない。私も人を見る目くらいは自負できる。………私が保証しよう。ユーリ殿は信用に足る人物だ」


 ………なんだこれ。ラルムさん超かっこいい………。


「し、しかし………」

「反論に関しては、これが終わった後にしてくれ。先に終わらせよう」


 ラルムさんの一言で、再び静かさが取り戻される。


「頼まれてくれるか?」

「御意に」


 ちょっとラルムさんにつられて、かっこよく言ってみた。

 ………後々考えると、ちょっと恥ずかしい言葉なんじゃないだろうか。


「ならばこれにて閉会とする! 各自持ち場へ帰ってくれ!」

『ハッ!!』


 中にいた全員が一斉に言葉を放った。

 そして扉付近にいた兵士から順に外へ出ていく。俺も出なきゃならないんだが、ラルムさんが俺を見ていたので、残れということか?と思いつつ残ってみた。


 そして全員が出て行ったあと、ラルムさんが俺に声をかけて来たので、どうやら間違いではなかったようだ。


「全員行ったようじゃの。さて、ちょっと執務室まで来てもらえるかの?」

「あ、はい」


 そういうと、ラルムさんは段差の上からすぐ横に歩き出す。良く見れば、そこにドアがあり、どうやらそこから執務室につながっているようだ。

 俺は段をあがり、ラルムさんについて行くのだった。



 ちなみに、王妃フィーネリアさんと王女3人は、微妙に笑いながら俺の後から執務室について来た。

 少し居心地が悪かった。


 やっと10万文字突破ですー。これに35+2話も使ったのか………。

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