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猫神ランドループ  作者: 黒色猫@芍薬牡丹
第一章 ここは異世界
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第21話:転移

「初めまして。クレスミスト王国国王のラルム・クレスミストだ」

「これはご丁寧にありがとうございます。俺はユーリ・ツキシロといいます」


 あれからすぐに談話室みたいなところに呼ばれ、王様との対談に持ってこれた。

 この場にいるのは俺とレイとラルムさんだけである。


「難しいことは嫌いですので、すっぱり本題から入りますね」


 俺がそう切り出すと、ラルムさんは静かに眉根を寄せた。


「………そうじゃな。私もその方が話が早くて助かる」

「ではとりあえず、アンネルベルは無事ですよ」

「ッ!!」


 あれ、ミスった?

 ラルムさんから敵意と殺気が漏れ出てんだけど………。


「何が……何が望みだ……」

「は?」

「この通りだ、頼む! アンネを返してくれ!!」


 ラルムさんが急に土下座しだした!?

 え、ちょ、予想以上すぎて対策が………。


「えっと………」

「頼む! 望むものなら出来る限り用意してみせる! だから……だからアンネだけは……ッ!」

「え、だから、おまっ」


 え、これどうすればいいの?

 ふと肩に重さを感じると、ノアが肩に乗りながらこちらを見ていた。


「………とりあえず、誤解を解くところから始めてはどうじゃ?」

「そ、そうだな。えっと、ラルムさん?」


 ラルムさんが土下座の体勢から少し頭を上げる。


「俺たちはアンネを保護してるってだけで、ここまで安全に連れてくるってことを伝えに来ただけなんです。なので土下座はやめて下さい」

「そ、そうなのか………?」


 ラルムさんはまだ疑わしげな目でこちらを見ていた。


「それで、本当はアンネも連れてここまで来る予定だったんですが、レイ……龍人と一緒に来たら攻撃される可能性がありましたので」


 そう言って俺は苦笑した。

 実際はそんなことにはならないだろう。しかし、機を急ぎ、強行する可能性もないわけではない。


「だから、とりあえず俺とレイが来て、誤解を解いてからにしようかと思いまして」

「ほ、本当なのか……?」

「ええ、安心して下さい。いっそ今から呼びましょうか」


 そう言うと俺は立ち上がり、談話室の窓に近付く。

 その窓を開くと、そこから身を投げた。

 別に説明とか説得とかが面倒臭くなったわけじゃないデスヨ?


「な……ッ!」


 窓の向こうでラルムさんの驚きの声が微かに聞こえた気がした。


「ノア、最初のアレな」

「了解じゃ」


 俺は落下しながら手に魔力を集め、風を起こす。

 そして、一番初めに空から落下した時のように、体に風を受け、スピードを調整し、スタッ、と着地した。


「ふぅ、成功だな。しかし、これもなんかまだ想像がはっきりしないから、そのうちはっきりしたイメージ作らないとな」

「うむ。慣れてきてゃおるのじゃから、それくらいなら簡単じゃろう。今でも、それだけ出来たら立派なもんじゃ」

「ありがとよ」


 さて、と言いながら上を見る。遙か上で窓から吃驚しながら顔を覗かせるラルムさんが、少し面白かった。少し心臓に悪いことをしたかもしれない。あとで謝っとこう。


「ところで、魔法陣とか必要?」

「んー……、そうじゃの。ここに魔力を込めながら、円を描いてくれ。それだけで事足りるじゃろ」


 俺はノアが指し示した場所を、かかとを使って土にガリガリと半径1メートルほどの円を描いた。

 こんなもんだろうか。

 というか、空から落ちて円を描いている俺の周囲に兵士が集まりだしている。事情を知らない兵士からすれば、俺は完全に敵なのだろう。さっきから殺気がゾクゾクする。別に俺がドMってわけではないので勘違いしないでほしい。


「さて、行きますよー」

「うむ」


 俺は円の中へ入り、集中するために体の前で手を合わせる。

 そして感じる反応。そこへ向かって飛び出す感覚。


「転移ッ!」


 シュッ!


 そんな音を残し、俺はその場から消え失せた。

 ちなみに、レイは最初から談話室で優雅に紅茶を飲んでいたそうだ。



◆◇◆◇◆◇◆



 シュッ!


「あ、ユーリさん」


 転移先はどこかの宿で、すぐさま後ろから話しかけられた。

 振り返ると、丸い円が書かれた紙を持ったアンネがそこにいた。俺はそこに込められた魔力を目標に跳んだのだ。


「んじゃ、城に行きましょうか」

「説得は済んだんですか?」

「……………」

「済んでないんですね………」


 スィードはどこだろう。騎士たち集めて欲しいんだけどなー。


「無視ですか………。えっと、騎士たち呼んできますから、準備しといて下さい」


 そう言って部屋を出て行くアンネ。王女自ら雑用って、いいのかな……。


「ユーリ、騎士全員が入る程度の円を描け」

「んー」


 俺は部屋を出て、宿も出る。近くにいた騎士に広い場所はないかと聞くと、町外れまでいかねばないらしいので、騎士が全員揃えば町外れまで来てくれるように言っておいた。


「で、今俺たちは町外れまで来てんだけど」

「誰に言っておるんじゃ?」

「そこはホレ、様式美というやつだ」


 意味が分からなかった。

 それは置いといて、俺は大きい円を描くために木の棒を探し、再び魔力を込めながらガリガリとデカい円を描いた。というのも、馬車も一緒に転移するからだ。


「てかさ、転移とかよく出来たな、俺」

「転移先に目標がないと無理じゃから、あまり使い勝手は良くないがの」


 それでも破格の魔術だろう。


 それから10分後。


「ユーリさん、準備出来ました」

「ん。それじゃあ始めるぜ?」


 俺は再び手を合わせ、集中する。


 ……………見つけた。


「……行くぞ。転移ッ!」


 ヴンッ!


 先ほどより大きい音とともに、円の中にいたモノが消え失せた。



◆◇◆◇◆◇◆



 ヴンッ!


「んー、転移かんりょ……う?」


 ………何があった。

 あたりには兵士たちが死屍累々と倒れていた。そして、レイがその中で唯一悠然と立ち尽くしていた。しかもなぜか無駄にかっこいい。固有結界を発動させたアーチャー並にかっこいい。

 アンネもスィードも、その光景に動けずにいた。


「レイ……何してんだよ」

「あ、ユーリ。おかえり」


 レイはいつも通りだった。


「で、何があった?」

「ユーリが転移した後、兵士たちが魔法円を消そうとしたから妨害したんだけど、それがどうやら攻撃と勘違いされたらしくてね。気付いたらこんな感じに」


 そう言って首を竦めるレイ。とにかく、レイ1人でも、兵士集めただけなら相手にもならんわけか。さすが龍人、といったところか。


「アンネ………ッ!」


 ふと聞こえた声に、アンネが振り向く。


「父様! 母様!」


 走り出すアンネを、誰も止めることはなかった。

 泣きそうな顔のラルムさんと、嬉しそうなアンネ。抱き合う3人を見て、本当に良かったと思った。


「………さて、兵士を全滅させてしまった件。どうするのじゃ?」

「せっかく感動の場面なんだから少しくらい現実逃避させてくれよ………」


 ノアは、良くも悪くも、俺のパートナーであった。


 もしかしたら今日中にこの話を少しだけ編集するかもしれません。


 2010/04/22 17:45

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