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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第二章 ギルドと依頼と
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第29話:亜空間

 それから俺とノアとリナリアは、再び探索に戻っていた。服がないリナには、俺が適当に創ったサマードレスみたいなのを着せた。ただ、リナリアが泥やら血やらで汚れているので、外に出たらすぐに風呂に入れようと静かに決意している。

 先ほどの牢獄にリナリア以外に生きている人はいなかった。しかし何人も亡くなった人がいた。それこそ新旧入り交ざって。

 牢獄に看守がいなかったのは、死にかけのリナ以外誰もいなかったからだろう。

 それはとても好都合だった。リナを助けられたんだから。


「そろそろ奥の方まで来たんだからあってもいいはずなんだけどなぁ………」

「そうじゃのぅ………。そういえばユーリ、強奪品とは、具体的にどんなものなのじゃ?」

「えっと確か、襲われたのは商店の1つで、売る予定だった商品はもちろん、顧客情報やら帳簿やら、書類系も盗られたらしい」

「………それらをユーリ1人、リナリアも含め2人で運べる量なのか?」

「………」


 やべ。イマイチ量は分からないけど、無理な気がする。俺の経験則的に。


「………リナ、なんかいい案ない?」

「わ、私? えっと……………、うぅん……………」


 え、なんかすまん。軽く訊いたつもりなのにそこまで悩んでくれると思ってなかった。


「えっと、だから何か運べるものがあればいいのよね。もし台車か何かあれば私が引っ張るけど………」

「まぁリナだけに運ばせるのは全力で却下だけど、台車はいい案だな。それなら俺の創造で創れるだろ」


 ナイスだリナリア。

 その案でいこう。


 俺たちは偏光迷彩で何とか進みつつ、一番奥まで来た。すると、今までの扉よりも大きく頑丈そうな扉があった。しかもその扉には両側に2人、見張りが立っていた。

 常識的に考えて、この2人は黒牙の中でも上位に立つだろう。弱い奴をわざわざ宝物庫の前に配置はしないだろうからだ。

 俺たちは曲がり角からその2人を覗き込んでいた。


「さて、どうしようか?」

「うぅむ、一番良いのは眠らせてその間に、ってとこかの?」

「私もそれでいいと思うわ。でもご主人様がやりたいようにすればいいんじゃない? 私はそれについて行くだけよ」


 ………なんかリナリアの依存度が鰻登りな気が………いや、今は関係ないか。

 じゃあとりあえず催眠かー……、ってどうすんだよ。


「催眠ってどうすんだ? イマイチ想像できないから魔術使えないぞ?」


 この世界の人がどうやって魔法を使っているのかは分からないが、俺の場合は想像力が大きく影響する。


「そういえばそうじゃの………、想像出来なければ使えんか………」


 そこでノアは、何かに気付いたような目をした。


「なんか思いついたか?」

「いや、睡眠という概念を相手にぶつけてはどうじゃ?」


 ………正直に告白しよう。概念って何?


