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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第二章 ギルドと依頼と
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第30話:光の雨

「うお、まぶし!」

「うわッ、びっくりしたー……」


 俺が眩しいと言ったのは、夕日が赤く燃えていたからだ。そして転移の目印にされたレイは、酷く驚いていた。無理ないけど。


「おっすレイ。ただいまー」

「うん、おかえり、はいいんだけど、そっちの子は?」


 レイが顔を向ける先には、リナリアがいた。


「ああ、こちらはリナリア。捕まってたんで解放した」

「そか」


 詳しくは訊かないレイが、ありがたかった。


「で、リナ。こいつがレイネスティア。仲間だな」

「よろしく、リナリア」


 レイが手を出し握手を求めるも、リナリアは困ったように俺の後ろに隠れていた。

 どうし……あ、そか。


「すまん、レイ」

「あはは、いいよ別に。少しずつ慣れていこう」


 レイは柔らかな笑みを浮かべた。

 こいつのいいところは、言わなくても分かってくれるところだ。

 リナリアは、長い奴隷生活と深く根付いた恐怖心で、おそらく人と触れ合うことが苦手なのだろう。だが、レイの言った通り、少しずつ慣れていけばいい。


「でも亜人かー。あまり見かけないね」

「あー、そう言えば耳と尻尾隠してないな」


 レイがそう言うと、リナリアはそれらを隠してしまった。


「ご主人様、これ隠しとくね」

「そっか、残念だな。綺麗なのに」


 やはり九尾だからか、その尾の美しさは筆舌に尽くしがたい。髪は短めでぼさぼさなのだが、明るい場所で見ると、その顔もすごく綺麗だった。


「じゃあ出しとく!」


 一度隠れたそれが再び、もさぁ、と出て来た。早く風呂に入れて、ふわふわの尻尾に包まれたい欲求に駆られる。


「レイ。拠点破壊開始だ」


 俺は戦う。ふわふわ尻尾のために!


「強奪品はどうしたの?」

「問題ない」

「そう? じゃあ僕は上から爆撃するねー」


 そう言って、レイは頭上へ手をかざす。


「そういえば、ユーリ」

「ん? どした?」

「ユーリは僕のことレイって呼ぶよね?」

「ああ、そうだな。それがどうかした?」

「実はね、レイって名前の魔術があるんだ」


 ………ほう。それは興味深い。


「これがそうだよ。光の雨レイ


 唱えると、空から一条の光が墜ち、丘に半径5メートルほどのクレーターを作った。


「とりあえず、逃げようか?」


 にっこり笑うレイの顔とクレーターを見合わせ、頭上を見た。


 そこに空はなく、


 無数の光の点が見えた。


「やばっ! 逃げるぞ!!」


 戸惑い気味のリナリアの手を取り、ダッシュする。もちろん風の加護をつけて。


 ヒュッ!


 ドガァン!!!!


 背後で何かがぶつかり、破壊される音を聞いた。


 ヒュヒュン!!


 ズドドドドドドドドドド………!!!


 連続で何かが墜ちる音を聞いた。

 走りながら背後を見ると、空から無数の光の線が降ってきた。

 それまるで、光の雨だった。


「なるほどねぇ………!」


 俺は走りながら得心がいったと頷く。

 だけど、


「だけど、やりすぎだろぉがちくしょう!!」


 俺は迫りくる破壊の音に、逃げることしかできなかった。



◆◇◆◇◆◇◆



「いやぁ、久しぶりだったから、気持ちよかったよ」

「うん、半径100メートル近くをクレーターだらけにしたら、そりゃ気持ちいいだろうよ」


 あれからレイが光の雨を降らせて1分、丘がボコンとへこんだ。おそらく下の拠点が崩れ落ちたのだろう。

 それから更に9分間、光の雨は降り続いた。なんというオーバーキル。


「さて、ギルドの人を呼び出すか」


 太陽も沈みかけ、目視出来るのは今がギリギリの時間だ。


「えーっと、この魔法陣と同じ陣を書けばいいんだよな」

「そうじゃな」


 俺はその辺の棒で陣を書く。丸やら四角やら文字やらをゴチャゴチャ書いたそれは、なんだかよく分からないものになった。


「………なんぞこれ」

「魔法陣のはずだったもの、かの」


 ノアが的確過ぎる表現をした。


「まぁいいか。………転移」


 適当に魔力を陣に注ぎ、転移を発動させる。

 魔法陣はピカーっと光り、周囲が光で満たされる。

 次の瞬間、


 ボゥン!


 ギルド職員が現れた。というか、普通に実体で転移してきた。


「え、え? あれ?」

「あー、ギルドの方?」

「あ、は、はい」

「黒牙拠点破壊証明で喚びました。アレです」


 そう言ってクレーター地獄を指差す。

 ギルド職員は冷や汗をかきながら、頷いた。これでよし。


「さて、帰るか」

「そうじゃの」

「帰ったらギルドに寄らなきゃね」

「ご主人様の家に行くのね!」

「まさか完全な転移をするなんて………」


 上から俺、ノア(猫形態)、レイ、リナリア、ギルドの人だ。

 無関係なギルドの人、ごめんなさい。俺のパーティーは俺を含め普通の人はいません。


「じゃあ向こうまで転移でひとっ飛びするか」

「転移ですか!?」


 驚くギルドの人。

 が、俺はそれをスルーする!


「目印は………、アンネくらいしか出来ないなぁ」

「………そうじゃの」


 すまんアンネ。クレスミスト王国の城下町じゃ、アンネの魔力が一番辿りやすいんだ。

 確実に驚かしてしまうが、許せ!

 などと思いながら、大きな円を書く。

 全員がそこに入ったのを確認し、魔術を起動させる。


 ………アンネ発見。


「転移ッ!」


 シュンッ!


 刹那、その荒れ果てた荒野には人一人いなくなった。

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