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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第二章 ギルドと依頼と
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第28話:君の名は

 それから15分ほど経って、彼女は静かに顔をあげた。目は赤くなり、俺の袖を掴む指に力はなかったが、その瞳には先ほどまではなかった、強い生きる意志が見えた。


「もう大丈夫なのか?」

「うん………。なんでだろ、貴方に抱かれてると凄く安心する。これ以上抱きついてたら、眠っちゃいそうよ」


 どうでもいいが、貴方に抱かれてる、とか言うな。変な意味に聞こえるから。


「まぁいい。とりあえずここを出るか」

「ねぇ、今更だけど貴方は何者なの? なんのためにここまで来たの?」

「俺は初心者ハンター。ここへは黒牙に強奪されたものを取り返す依頼と拠点破壊の依頼を兼ねて、こうして拠点に潜入してるとこ」

「初心者って………。両方受けたらランク的にはAに限りなく近いB、ってとこでしょ? 貴方のランクは?」

「これが初依頼だからまだFランクだな」

「………そう」

「その可哀想なものを見るような目をやめい」


 少しずつだが、彼女の表情は軟らかくなってきている。

 だが、なるべく早いうちに、訊いておかなければならないことがある。


「………君はなんでこんなとこに?」


 俺は彼女の傷を開くようなことを言う。


「………」

「今が無理ならそれでもいい。ただ、早めに言ってくれ」


 ………一応城に住んでるしな、俺。俺がなんとかするのが一番いいんたが、もしどうしようもなくなったら相談してみよう。


「………今言うわ。後に回したら、そのままズルズル言えなくなっちゃいそうだから」

「………そうか」

「私ね、亜人なの」


 亜人?

 ふと、異世界に来てすぐの、ノアの言葉を思い出した。


『この世界の一部の国には奴隷制度がある。虐げられるのはいつも他種族じゃな』

『他種族って?』

『人の国なら獣人やら亜人やらエルフやらかの。逆もまた然りじゃ』


「私は、奴隷だったのよ」


 ………やばいなぁ。ドンドンどす黒い感情で埋め尽くされてきた。


「て、手と、足は、そ、その時に、」

「大丈夫。落ち着け」


 彼女の目があっちこっちに動き回り、トラウマの程が分かる。

 俺は彼女を、再び抱き締めた。


「………あ、ありがとう」

「いや、こんなことしか出来なくて悪ィ」

「そんなことない!」


 いきなりの大声に、ビックリしてしまった。


「あ、うん。まぁありがとう」


 なんか知らないが、威圧感を感じたので、素直に受け取ることにした。


「………で、手足が切れた私はただのお荷物だったんでしょう。その辺に棄てられたところを、黒牙に連れて行かれたのよ」


 運の悪いことにね、と彼女は吐き捨てた。


「それで私は男のふりをしてたんだけど、それでも犯そうとしてきたから、相手の腕を噛みちぎってやったわ」


 確かに、可愛ければ男でも性のはけ口にされることは、ある。非常に胸糞悪く、反吐が出る話だが。

 しかし腕を噛みちぎった、か。なかなかにいい性格してる。


「そしたら持ってた剣でお腹を切られちゃった」


 ちゃった、って軽いなオイ。………いや、軽くしてんのか。人の心は複雑だ。


「そしたら耳と尻尾が出ちゃって、それも切られて、ホントに死ぬ寸前だったわ」

「ん? 耳と尻尾?」


 なんだろう。亜人って時点でフラグが立ってはいたんだけど。


「あ、私は獣人の血が混ざった亜人なの。混ざってるのは狐ね」


 ………いや、だって今耳とかないし。

 そんな俺の疑問に気付いたのだろう。彼女は続いて口を開いた。


「えっと、獣人と違って、亜人は耳隠せるのよ。………ほら」


 と言ったとたん、頭にひょこんと2つの耳が生えた。………ってオイ。ちょい待てや。

 さらに尻尾が生えた。………が、その尻尾が問題だった。


 1つ、2つ、3つ、4つ………………9つ。


 彼女、九尾だった。


「お前……九尾だと……?」

「え? ………確かに尻尾は9本あるけど………」


 ………ここを出てから少し調べた方がいいかもな………。


 さて、と俺は空気を変える。


「俺はこれから強奪品の回収に行く。お前はどうする?」

「………出来ることなら、一緒に行かせてもらえないかしら………?」

「わぁった。責任もって守るよ。………と、その前に俺の相棒を紹介するな」


 疑問符を浮かべる彼女を横目に、俺は漆黒の銃を取り出す。


「ノア」

「うむ」


 銃は、いつの間にか黒猫へと変化していた。

 彼女は目を丸くしているのが、少し面白かった。


「俺の相棒、ノアだ」

「よろしくの」


 彼女は、え、あの、とか言っていたが、最終的に、よろしくお願いします、というところに落ち着いた。

 ………つーか、俺ら、大事な事忘れてね?


「………そういえば今更だけど、自己紹介するね。俺はユーリ・ツキシロ。で、こいつはさっきも言ったけど、ノア。あと外にレイネスティア・ドラゴニスってのもいる」

「あ、うん。よろしく……」

「君の名は?」


 そこで彼女は悲しそうな顔をした。


「………私に名はないわ。確かに昔はあったけど、もう棄てたわ」

「ん、………そうなのか」

「どうせなら貴方がつけてよ。そうよ、それがいいわ」


 ………責任重大だ!?


「ユーリなら大丈夫じゃろ。わらわのノアという名もユーリがつけたものじゃしな」

「いやいや、猫に名前つけんのと人につけんのではわけが違うだろ!」

「まぁまぁ、そう言わずに」


 猫になだめられる俺ってどう見えてんだろ。

 一度レイあたりに訊いてみよう。


「………いいのか、俺で?」

「貴方に、つけてほしいの。お願い出来ないかしら?」


 そこまで言われては断れないじゃないか。

 俺は腕を組み、深く思考に沈む。


「んー……、あー……、り、り、……えー、っと、りな、りなりあ? リナリアなんてどうだ?」

「私はリナリアね。よろしく、ご主人様ッ!」

「決断早い!? そしてご主人様って何!?」

「ユーリは私のご主人様に大決定よ!」

「いきなり過ぎる!?」


 リナリアは、嬉しそうに笑っていた。


 まず、総合評価500pt突破ありがとぉございます! そしてさらに、お気に入り登録数200件突破ありがとぉございます!

 いや、すごいね。正直ここまで伸びるとは思ってなかった。

 そう言えば、お気に入り登録して、さらに更新通知登録もしているとある小説に、何気なしに感想を書いたんです。そしたらそこの作者様がこの猫神をお気に入り登録されていることが判明。狂喜乱舞しました。夜中なのに。

 これは運命だと思いましたね(謎


 ではまた明日、小説でお会いしましょう。

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