「………概念というのは、誰から見ても“そう”だと判断されるものじゃ。例えば睡眠。この言葉で、どういったことを想像する?」

「えーっと、布団に入って眠ってる感じ?」

「じゃろうな。睡眠という概念は、意識的行動が出来なくなり、外界に関して鈍くなり、………まぁその他色々あるが、誰もが思う“眠り”の形じゃな」


 なるほど。なんとなく分かった気がする。

 結局、“誰もが思う”ってところがミソなんだろう。


「んじゃそんな感じで、その概念っぽい魔術を使うか」


 うむむ~、とか唸って、なんとかそれっぽいものを出そうとする。

 体の中を巡る、血液とは違った流れ。それを意識し、右手に集める。


「………あ、なんか出た」


 右手には野球ボールより少し大きく、灰色で、霞の玉みたいなのがあった。輪郭がぼやけていて、手に乗ってる感覚があまりない。

 もにゅもにゅと揉んでみるも、イマイチその実態が掴めない、変なものだった。


「………何か出たのか?」

「ああ、これ」


 ノアが訊ねるので、俺は右手を差し出す。

 それをノアとリナリアはじっと見ていた。


「リナリア、見えるかの?」

「いえ、見えないわ。ノアは?」

「わらわも見えん」


 ………どうやら俺にしか見えないらしい。


「見えないのか………。まぁいいや。えー、ユーリ選手、第一投、投げました!」


 1人実況しながら門番2人に向かって投げる。霞玉は門番2人の間を通り過ぎる、と思った瞬間、


 パンッ


 と破裂した。


「ん? ぁ………」

「おいどうし………ぅ………」


 バタリ


 門番2人は崩れ落ちた。


「………出来ちゃったよ」


 しかし俺は吃驚したままだった。

 確かに睡眠睡眠とか思って魔術使ったけど、あまり信じてなかった。

 改めて思う。魔術すげぇ。


「さて、行くぞユーリ」

「ああ。ノアは銃になって俺が持っとく。リナリアは俺の後ろにいて、後方警戒頼む」

「了解じゃ」

「わかったわ」


 俺たちは隠れていた角から出て、デカい扉へ向かう。鍵はなかったので、再び熱で溶かすことにする。レールガンじゃ音が大きすぎるからな。


「さて、おじゃましまーす」


 扉を開ける。

 するとそこには………


「わぁ……すごい……」

「ふむ………これはまた………」


 リナリアとノアが同時に声をあげる。

 それもそのはず。扉の先には畳30畳ほどの空間があり、そこには所狭しと金銀財宝が置かれていた。よくみたら金貨や銀貨もあり、おそらくこれがこの世界に流通している貨幣なのだろう。


「あー、これを全部って、無理だなぁ………」

「そうじゃのう………。のうユーリ。成功するか分からんが、一つ試してみんか?」


 すこし楽しげなノアの提案に、俺は一口乗ることにした。


「亜空間は開けられんじゃろうか?」

「亜空間?」

「うむ。莫大な魔力があればあるいは、と思ったんじゃが」


 亜空間って、空間に莫大なエネルギーをかけるとその負荷で空間がねじ曲がるとか、そんな感じでしょ?

 いくら魔術だからって………


「あ、そんな感じの魔法あるわよ?」

「マジで!?」


 あるらしい。


「ただし、普通の魔法士ではかすりもしないほどの難易度だったと思うわ。というか、そんなこと出来る人、いないと思うし」

「まぁあると分かればこっちのもんだ」


 俺は空間を解析する。どうやら亜空間と言うのは無数に、それこそ天文学的な数で存在するみたいだ。ちなみに天文学的数字とは、零が60個ぐらいついた数字、というのを聞いた気がする。分からない人はまず紙に“1”と書いて、その後ろに“0”を60個書けばいい。それくらいが天文学的数字らしい。ただ俺は、昔調べた結果、限りなく無限に近い数字、という結論に至ったが。

 まぁそれはおいといて、亜空間はほぼ無限に存在する。ならその1つを俺にしか開けないようにすればいいだけだ。

 まずは亜空間を開けるとこから始めないといけないのだが、たいして魔力を消費しなくても開くことが出来た。


「ユーリの魔力量が異常なだけじゃ」


 ノアが何か言ってるが無視だ。

 で、開いた亜空間を俺の魔力で満たす。それによって、俺の魔力にしか反応しない亜空間となった。


「んじゃ、開くか」


 一度閉じて、再び開いてみる。もう一度閉じ、違う場所で開く。

 ん、完璧。


「じゃあこの中へ全部入れるぜ!」

「流石我が主。がめつい」

「ノアが亜空間とか言いださなきゃ普通に一部だけ運んでたよ」

「ユーリなら言わずとも亜空間のことに気付きそうじゃがな」

「それは否定できん!」


 なんか思いつきそうではある。


 それから俺たちは亜空間にひょいひょいと宝を投げ入れ、かれこれ30分。

 全部入れ切った。よくやったなぁ………。


「さて、帰るか」

「うむ。………転移出来ぬか?」

「レイがあの魔方陣書いた紙持ってるから、たぶんそれ目印にいけると思う。つか、レイを目印にした方がやりやすいかも」


 レイは龍族だからか、魔力の質が、普通とは若干違う。


「ならばそれでよいじゃろ」

「だな。リナリア、俺に掴まってて」

「喜んで!」


 なぜか喜ばれた。そして超笑顔で俺に抱きついてきた。

 あー、胸がー。当たってるぅー………。


「わざとよ」

「わざとかよ!?」


 おちょくられてる俺だった。


「さ、転移すっぞ」


 俺は目を瞑り、レイを探す。

 ………あ、いたいた。

 どうやら俺たちの真上近くにいるみたいだ。


「………転移!」


 次の瞬間、俺たちの目の前には荒れた草原が広がり、丘のような場所に出たことを知った。

 だんだん投稿時間が遅くなってるなぁ………。


 五月に入りましたね。私はバイトがあるので黄金週間などあってなきがごとしです。


 さて、壱弥さん、Rairtさん、感想ありがとうございます。期待に応えられるよう精進いたします。


 ところで、九尾のリナリアさん。リナリアというのは姫金魚草の別名で、小さく可愛い花が咲きます。花言葉は“私の恋を知ってください”。意味深ですね。


 ではまた次回お会いしましょう。


 ノシ

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